フランスの妊娠出産事情と日本との違い
実は私、現在妊娠39週目だったりします。いつ産まれてくるのかドキドキしながら生活しております。
さて、南フランスの田舎の病院での出産を控えている私ですが、日本とは随分違うなぁと思うことが沢山あるので、ご紹介させていただきます。
私は日本での出産経験がありませんが、友人やインターネットから得た情報、元職場の病院の産科から得た知識などを元に比較しています。
①妊娠出産費用が保険でカバーされる
日本では妊娠出産に関する費用は全て自費となっており、その代わりに国が「出産育児一時金」を子一人当たり40〜42万円支給します。
しかし特に都市部の大病院だと60〜80万円ほどの負担になるようなので、政府の援助のみだと足りないケースが多いため、来年から増額となるそうです。
一方、フランスでは "妊娠届" を妊娠4ヶ月目までに国に提出すれば、妊娠出産費用は全て保険でカバーされます。
一部の記事や体験談ブログで「フランスでは外国人でも妊娠出産費用は全てタダ!」のような記載を拝見しましたが、そのようなことはありませんでした。
私の場合はVitalというフランス在住者が一般的に保持できる保険のため、妊娠6ヶ月以降〜出産までは無料ですが、それ以前は基本的に3割負担でした。
Mutuelという追加の保険に入っていればもう少しカバー率が異なると思われます。
また公立病院と比べ、私立病院を選ぶと追加で費用がかかるそうです。
私は公立病院を利用していますが、妊娠6ヶ月までで支払った金額は薬代、検査代込みでだいたい350€くらいでした。1€=140円とすると5万円くらいですかね。
ちなみに出産時の個室代等は公立病院でも保険でカバーされないそうです。
全て無料では無いにせよ、日本よりはトータルで安く済む可能性が高いです。
これから述べますが、日本の妊娠出産に関するサービスはめちゃくちゃ手厚いので、支払う価値のある費用だと思います。
②無痛分娩が8割
無痛分娩とは、麻酔薬を使用して痛みを和らげる分娩方法です。
日本でも対応している病院は少数ありますが、全体の8.6%(2020年)と増加傾向にあるもののまだ普及していないのが現状です。
その理由としては産科に対応可能な麻酔科医が足りていないこと、そもそも無痛分娩に対応可能な施設が少ないこと、費用が追加で10〜20万円程度かかることが挙げられるようです。
フランスの大きめの病院では産科に対応可能な麻酔科医が常駐しているため、夜間休日含め無痛分娩が可能となります。
費用は保険でカバーされるため、希望者が多いことは安易に想像できます。
実は私もフランスの無痛分娩に大変興味があり(痛みを少しでも和らげたいのと薬剤師としての興味)、フランスでの出産を決意した理由の一つです。
妊娠7ヶ月目には妊婦全員に対して麻酔科医との面談が予定されています。既往歴の聴取や、麻酔によるリスクがあるかの確認をしてくれます。
無痛分娩を事前に希望しない人でも陣痛が始まると「やっぱり麻酔を使ってくれー!」というケースがあるため、全員に対して事前の面談が行われているようです。
③入院日数がやたら短い→日本が長すぎる?
日本の普通分娩での入院日数は、出産日を除いた産後5日間、帝王切開だと7日間が平均だと思います。(もっと長いかも?)
それに対して、フランスは普通分娩(無痛)で1〜3日、帝王切開でも2〜4日間だそうです。
やはり入院費も保険でカバーされているため、最低限の入院期間で帰宅してくださいねということでしょう。私の知る限り、イギリス、オーストラリアも同様です。
そのような点でも無痛分娩により母体への負担を少しでも減らし、回復を早めることが優先されるようです。
日本では入院期間中に母体を休ませるため、助産師さんが新生児を預かってくれたり、お世話の方法を手取り足取り教えてくれるイメージがあります。正にサービスでは日本が一番だと思います。
フランスでは産後2時間後から母子同室にて自分でお世話を始めるそうです。おそらく指導はしてもらえるとは思いますが…。また詳しくは出産後にレポートしたいと思います。
④助産師さんが医師並みの職権を持っている
フランスの助産師さんは「sage-femme」(賢い女性)という名で呼ばれます。
日本は妊娠反応が出た時点でいつでも産科の受診が可能ですが、フランスでは妊娠12週目頃にようやく最初の予約が取れます。(これは個人的にはキツかったです…)
その後は出産の直前まで月1回フォローアップの受診がありますが、sage-femmeとの面談のみとなります。
施設によって、また妊婦が元々持っている基礎疾患等によって異なる可能性がありますが、医師に会うのはエコーの予約(面談とは別で全3回、次項で述べます。)のときのみです。
sage-femmeとの面談では毎回血圧、体重、胎児の心音を確認し、次回の受診までに必要な検査の処方箋(⑥で詳しく述べます)や薬の処方箋をくれます。
