20230207 祭の継続,市民活動の継続 -御柱と諏訪湖浄化推進連絡協議会に関する論文を読んで
祭の研究をみていると,「いかにして祭を維持していくか」という,継続の対象として祭を検討したものが多いと思います。しかし,「祭によって維持されているもの」という「継続の主体としての祭」も当然考えうるわけで,以下の論文では市民活動の継続に祭が重要な役割を果たしていることを御柱を題材に明らかにされています。
山村美保里 2019 世代を超えて持続する市民活動の長期継続要因に関する研究―下諏訪町湖浄連を事例として―. 土木学会論文集D1(景観・デザイン), 75, 1 – 11.
今どうでもよいことに気づきましたが,この論文は土木学会のものなのですね。というのも,建築系の研究者で祭を研究されている人も多くいて,論文検索時に建築学会系の雑誌に載った論文もみつかるのですが,建築学会系のものはどこも無料では読めないのですよね。だから「また建築学会か~」とうらめしい気分でみていました。
で,今回のは土木学会のものなので,素人目には建築学会とおなじように思えたので有料かな?と思ったのですが無料で読めるのだなと。
まあでも,「心理学と社会学」や「心理学と教育学」が「似ているように思われがちだけど全然違うと双方考えている」ように,建築学と土木学も意外と流儀が全然違ったり端的に仲が…くぁwせdrftgyふじこ…。
で,本題に戻りますが,上記の論文では御柱で有名な下諏訪町で月に一度の諏訪湖沿岸のゴミ清掃活動を38年間続けている諏訪湖浄化推進連絡協議会に注目し,それが長年続いている要因が検討されています。
市民活動の継続の要因としては,地域愛着,内集団びいき,援助者間で獲得される内的報酬などの,それこそ心理学的な要因がメインで検討されてきていたようですが,そこに「御柱という祭の存在」をおいて検討したのがこの論文のオリジナリティになると思います。
私が特に印象に残ったのは以下の引用の箇所でした。
祭によってコミュニケーションが高まり,その中で地域について話すことも増えることで地域活動も増えるという流れは非常に分かりやすいと思いました。
また,地域への愛着や共感性などはある意味向社会的や愛他的な動機づけでありますが,「御柱でいい思いしたい!」「自分が地域になじみたい!」というある意味「自分のための実利的な動機づけ」も当然重要だし,むしろそうした側面ももてることが「伝統的な祭の強み」であるなあともわかった気がしました。
あと,「都会からの帰郷者,転入者などが,祭りに関わりたい気持ちから地域の活動に参加しながら馴染む例」の箇所などは博多祇園山笠をみていてもすごく感じていましたので,このあたりを詳しく見てみたくもなってきました。