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ブーメラン映画「トレーニングデイ」 ネタバレ 考察 ジョーク解説。
初対面でカマしてくる奴。
「昔ワルだった」「セフレいる」この手の発言をする奴がいる。
一発カマして上に立とうとする。
顔合わせでアロンゾもカマしてくる。
そんな彼は暴力と恐怖で町を支配してる。
レイプ犯をシメる時に、ナイフと二丁拳銃で脅し、やたら銃をゴリゴリさせて威嚇する。
「ムショか家かどっちがいい?」って最初に言ったのもこの時。
このセリフを何度も使って脅す。で、最後はジェイクに言い返される。※1
「カマシ屋」はそう言わないとイジられるから。
アロンゾはそうしないと生き残れないから。
「生き残る為には何でもする」って入れ墨通りに実践する。
舐められたら負けって言うのは確かにある。
でも舐められない為の暴力で窮地に追い込まれ、手懐けたギャングに手のひら返される。
つまり、脅しに長期的な効果はないし、副作用も強い。
僕はクソ兄貴。
僕が小学3年生の時、弟をいじめる生徒を殴って助けた事がある。
コレだけなら僕はいい兄ちゃんだし、純粋に弟を助けたかった筈だ。
でもその後の僕は、面倒な事は弟に押し付け、逆らえば殴る「毒兄」だ。
この映画のAmazon primeの紹介文に
「(前略)……危険なのは一線を越えた刑事」と書かれてる。
僕が毒兄に変わったラインなんて見えなかった。
初心は良かった。でもアロンゾも僕も結果としてはクズだ。
因果応報、初志貫徹。
ジェイクがカタツムリのジョークの後に言った町のルールは
「喜びと悲しみ。泣くも笑うも自分次第。誰にも止める事はできない」
これは因果応報の事だ。※2
実際、ジェイクは少女を助けていた事で殺されずに済む。
「犯罪を許容しない」って初心がピンチを救った。
情報屋ロジャーを殺して金を奪う事に憤慨するジェイクにアロンゾは
「ロス市警の捜査官が死亡しました。(中略)彼には妻と子供がいました」
って選択が招く結果のニュースの真似をする。
エンディングではジェイクの部分がアロンゾに変わったニュースが流れる。
つまり町のルール、因果応報は世界のルールとして適用されてる。
麻薬捜査官であろうと一般人であろうと自分の行いが帰ってくるなら正義心を貫徹した方がいいって思うけど、そう簡単じゃない。
孤狼の血は必要か。
この映画は「孤狼の血」に似てる。
役所広司が演じる清濁あわせ呑む刑事はアロンゾを彷彿とさせる。
続編のラストは絶滅した狼を探し、現れた狼は幻の様に消えるシーン。
アロンゾも自分を狼に例えた。※3
どちらも必要悪と言う言葉がよぎるキャラクター。
アロンゾは「頭の中の理想と現実の溝を埋めていけば罪悪感は薄れる」と言う。
この埋められた溝が紹介文で言う「一線」だ。
ジェイクのやり方、アロンゾが言う「真正面からパトカーで乗り付けるのか?」では捜査官が殺されて終わり。
かと言ってアロンゾのやり方で良いとは言えない。
汚い現実に適応し、冷酷な手段に手を染めればいつの間にか自分が悪人にあなるって罠がある。
「楽になりたいか?」ってセリフが何度も出てくる。
「死んで楽になりたいか?」って意味だけど、この善悪の綱渡りを続けなければならない世界で生きていくのはシンドイ。
カタツムリのジョークは死ねなかったカタツムリが苦労の末死ぬって話に思える。
だったら最初の時に死んでれば楽だった。
アロンゾの本音は分からない。ジェイクが麻薬捜査官を続けたのか、警察をやめたのかも分からない。どこに善悪の線があるかも分からない。
羊では悪人に殺され、狼では悪に染まる。
「training day」とは研修、試用期間って意味だけど、
汚れた世界で人が一線を踏み超えないかを試されてるのかもしれない。
備忘録
※1
アロンゾがジェイクに言った脅しは自分に帰ってきてる。
「ニュースで子供がいる警官が死亡したと流れるぞ」
※2
ロジャーはアロンゾを助けるぜと言った後にかかってきた電話で
「自分のケツは自分で拭け」と言って見捨てる。
で、犯罪で稼いだ金はアロンゾに強盗される。
※3
オオカミは田畑を荒らす害獣を獲物する。その一方人も襲うから感謝と恐怖が混在する存在。
妄想
アロンゾは少女からいとこのギャング名を聞いてた。
なぜジェイクの始末をそのいとこに任せたのか?
自分が死ぬか、ジェイクが死ぬかの中間をとった説。
善悪が分けれないので生死も分けない。
「喜びと悲しみ」と言ったのはラリってる時、神の啓示的な事?