sage-femmeに検査と薬の処方権があるので、それがそのシステムを可能にします。
また、病院とは別にオフィス(cabinetキャビネと言います)を構えるsage-femme達がいます。
彼女達は日本で言う両親学級のような出産前の教育を担当します。(全6回程度あり、結構手厚い)
日本だと出産1ヶ月前は毎週病院の受診がありますが、フランスでは病院受診の代わりにcabinetのsage-femmeに毎週チェックをしてもらえます。(胎児の心拍数や動きを確認)
病院のsage-femmeか医師がそのための処方箋を書いてくれます。エコーの時に何か心配事や問題がある場合は週2回のチェックとなります。(胎児の低体重が予想される等)
産後1週間後にもcabinetのsage-femmeが自宅まで母親と新生児の健康チェックに来てくれるそうです。
⑤エコーの回数は全妊娠期間中、基本的に3回のみ
日本では毎月の受診ごとにエコー画像で胎児の様子を診てもらえます。出産前は週1回なので、合計12回程度でしょうか。
それに対して、フランスは全妊娠期間で基本的に3回のみです。
何か問題があればそれに追加で予約を取ってもらえます。
私の場合は妊娠5ヶ月目で薄い出血があり、それをsage-femmeとの面談で伝えたところ、念のためエコーで確認した方が良いと言われました。そのまま産科の救急部門に案内され、エコーで切迫早産等の問題がないことを確認してもらえました。
また妊娠8ヶ月目の3回目のエコーにて胎児が小さめだと指摘され、1ヶ月後にもう一度エコーで確認してもらえました。
このように医学的に必要な場合のみ3回以上画像で診てもらえます。
日本のように毎回医師と一緒に胎児の様子を確認できると安心できますし、精神面にも良いと思います。とても贅沢なサービスなのだと知りました。
⑥臨床検査施設が分業している
日本では病院を受診した日に血液検査や尿検査などの臨床検査をやってもらえますよね。
フランスでは検査施設が完全に分業しているため、医師やsage-femmeに書いてもらった処方箋を持って別日に検査施設で検査を受け、次回の病院の受診日に検査結果を自分で持参します。
イメージとしては、薬の処方箋を持って薬局で薬をもらう感覚です。
妊婦は月1回尿タンパクの値とトキソプラズマ感染を確認する検査が必須です。(貧血等を確認する血液検査がプラス2回)
検査施設にいちいち出向くことが非常に面倒で、最初信じられない…と思いました。
慣れてくると、事前に貰っておける尿検査キットで自宅で尿を採取し、朝イチで検査施設へ向かいます。
血液検査の前には食事ができないため、病院で空腹のまま待たされることなく民間の検査施設でさっと採血を終わらせ(20〜30分程度)、帰りにパン屋さんに寄って帰ることが月1の習慣になりました。
いや…でも面倒です、やっぱり。(笑)
⑦薬局にて、薬効ごとに保険のカバー率が異なる
日本では患者が持っている保険の種類(主に年齢)に応じて、薬の保険によるカバー率は異なります。
例えば、どの薬を処方されても70歳未満の人は基本自己負担額30%ですよね。
フランスでは、薬効により異なります。薬ごとに保険償還率が0%、30%…とラベル分けされているそうです。
例えば、便秘薬である酸化マグネシウムは保険が適用されず、市販薬扱いのため妊娠6ヶ月以降でも100%自己負担となります。日本なら安い薬なんだけどなぁと思いながら支払っています。
⑧入院時の持ち物が多すぎる
また別の記事で紹介しようと思いますが、入院時の持ち物リストが多すぎて驚きました。
例えば、自分用の枕や掛け布団、ベッドサイド用ランプなんかも記載してあり、それくらい備え付けておいてくれー!と思ってしまいました。
スーツケースに用意しましたが、すごい大荷物になりそうです…。車が無い人はどうするのでしょうか。
⑨産後のペリネケアというものが主流らしい
ペリネとは骨盤底筋のこと。妊娠出産で確実に緩んでしまうため、産後の尿漏れなどのトラブルが起きやすいとのこと。そのためのリハビリをペリネケアと呼ぶそうです。
まだ産前のため詳しく説明はありませんが、産後に希望すれば保険適用内で10回の受診(理学療法士さんと)が可能だそうです。
もし受けることになったら、またレポートさせていただきます。
いかがでしたでしょうか?
なかなかの長文になってしまいました。
日本とは異なる医療制度で戸惑うこともありながら、興味深くもあります。
日本の病院や産院ではかなり充実したサービスを受けられますが、フランスの効率を重視した最低限のサービスを取り入れることも日本の保険制度改革には必要かも?しれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました😊
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