お母さんの読書感想文「スマホを捨てたい子どもたち」
スマホを捨てたい子どもたち
野生に学ぶ「未知の時代」の生き方
山極 寿一 著
ポプラ社
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長年ゴリラの研究をされてきた著者が、今の社会をどう見ているのか、興味を引かれて手に取った。
共感できることが多く、わかりやすくて響く本だった。
子ども向けに書かれた本だが、大人もぜひ読んで、みんなで一緒に考えたい内容だと思った。
人間を「生物」という視点で考えてみると、見えてくることがある。
とても示唆に富んでいる。
人間を人間たらしめている要因は、共感力にあるという提言には、同感だ。
昨今のスマホの普及で、コミュニケーションの形が変わってきていると感じていたが、それが生物としての人間にとって、あまり好ましくない方向に進んでいるのだ、ということを本書からも強く感じた。
人間の共感力は、リアルのコミュニケーションで、身体のつながりから生まれるものだ、と私も思う。
リアルのコミュニケーションは、面倒だし、相手の表情や声のトーンから読み取らなくてはならないので常に緊張しているし、自分の思いが正しく伝わるとは限らない。
できれば避けたいと思うのも無理はないだろう。
でも、そこを通らなければ深いつながりは作れないし、信頼も生まれない。
それを忘れてはいけないなと、改めて思った。
生まれた時からインターネットがある世代の子どもたちは、圧倒的にリアルのコミュニケーションが足りていない。
バーチャルのコミュニケーションでは、身体のつながりが持てないので、本来のつながりにはなり得ない。
けれども、そのバーチャル空間のコミュニケーションがリアルであるという感覚を持っているように見える。
それは誤解である、と気づいてほしい。
リアルのコミュニケーションの経験が足りないうちに、バーチャルに入っている子どもたちは、相手との距離感を考えないままだ。
だから暴力や排除がエスカレートしやすい。
それをもっと自覚して、スマホとの付き合い方を考える人が増えてほしい。
考える力をつけなければ、スマホに振り回される。
大人だって同じことだ。
正解がないことだらけの世の中を生き抜くために、考えよう。
2021年5月4日