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音声でなくても、言葉は使える。

理解できる言葉が増えると、初めての言葉が出る、表出できる言葉が増える、というのは、言葉の発達について、あらゆるテキストに載ってる基礎的事項の1つです。

けれど、どんな事項にも、そうではないケースがある、ということも、大切な基礎的事項の1つです。

脳や舌を含めて、言葉として声を発するまでには、いろいろな部位でいくつものプロセスを踏みます。そのどこかが働きにくいと、「あー」「おー」のような発声のみになることがあります。

理解できる言葉がどれだけ増えても、です。

理解できる言葉がどれだけ増えても、表出できる言葉が増えない子はいるのです。

知的な発達がゆっくりだったり、自閉症のような傾向が重なったりしていると、言葉を発するまでのプロセスのどこかが働きにくいかもしれない、ということが気付かれにくくなります。

そして、言葉をもたない(言葉が少ない)という判断で働きかけを受けることが多くなると、言葉を理解したり表出したりする機会が少なくなり、言葉の発達が滞ります。二次的に困難さが増していきます。何とかしたいところです。

もし、発音はできなくても、頭の中で音と文字とを結び付けることができた場合には、文字を使ったやりとりが可能になっていきます。

下の写真は「トーキングエイド for iPad テキスト入力版(U-PLUS Corporation)」を使っているところです。ボタンを押して入力した文字が読み上げられるアプリです。(類似のアプリや商品は複数あります。もともとは麻痺等があって発声が難しい方々を主なターゲットとして20年以上前から開発されてきたものです。)

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物の名前を確認したり文を作ったりするような学習にも使えますし、食べたいものや、やりたい事等を伝えるコミュニケーションのツールとしても使えます。

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記事の冒頭の写真の画面には「もちつきのどうがみたいです。」と入力されています。YouTubeの動画の中にお気に入りの動画があり、私にそれを見たいと伝えてきた時のものです。

もちつきの動画を見たいと伝えることは、一生のうちに数える程かもしれませんし、私に対しては一度きりかもしれません。

けれど、その時々に伝えたいと思ったことを伝えた、伝わった、という経験は、次も伝えてみよう、というモチベーションに繋がります。

そして、伝えた通りになって嬉しい、伝えたのに叶えられなくて悲しい、悔しい、という感情の動きも、伝わってこそ得られるものです。

伝えることが難しかった子が伝えられるようになってくると、こちらも嬉しく思います。この子が「てんどんたべたい(天丼、食べたい)」と伝えてきた時、心の中では「10杯でも100杯でも作るわよ♪」と踊る感じでしたが、ぐっとこらえて「お母さんに伝えてごらん。」と促しました。

言葉は周りの人の心も動かします。

音声でなくても、使えるものは何でも使って、自分の言葉を外へ出しながら、少しずつ、そしてどんどん使っていって欲しいと思っています。





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Matsuura Chiharu
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