バーチャル短歌結社・四号線 第1巻第8号2021年10月
・短歌連作「虚空のほころび」
君を呼ぶ(神らは西へ行ったとさ)わたしというかわたしの声が
背景の奥で山鳩啼く朝に気分が良くてなんかごめんね
コンビニは墓石に似て間違った光にて死す蚊や蛾や蝶も
ワクチン後ひと駅ぶんを歩いたら銀木犀がまだ一部咲き
パスミスの屁理屈を問う声つづく 「教えるー学ぶ」は幻想だった
ああやっとハッピーエンドに来たようなこの夕暮れの底へと屈む
精神がとある行為の原因というのは嘘でしかもチープで
理論家とみずから称しつれづれの空腹感と預金残高
ストリートピアノを聴いた 思春期が乱暴になりぶつと途切れた
「リカちゃん」は完璧のまま笑みつづけ一貫性はストレスである
「雲ばかり追うような子で危うくて」「ねえ、おとうさん、そのこはしぬの?」
いくら探してもレールは一本でオルタナティブをまた通過する
満月が完璧すぎて実際はなにが光っているのだろうか
炊飯のタイマーわざと忘れてた なにもしないも改善である
いにしえのどこのだれかのものですよ丑三つ時のきみの欲望
真剣に雨を待ってるいもうとの透明傘に「ざあざあ」と書く
あした死ぬ設定により生きなさい/そんなのたぶんなにもできない
影となり光となりて鳥たちは蒼い虚空のほころびのよう
・雑感
死を意識すると生が輝きだす、といったような「存在と時間」の解釈を聞いたことがあって、ふんふんそういうものかと思いながら(もちろんたいていは忘れながら)生きてきたのだけれど、この解釈はなんというか、ちょっとわかりやすさに過ぎるという意味で、いったん否定してみることにした。死と生はそれぞれ別に捉えるということばかり考えていたら、あっというまのひと月でした。
もし、短歌を書いて何らかの金銭的サポートをいただけたなら…、奇跡的に嬉しいです、踊っちゃいます😊もちろん少額でオッケー、死ぬまで感謝し続けます🥹