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過疎地で店を持つ勝算

周りからはうまくいくはずが無いと笑われた田舎

での出店。

それが今ではシーズンにもよるが、特に蟹シーズ

ンになると、予約しなければ席が確保できない店

にまでなれた。

ここに来るまでは本当にきつい時期もあったし、

この道が合っているのかさえ疑うような時期もあ

ったが今のところ自分の選んできた道は自分なり

には正解だったように思う。

前回少しだけ触れた勝算について書きつづろうと

思う。

商売は勝ち負けでは無いし勝算という言葉を用い

ることが適切ではないかもしれないが、成功する

ための要因というかそんなことを表現したいと思

う。

まず人が絶対的にいないこの過疎の村で出店した

理由が大きく分けて4つある。

まず1つ目は魚を扱う商売であり仕入れというも

のがサービスや商品づくりに大きく影響すること

から、地魚を売りにしている魚屋の喰い処まつ田

にとっては仕入れの圧倒的なアドバンテージがあ

る沿岸部の越廼地区での出店は必須だった。

中央市場には2番競りという朝取れの魚の競りがある。

朝どれの魚が競られる。

昨今の流通の発展により良いものが街中や首都圏に届く

ネットワークができている。

しかし、2番競りには地元の水揚げの時点で地元業者が

先に仕入れた後の残りのものが並ぶため、いい魚は残らない。

地元で仕入れをした方が希少な魚や同じ魚でも良いクオリティの魚を仕入れることができる。

1日2回の定置網の水揚げや一本釣りや個人の小さ

い漁をしている漁師からの仕入れが可能な為、び

っくりするぐらいのクオリティの魚が手に入る。

漁に出ているときは沖から電話があり何時頃に入

港するから魚を選びに来いと言ってもらえる。

それを地元で営むレストランで販売する。

まさに地産地消。

仲介業者が入らないから高値で漁師から魚を買っ

てあげることができる。

高くお金を払うからいい魚が集まるようになる。

WIN-WINの関係が築けている。

まだ小さいうねりではあるがこの関係を続けて

いって魅力がなくなり減少してきた漁師という

職業を儲かる仕事に変えて、漁師を増やしてい

きたい。そしてかつては賑やかだった漁師町の

復活を願う。

仕入れの利点から成功要因の第1歩はここにあ

る。

2つ目は店舗購入費やテナントが格安。

田舎で使わなくなった空き家や、売り物件がす

ごく増えている。

うちの場合は旅館の跡地を安く購入することが

できた。

なぜこの物件を購入したのかをお話しすると、

まずは海側に建物が建っている為ロケーション

が抜群にいいことである。

どのロケーションで食事をするかで味は変化す

ると思っていたのでお客様には海を感じたロケ

ーションで食事を摂っていただきたいと常々感

じていた。

沖で漁をする船の営みが見えたり、砂浜に打ち

寄せるさざ波や冬の大荒れの日本海。

まるで海に面した窓一面が季節ごとに変化する

絵画の額縁のようにさえ感じる。

こんなロケーションはそうそうない。

このロケーションと自分たちのやりたい商いの

規模感、それに見合った格安の店舗出店コスト

がここに決めた理由である。

3つ目の理由は昨今のインターネットの台頭で

ある。

一方通行の情報の流れではなく、お客さま自身

が行きたい場所や食べたいものなどをピックア

ップして情報収拾を行える環境になったことだ。

そして良いも悪いも情報として発信するツール

や場所が増えていったことだ。

今までだと資金力のある大企業の宣伝が一番強

いプロモーションだったのに対して、非常にニ

ッチでコアな情報が発信できるし拾えるように

なってきた。

しかも無料でだ。

アクセスが悪いのはハンデだと思うが、裏を返

せば誰も知らない自分だけが知っている場所に

なりえるのだ。

逆転の発想である。

しかも珍しい場所であれば他の人に教えたくな

りネットで拡散する。

もしインターネットが台頭していなかったら、

この店は流行っていなかったかもしれない。

そのくらい重要な役割を担っている。

4つ目は、一番の大義名分になりうる理由である。

とにかく過疎化していく故郷を盛り上げたいとい

う強い気持ちからだ。

地元の同級生は9割り方外へ出て行った。

勤めの人間にとってはアクセスがいい店がたくさ

んある市街地は便利なのかもしれない。

コンビニという24時間営業している魔法のような

店が当たり前のように軒を連ねて、本当であれば

睡眠をとっている時間に夜食を食べている人がい

る。

確かにいつでも必要なものが手に入る環境は便利

といえば便利だ。

でもいつでも手に入るという価値観が有り難みを

薄くし、人同士のつながりを希薄なものにしてい

るように思う。

営業時間は何時までという約束の中に予約をして

時間通り来店されるお客様がいる。

予め約束しているから合わせて今の自分にできる

最高の準備と最高のおもてなしができることにな

る。

僕の育った故郷には少子高齢化の大きな波が押し

寄せているがたくさんいるお年寄りから学ぶこと

は本当にたくさんある。

こんな環境で幼少期を過ごせたことを今では誇り

に思っている。

不便なところに住んでいたからこそ助け合いの生

活があった。

そんな大好きな地域を今一度盛り上げたい想いか

ら田舎でアクセスの悪い土地でも奮闘すると決め

た。

ここにあるもので都会にはないものを考えた時に

必ずここを訪れていただけるものが沢山あること

に気づいた。

それは自分たちにとっては当たり前すぎたものだ

った。それをフルに活用することで都会からでも

この地を訪れていただけるようになった。

要はきちんと知らせるか知らせないかである。

それからフォーカスの当て方が変わったように思

う。

僕は誰かが作った1に乗っかるより、0から1を作

り出すことが好きなようだ。

今、地域が0に向かって疲弊している。

それをまた微力ながら1に戻して、上り調子で次

世代にバトンタッチしていくのが今の役目だと

感じている。

自分をハブにしていろんな繋がりでこの地に人を

呼び、魚屋の喰い処まつ田という店を通して地域

を盛り上げるお手伝いが少しだけでもできたらい

いなと思う。

また子供達が走り回り、ヤンチャな子供達を叱り

つける近所の大人がいる風景の再生を目指して。


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