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私的考察②『韓流ドラマのブレイクは、韓国の「恨」と日本の「喪失感」がクロスマッチするときである』

 輸出を意識した韓流ドラマは、韓国ローカル色を脱することで、グローバル市場への売り出しの強みとしてきたわけですが、しかし、その底には、脈々と『恨』のテーマが流れている作品が多いといわれています。

  「恨」は韓国固有のものとされていますが、わたしは、日本の戦後文学のテーマのひとつである「喪失感」に共通するものがあるような気がするのです。

 韓流ドラマが、「冬のソナタ」で日本でブレイクしたきっかけの年を、2003年から2004年だとすると、ふりかえってみるば、その当時は、日本社会も転換点の時期であったことがわかります。米英軍がイラク攻撃をはじめ、自衛隊のイラク派遣も決定して、なにか重苦しい時代にはいったなという、いったいこれはいつ終わるのだろうという気分が続いたのでした。
 庶民からすれば、自分の力ではどうしようもない大きな流れに、それまで持ってたものが奪われてしまう喪失感が漂う年だったのではないでしょうか。

 そして、昨年2020年も、世界的にCOVID19が猛威を振るい、かつてない混乱の年でありました。
 韓流ドラマは、いくつかのブームを経て、コアなファン層を培ってきたとはいえ、「愛の不時着」で、またこれだけファン層を広げたのには、そんな時代の喪失感とマッチしたからではないかと思うのです。

 「冬のソナタ」も、初恋の喪失の痛み、巡り合えて再開した喜びもつかの間に、またその幸せを喪失するといったストーリーでしたが、「恨」の感情を刺激したのは、あの物悲しいOSTだったと思います。

 そして、それは「愛の不時着」についても同じことが言えるのではないでしょうか。特に、パンソリの歌手であるソン・ガインが歌う「Photo of my mind」は、「恨」の感情をよく歌い上げていますが、喪失感が充満している日本人が聞くと、いっそう涙をさそうものとなっています。

https://www.youtube.com/embed/OuWUSAb3TJA?rel=0

 わたしは、韓流ドラマの第2の特徴は、「ドラマOST」という分野を確立させたということだと思います。音楽の力を借りて、よりドラマチックに盛り上げるというのが韓流ドラマの真骨頂なのではないでしょうか。


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松幸 けい
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