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大人になったんだねえ、私たち。

突然のDMにまずは驚いた。
『久しぶり!今そっちに旅行で来てるんやけど、おすすめスポットとかない?』

小中高が同じの地元の同級生からだった。インスタのストーリーで近況はなんとなく把握していたものの、わざわざ連絡を取り合うようなことなんて今まで一度もなかったものだから。懐かしいなあと思いつつ、田舎なりに良さげなスポットをひねり出して彼に教えてあげた。

そもそも思春期だった頃の私は男の子がこわくてろくに話すこともできなかったので、お互いを認知はしていたものの、彼とは深い関わりを持てないままだったはずだ。それでもスムーズに進んでいく文字での会話に、なんだか不思議な感覚を覚える。

そして彼からの明るいお礼のメッセージで会話は途切れた、はずだった。しかしその後届いた新たなDMには、改めてのお礼の言葉とともに、なぜかランチのお誘いが。

いやまって、一対一で話した記憶すらないのに、ランチ!? と困惑のあまり部屋中をうろうろしてしまったのだけれど、先ほどの会話の温度感を思い出してふと、意外といけるかもしれないと思ってしまった。ていうか普通に面白そう、なんて興味すら湧いた。

そのままOKの返事を出し、彼と待ち合わせて目的のお店へ。ろくに言葉を交わした覚えもないのに「久しぶり!」だなんて声をかけあえるのがちょっとおかしくて、でも実際同じ環境で長く共に過ごしてきたのだからやっぱり懐かしい。なんだか、ついこの間まで自然に話していたかのような心地にもなった。

少し都会の雰囲気には染まったものの、昔とほとんど変わらない彼の姿に安心した。けれど彼は私の知らない世界の話をいくつもしてくれて、引き出しをたくさん持っていた。違う環境で生きていたのはほんの数年間のはずなのに、私よりも彼の方が圧倒的に多くのことを経験していた。

料理をつつきながら、次々と出てくるちょっぴりダークな面白エピソードに笑ったり驚いたり。かつてお年頃だった私たちがこうやって過ごせていることに、ひっそりと感動を覚える。まさかこんな風に話せる日が来るだなんて。


かつて思春期だった私たちは男子と女子の間のラインが強く引かれていて、なんとなくお互いを意識しつつも深く関わるのは恥ずかしい、なんて感覚を抱いていた。いつの間にかその感覚は取り払われて、男子が苦手だった私も大学では男友達が何人もできたし、男女が友達として仲良くしているのもいたって普通の光景として見られる。

自分が気軽に男の子と話せるようになったときも自分で自分にびっくりしたけれど、これまでろくに話すことができなかった人と楽しく話せるようになったことがわかると、より一層自分たちの成長を感じるというか、大人になったんだなあとしみじみする。

何より懐かしい人の大人になった姿を見られるのは、なんだか喜ばしい。突然のことで戸惑ったけれど、やっぱり行っておいてよかったな。


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皐月まう
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