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人が恋に落ちる瞬間ってどんなとき?(コナリミサト作品の魅力を語る)

「この人のことが、好きかもしれない」

と思うときって、どんな時ですか?

わたしは、人が恋に落ちた瞬間の話を聞くのが好きです。
人それぞれにささる瞬間というか、恋に落ちる瞬間ってさまざまなので、それが面白い。一目惚れの子もいれば、弱った時に看病してもらったら恋に落ちた、とかのベタなのも好きだし、気付いたら好きになっていた、というパターンもありますね。

一方で
「この人との関係は、もうだめかもしれない」

と思ってしまったきっかけも結構気になります。どちらかというと、人って好きになった瞬間よりも、この人との関係はもうだめだ、と思った時のほうがうまく言語化できたりします。好きな食べ物より、嫌いな食べ物のほうが、うまくそのだめな理由が説明できるというか。

わたしの場合は、一緒にご飯を食べていて「おいしい」と思えなくなってしまったとき。
気に入っているご飯屋さんがあって、ある時、元彼と一緒にいったときにどうしてもお腹がいっぱいになってしまって。もっと食べたいのに、なんだかもう気分でお腹がいっぱいというか。そのときはなぜだか理由がわからなかったんですが。緊張した時にお腹がいっぱいみたいな。うまく表現するのがむずかしい。

後々、別の人と一緒にその店に行った時に、またおいしく食べられたとき、その理由がわかってしまって、自分の身体って正直に表現しているんだなと思いました。


「凪のお暇」は漫画家コナリミサトさんの作品で、ドラマ化もされました。正直、絵はあんまり好きじゃない。ドラマを読んで、言葉選びが好きだったので、言葉集めみたいな感覚で読み始めたのがきっかけです。

なんか独特なんですよね。表現が。
例えば、主人公の凪が、だめな男性ゴンのことが好きになることを吐露するシーンがあるんですが、凪は

「ゴンさんといると、空気がおいしい。でも、ゴンさんといられないときは、息してないみたいだった」
と。

すごい表現。「彼の見た目が好き。やさしい所が好き」とか、そういう好きを説明する理屈を真っ正面からぶったぎっている。

この人といると空気がおいしい。そこに、もう好きになったら理由なんていらない、みたいな表現がぎゅっとつめこまれているのが、ストレートにささりました。そこからコナリミサトさんのマンガは結構読むようになって「珈琲いかがでしょう」と「一人で飲めるもん!」も目を通しました。


少し話は脱線するんですが、
凪のお暇がドラマで話題になった直後に、同業他社の後輩が会社を辞めることになって。仕事柄、繁忙期は朝から夜までかなりハードワークになることがあって、彼女はそれを乗り越えて、でもかなり疲れ切った感じで「自分のために少しゆっくりする時間がほしい」ということで会社を去ることになったんですが、
送別会のときに、彼女はとても晴れやかに
「しばし、人生のお暇いただくことにします!」と言ってさいごのあいさつをしていて、「お暇って言葉いいな~もっと広がればいいな」と思ったのをすごく覚えています。


日本人は働きすぎだとか、そんなたいそうなテーマにするつもりはないですが、人生の中で少しお休みする。そのことはとても尊重されるべきことだし、そういう機会を後ろめたさを持たずに持つことのできる社会が広がればいいなと思います。

でも、だからこそそういうときに、気軽に使えるワードというのがとても重要になってくると思う。「休職する」「無職になる」「仕事から離れる」とか、たとえ一時期であっても仕事を持たないというのは不安で、周囲からマイナスなイメージを持たれることがあるかもしれないけど、長い人生、少しのゆっくりする時間を持つことを後ろめたいと思わない、そんなムードが広がればいいな。


コナリミサトさんのもう一つの代表作が、これもドラマ化された「珈琲いかがでしょう」。

コナリミサトさんの作品の一つの特徴は、弱い登場人物が沢山でてくるんです。日常の中で決して珍しくはない、同僚をいじめる人、良くない仕事をした過去がある人、夢を持っていても、うまくいかなくて挫折してしまう人。
社会にありふれたそんな少し弱い人たちを自然に描きながら、最終的には軽やかに彼ら、彼女らを、たとえ断片的であっても救っていく。

「珈琲どうでしょう」は、意味深な過去を持つ主人公が、やはり日常に悩む人たちを、それぞれに合った珈琲を提案し、提供しながら救っていきます。2巻は正直、うーん、このままのストーリーで耐えられるかな…と少しだれた感じになってるんですが、3巻でやはり鮮やかに、読者の誰をも絶望させずにきちんと救って、まとめていく様子がさすがでした。
最後に、こういう漫画によくあるパターンで、それぞれの登場人物のその後の様子が描かれるんですが、ちゃんとどの人物も前向きに描かれているのがよかったな。余韻を残して、読者に想像させる部分があるのもわりかし好きでした。情報が過分でない。

あと、珈琲を入れてあげたくなる。そんな漫画。

わたしがもし、何にも気にせずに好きな仕事をしていいとなると、
一番にやりたいことは「コーヒースタンド」なので、余計にささったのかも。この夢を身近な人たちにすると、「コーヒーすきだったっけ?」って聞かれるけど、コーヒーは特に好きじゃなくて、むしろ紅茶派。

でも、珈琲飲んでる人が好き。
忙しそうにしてる社会人が、珈琲飲んで、ほっと一息ついているその姿と空間が好き。だから、将来お金に余裕ができたら、コーヒースタンドを開きたいな。夢は言葉にすると叶いやすくなると思っているので、ここでも元気に発信していこうと思います。笑

いつか誰かに、最高の一杯を入れてあげたいな~~。

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