なぜアニメ『BEASTARS』のキャラクターは全員「動物」なのか?
Netflixを契約したのがきっかけでアニメ『BEASTARS』を全話観ました。
キャラクターが織りなすドラマが見ごたえたっぷりでした。YOASOBIによる第2期のOPテーマ「怪物」とEDテーマ「優しい彗星」もキャラクターの関係性や心境をよく表現していていい。
『BEASTARS』は登場人物が全員「動物」という特徴があります。
なぜ、人間を描かなかったのでしょうか。
大きな理由として挙げられるのは、登場人物である動物を通して欲求をありのままに描けるからだと思います。
本作は食欲と性欲といった欲求をメインテーマにしています。
冒頭から視聴者を引きつけたストーリーの軸となる食殺事件。これは学園内で起きた動物版の殺人事件みたいなものです。
終盤で明らかになる食殺犯は、被害者のテムを食べたことを“友情”だと語ります。食殺犯なりに友人を食べてしまった苦しみがあったのはわかりますが、なかなかサイコパスです。
クラスメートを食べる事件は人間では描けません。また、犯人の食欲と友情が絡み合った動機も動物ならではです。
レゴシとハルの恋愛模様においても、この感情が性欲なのか食欲なのか分からないレゴシの揺れ動く心の描写が多数あります。
食欲や性欲といった欲求を描くためには、人間より本能的な動物のほうがより赤裸々に表現できる。だからキャラクターを人間ではなく動物にしたのではないでしょうか。
欲求をテーマにするうえで動物のかわいいビジュアルのほうが受け入れやすい効果もあると思います。人間だと生々しくなってしまいますよね。
動物が普通に喋ったり二足歩行するのは漫画やアニメでしかできない表現です。『BEASTARS』の世界は一目でフィクションだと分かります。
また、草食獣や肉食獣の悩みは人間の私たちにとってよく理解できないものかもしれません。
しかし、心理描写が丁寧で緻密だからこそ、キャラクターの人間臭さに感情移入できるんだと思います。
彼らからは動物らしい愛らしさも垣間見えます。レゴシがうれしいときにしっぽをブンブン振っちゃうのもオオカミらしくてかわいいですよね。
「ネコ科じゃないんだから受け身とれないんですよ!」とレゴシが言うシーンでは、動物の特性を取り入れたセンスのある言い回しだなと思いました。
動物だからこそ、アニメだからこそ表現できることを存分に描いた『BEASTARS』。
先日、2024年12月にファイナルシーズンが分割2クールにて配信されると発表されました。終わってしまうのは寂しいですが、楽しみに待ちたいです。