4年ぶりの対面
平日、午前11時
母が車いすに乗って来る
ガラス越しの対面から直接の対面
顔色がいい、何か話している
でも、聞き取れない 相槌を続ける
目線がなかなか合わない
「おふくろさん、〇〇だよ、ここだよ、〇〇だよ、会いに来たよ」と
何度も話かける 気が付かなくても 気が付いても構わない
息子の顔が思い出せない
視線が合わないので、顔を左右に揺らし、182㎝の体を上下に揺らし、
気が付くかな、目に留まるかな
必死に自分の名前を呼んでみる、
痩せた肩、小さくなった体をさすり
何分も話しかけた、
帰り際、一緒に写真をとり、スマホを向けると、カメラに視線が合う
ほんの一瞬、視線が息子を捉え、目が合った
「おふくろの目だ、わかる、、」
一瞬、名前を呼ばれた気がした
「わかる、〇〇だよ」
「・・・ 」
一瞬の沈黙で、、、 また、記憶がどこかに飛んでいく
溢れそうな涙を必死にこらえ
「また、すぐ来るよ」と
絞り出すように、小さく叫び
介護タクシーの向こう側に小さく手を振る
梅雨の合間の晴れた日に
空を睨んで
ここから、また、おふくろさんとの
記憶を、思い出を、
ひとつひとつと繋いでいくんだと
唇を強くかみしめた