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タランティーノの映画に納得いかなかったおれが藤本タツキの『ルックバック』でスッキリした話
この記事は藤本タツキ先生による短編『ルックバック』の個人的な感想だ。
だがそのために、タランティーノの『ワンスアポンアタイムインハリウッド』なくしてこの話は語ることができない。
実は今年の6月くらいにタランティーノの『ワンス(以下略)』を観てず~~~~っとなんかモノが歯に挟まってるような心地悪さを感じてた。マジでラストに納得いかなかった。
そんなモヤモヤが『ルックバック』のおかげでスッキリしたという話。
ワンスアポンアタイムインハリウッドとは?
映画大好き人間であるクエンティン・タランティーノ監督が生み出したハリウッドのおとぎ話映画がワンスアポンアタイムインハリウッドだ。
題材にされているのはカルト教団の信者による実際に起こったシャロン・テート殺人事件で、映画監督であるロマン・ポランスキーの妻だった女優のシャロン・テートが妊娠していた子供もろとも殺されたって事件。
そこにディカプリオ演じる落ち目の役者リックと、ブラピ演じる乱暴者のスタントマン・クリフというふたりの架空の人物を紛れ込ませることで現実のストーリーをおとぎ話にしていく。
以下、ゴリゴリにネタバレする。
映画はシャロン・テート殺人事件へと向かってストーリーが進んでいく、リックとクリフのコンビはたまたまテートのご近所さんという設定で、とうとうテートが殺されるという日に酔っ払って教団の人間に喧嘩を売った結果、彼女の代わりに標的になってしまう。
その結果、リックとクリフはそれまでの伏線を見事に回収する大暴れによって信者たちを徹底的にぶっ殺してオーバーキルして返り討ちにすることでこの映画は幕を閉じる。
史実では殺されるはずの人たちが生き残り、殺す側だったやつらがブチ殺されるという、一風変わった後味を感じさせられる唯一無二の映画だ。
みんなの妄想のデカい版
この映画がなんなのかをおれなりに勝手に解釈すると、みんなが暇な授業中に抱く妄想の超デカい版、クソデカ授業妄想だ。
学校に現れた不審者を返り討ちにしたいとか、何かでヒーローになりたいみたいな願望。
ムカつくやつをボコボコにしたいとか、どうしようもない社会を変えたいとか、正義のヒーローに現れて欲しいとか。
色々な願望があるわけだけれど、それを超大規模にしたら『ワンス~』になる。
ただ、やりたいことはわかるけど虚しい。だってどんなに創作上でボコボコにしたって現実は変わらない。
特に実際に起こってしまったことをどんなに書き換えても救われるとは思えない。おれは個人的にこういう話には納得がいかない。もしもの話をして一体何になるんだろう?
それなら起こったことをそのまま映像にする方がまだ意義がある気がする。
『ワンス~』はもちろん狙ってやったんだろうけど、それでも創作としては中途半端という感じがどうしても拭えない。
Don't Look Back In Anger
藤本タツキ先生の読み切り『ルックバック』にはなんとなく『ワンス~』を意識してるような部分がある。
『ルックバック』には(Don't) Look Back (In Anger)というメッセージが込められている。意味は怒りと共に過去を振り返ってはいけない。
2017年にイギリス、マンチェスターのコンサート会場でISが起こした自爆テロとその後に起きたテロの追悼集会でロックバンドOasisの楽曲『Don't look back in anger』を誰かが歌い出したのをキッカケにやがてこの歌はテロへと対抗する歌になった。
マンガの『ルックバック』にもあらゆる無差別攻撃への反抗というテーマが流れている。
当たり前のことだけど、そこにこそ共感できる。起こってしまったことを怒りと共に振り返っても仕方がない。
オアシスの楽曲は単なる二人の男女の心がゆっくりと離れていく様を歌っているに過ぎない。でも、ふたりの過去に腹を立てたってしょうがないじゃない?という言葉が印象的な歌詞として残る。
過去に戻ってどんなに犯人達をボコったって仕方ない。起こってしまったことはもう起こってしまったんだから、前を向いて現実の方を変えていくしかない。そんなところだ。
だからおれは過ぎ去った過去に戻って過去を変えようとすることにが気に入らない。気持ちはスゲーわかるんだけど、それをしたって現実は変わってくれない。
タランティーノの『ワンス~』は良い映画だけど気に入らないし、そのモヤモヤを『ルックバック』はスッキリ晴らしてくれた。
そんだけ
おまけ
ドントルックバックインアンガー歌詞和訳
きみの瞳にうつる心をのぞいたなら
ここより楽しい場所へうつれるかな
君はたどりつけやしないと言うけど
君がたどったものはなにもかも
静かに過ぎ去っていくんだ
だから革命はベッドから幕を開ける
君から頭でっかちだっていわれたから
花開く夏へと踏み出そう
暖炉の誘いに乗るのはよそう
そんな表情はもうよそう
だって君はまだおれの心を焼き尽くしていない
そうさサリーなら待てる
だって手遅れだって知ってる
もう歩調は合わせられないって
そうだ彼女の魂は離れてる
「だけど怒りで過去を振り返らないで」
君の声が聞こえた
君が行ける誰も知らないその場所を
おれも知れるならいつだって構わない
お願いだから命をロックバンドなんかに握らせるな
やつらは抜け殻なんだから
だから革命はベッドから幕を開ける
君から頭でっかちだっていわれたから
芽吹きの夏へと踏み出そう
暖炉の誘いに乗るのはよそう
そんな表情はもうよそう
だって君はまだおれの心を焼き尽くしていない
そうさサリーなら待てる
だって手遅れだって知ってる
歩いてる内に悟ってる
そうだおれの魂は離れてる
「だけど怒りで過去を振り返らないで」
君の声が聞こえた
そうさサリーなら待てる
だって手遅れだって知ってる
もう歩調は合わせられないって
そうだ彼女の魂は離れてる
「だけど怒りで過去を振り返らないで」
君の声が聞こえた
そうさサリーなら待てる
だって手遅れだって知ってる
歩いてる内に悟ってる
そうだおれの魂は離れてる
「だけど怒りで過去を振り返らないで」
君の声が聞こえた
少なくとも今日じゃない
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