次の大規模イノベーションが起こる巨像市場、建設テック業界・ゲームチェンジを狙う注目の米国シードベンチャー3つ
建設テック?
フィンテック、アドテク、エドテク、インシュアテック、不動産テック(英語ではRE Tech)などの「◯◯テック」などの言葉は、それまでの既存のレガシーな業界を、テクノロジーによってイノベーションを起こし、ディスラプトを目指すスタートアップの集まりの総称(業界)や個別の業態を表す言葉として定着しています。
次にイノベーションが起こる業界として米国で注目されている業界の一つに建設業があります。若干データが古いですが、マッキンゼーが出したレポートによると「建設業に関連したビジネスの市場は世界のGDPの13%にのぼるが、過去20年間で業界の生産性は1%しか上昇していない」とあります。2017年の米国のGDPが2兆米ドル程度ですので、米国では2千6百億米ドル程度が建設業関連ビジネス全体の市場規模ということになり、超巨大市場です。参考までにTracticaのレポートによるとAIの世界市場が2020年で561億ドル、2024年までには2,806億ドルとなりますので、建設業界は急成長市場と言われている現在のAI市場の5倍以上程度の市場規模が既に形成されておいます。
しかも米国のGDP成長は大体2%程度で、国全体は2%の成長をしているところ、「建設業界は生産性の向上が進んでおらず1%しか成長していない」とのことで、テクノロジーによるイノベーションが起こる余地が相当ありそうです。(建設業でテクノロジーが活用されていないというのは、なんとなく想像しやすいですね。)そのような理由で、米国の建設業界では全体的に生産性の上昇が進んでおらず革新的なテクノロジーによる規模の大きいイノベーションが必ず起こると考えています。
先週更新したニューヨークのアクセラレーターU-ban X(下記にリンクを記載しておきます)のプログラムやY Combinatorの過去2回のBatch(S19、W20)に建設テックが数社含まれており、アクセラレーターに採択されていない色々な建設テックも新しく創業されてますが、しばらくすると淘汰されていくと考えています。
業界は異なりますが、Facebookが躍進する前はMyspaceを始め様々なソーシャルネットワークが創業され、消えていきました。米国の建設テックも激しい競争市場となり戦国時代に突入することが予想されますが、そのような環境の中でも生き抜くんじゃないかと予想される、有望な建設テックベンチャーを3社紹介していきます。
1. Bildstream
BuildStreamはYコンビネーター 2019SのBatch、先日紹介したニューヨークはブルックリンのアクセラレーターであるUrban XのCohort06、更にはPlug and Playにも採択され、エンジェル投資家のJason CaracanisのWeekend Startupにも登場した、今後超注目の建設テックスタートアップです。
BuildStreamは2018年創業され、ニューヨークに本社を置いてます。建設機械のAir bnbと言われており、建設機械の所有者と建設業者や個人を結ぶ為のレンタル建設機械のプラットフォームを全米で最初に展開したスタートアップで、機械の保有者が建設機械にセンサーを設置することで、機械を借りたいユーザーが使用可能な機械の場所や状況をアプリ上で確認をし、レンタル予約できるというシステムが一つの特徴です。更にムダの多い建設現場や建設機械に関するデータをBuildStreamに集約し、現場のチーム(iPad上で)や監督するヘッドオフィスに視覚的なデータ分析結果を送信し、最適化を促進する機能を持っています。一言でいうと建設現場のビックデータをを分析するシステムです。
レンタル建設機械の市場規模だけでも$1,500億ドル と市場規模が十分大きいですが、建設関連の市場規模は前述のとおり超巨大市場です。注目のポイントは米国のレンタル建設機械の約20%は使われずに放置されている状態で、しかも建設機器は購入すると価格が高いという問題を一度に解決するアプリです。また、課金方法は月額のサブスクリプションとなってます。同社は既に4社顧客を見つけており、売上を上げています。
ポイント:Jasonも動画の中で、「中国のマーケットに進出できる」と言ってますが、同社のビジネスモデルは日本にも進出可能かと思います。また、共同創業者のTerrはイギリス出身の連続起業家ですが、現在はロンドンとNYを行き来しているようです。
2. 1Build
注目の建設テック2社目は1Buildです。同社はYコンビネーター 2020WのBatchに採択された約200のスタートアップのうち、Best 20に選ばれており、建設(フレームや断熱材等)のコンペや案件の見積もりのプラットフォームを開発しています。ユーザーが建設に関する計画をサイトにアップロードすると、1分程度で適切な価格を提示する機能を持っており、アマゾンやスターバックス、セブンイレブンのような大企業の見積もりを既に完了しているとのこと。一つの特徴は顧客のそれらのコストを削減し、利益を上げることができることのようです。
このベンチャーは創業されて時間が経っていないため、取得できる情報がかり少なく、分析がし辛いですが今後住宅、商用、ゼネコンが扱うような大型の案件を扱うようになれば、スケールできるモデルだと考えます。
ポイント:日本の大きな建設案件ではコンペで業者を決定しますが、その過程でどのように決定されたのかは公表されず、ブラックボックスのままです。また接待の多い業界ということもあり、適切な選出がされていないケースもあるのではないでしょうか。1buidのようなサービスが大型の案件も対応できるようになり、日本での展開が進めば(予定されているかわかりませんが)そのような問題も解決されるのではないかなという期待を込めて今後注目のスタートアップとしています。
3. HADES
注目の建設テック3社目は前回の投稿にも登場したHADESです。
HADESはAIを使った水道管の検査ソフトです。アメリカとEUだけで、張り巡らされている水道管を距離にすると5百万マイル(約8百万キロで地球1周が4万キロなので200回地球を回れる計算)で、$50ビリオンが1年間に下水道の為に使われる金額だそうです。しかも、そのうちの10%は規制によって検査される必要があり、その方法は人為的で改善余地があり、そこにAIを投入して良い検査システムを作ろうというコンセプトのようです。
現在の水道菅の検査は、ビデオを使った検査や故障が起こった時の報告で欠陥を発見している現状であり、スピードが遅い、検査官の主観的によって検査される、人為ミスが起こりやすいという欠点があるそうです。Hadesはディープラニングを使い、検査ビデオから自動的に欠陥を検知して技術者にどのように修理をすれば良いかを伝えるサービスで、時間とコストの無駄を無くすメリットがあります。ビデオによる検査は1Mileにつき1週間かかり、しかもそのうちの25%は欠陥検知ミスとなっているそうで、年間の20%の配管工事は必要もないのに行われている状況のようです(金額にすると$1ビリオン)。競合はVAPAR、 Inloc Robotics、SewerAIそれらよりも高いクオリティで検査が可能とのことです。また、唯一地図を使って欠陥の場所を指摘できる機能を持っているとのことです。ARRは$30kで既にトラクションが出ているところも注目のポイントです。
コメント:ターゲットとしている市場規模は超巨大市場というわけではなく一見すると地味な業界ですが、抱えている問題がAIが得意とするデータ分析で解決出来そうなものであり、このソフトの普及が進むことにより業界のスタンダードとなり、ゲームチェンジャーになりうるのではないかと考えます。ポイントは競合と比べて如何に製品が優れているかかと思いますが、更に調べてみたいスタートアップです。
以上、次なる大規模イノベーションが起こる巨像市場、建設テック業界とゲームチェンジを狙う注目の米国シードベンチャー3つを紹介しました。今後も注目の建設テックがあれば、紹介していきます。
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