ひきこもりに関する報道について②
前回のnoteで紹介した、ひきこもりスペシャリストの精神科医の斎藤環氏は、「ひきこもり」の存在が今回のように世間からの注目を浴びる事態になるたびに、以下の2点を訴え続けてきた。
1.犯罪とひきこもりを過度に結び付けることのない抑制的な報道を
2.ひきこもりビジネス業者(自称支援団体)に関しての報道は慎重に
今回の悲劇、川崎児童殺傷事件、続く練馬長男刺殺事件にもいち早く反応し、警鐘を鳴らした彼の発言を追ってみた(他にもシェアしたい有益ツイートはいくつもあるのだが、このnoteでは上記2点に関するものだけ紹介する)。
以下は、上YahooNews記事からの抜粋。
もうひとつ、本事件で考えなければならいのは、「ひきこもり」という言葉が犯罪や事件を紐づけられてしまうことだ。不登校、ひきこもり、発達障がい、セクシュアル・マイノリティの当事者・経験者らが作るひきこもりUX会議もオフィシャルブログを通じて声明文を発表した。
ひきこもっていたことと殺傷事件を起こしたことを憶測や先入観で関連付ける報道がなされていることに強い危惧を感じています。
「ひきこもるような人間だから事件を起こした」とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するものだからです。
出典:一般社団法人ひきこもりUX会議「川崎殺傷事件の報道について(声明文)
このタイミングで6月1日、練馬の元農林水産事務次官による長男刺殺事件がおきた。
(ここから家庭内暴力の解決についての有益なツイートがいくつか続くが、ここでは割愛。)
このタイミングで6月3日、AbemaTV『AbemaPrime』出演。斎藤氏の番組内での発言については前回のnote①で詳しく説明した。
ここでいう「商機」とは、以下に示すようなひきこもりビジネス業者(自称支援団体)とメディアのループを悪用するという意味である。
ひきこもりが起こした/関係した事件発生
↓
ひきこもりと犯罪を安易に結びつけるような報道
↓
世間の批判と恐れ、偏見の増長
ひきこもり当事者の動揺、自責、社会に対する怨念の増長
親や親族などによる懸念、世間の目に対する恐れの増長
↓
悪質な自称支援団体のメディア登場
↓
社会からの圧が高まり支援団体にすがる親
↓
新たな被害者を生む
現在の報道姿勢に異を唱えているのはもちろん斉藤環氏だけではない。当事者団体や支援団体も声をあげている。
■ 当事者や経験者でつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」
ひきこもっていたことと殺傷事件を起こしたことを憶測や先入観で関連付ける報道がなされていることに強い危惧を感じています。
「ひきこもるような人間だから事件を起こした」とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するものだからです。
ひきこもりと犯罪が結びつけられ『犯罪予備軍』のような負のイメージが生まれれば、当事者や家族は追い詰められ不安や絶望を深めてしまいかねません。
■当事者の家族でつくるNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」
今回の事件は、『ひきこもり状態だから』起きたのではない。社会の中で属する場もなく、理解者もなく、追い詰められ、社会から孤立した結果、引き起こされた事件だったのではないかと推察する。
また、同じような事件が繰り返されないためにも、今後、社会全体で、なぜこのような事件が起きたのかを考えていく必要がある。
■ インターネットで当事者や経験者の声を伝えている「ひきポス」の石崎森人編集長
当事者を追い詰めるのではなく、しっかりと事件を検証し、社会の不安が和らぐ報道や言論であってほしい。
報道では犯人は以前から近所の人とトラブルが起きていたらしい。これはひきこもりとは関係なく、トラブルを起こす人だったということだ。そのことはそのことで対処すれば良かったのだと思う。
行為を責めることと、その人の置かれている状況を責めることはまったく違う。
■ ひきこもりの若者などへの支援をしているNPO法人「フリースペースたまりば」の西野博之理事長
川崎の事件のあと、当事者を支える家族も周囲から向けられる視線を気にして孤立化している。子どもが社会に迷惑をかけたらどうしようという不安から、追い詰められてしまう親はほかにもいるのではないか。
容疑者がひきこもりだから事件が起きたと捉えるべきではない。仕事に就いている人でも誰であっても、自分の存在を否定されたり生きている価値がないと言われたりしたら自暴自棄になりかねない。
他人事として突き放さず、生きづらさを抱える人たちの実情を理解し社会全体でどう支えていくか、考えていく必要がある。
次回は、ひきこもりビジネス業者(自称支援団体)のいったい何が問題視されているのかについて述べたい。