20241117 中学校の先生は本当に部活の顧問をやめたがっているのか?
教員のブラック労働や教員志望者数の激減など、教師に関するネガティブな話題が連日ニュースで取り上げられています。
その対策の一つとして「部活動の地域移行による教員の負担低減」という動きが明確に存在していて、私は基本的にその動きに賛成しています。
その一環として先日目に留まったのが宇部日報の記事をもとにしたYahoo!ニュースの記事でした。
【書誌情報】
宇部日報 2024 教職員7割超「関わりたくない」 中学部活の地域移行アンケート. (2024年11時54分)
このタイトルをみると「7割以上の教員は部活動に関わりたくないと思っている」と受け止める人が多いと思います。そして「それなら部活の地域移行は急務の課題となるよね」と思う人も多いと思います。
しかし、私のイメージでは中学校の先生は結構「部活の指導」をしたくて中学校の先生になった人も多いよなあというもので、「正直なところ授業より部活を教えたいので教員を志望しています」という学生も何人もいたよなあと記憶しています。
また、私自身、自分が中学校の教員になったら何に一番力を入れたいかといえば、授業よりかは「文化祭の指導」とか「進路指導」のような気がするので、それよりかは部活を教えたい人の方が多いだろうと思います。
調査結果に疑問を抱いたときはまずは元データと調査手法の確認をするのが一番ということで、記事のもとになった山口市の「部活動地域移行推進室」の「第1回山口市中学校部活動地域移行推進協議会の資料等を掲載します(令和6年10月23日開催分)」のページから参考資料3をダウンロードして確認してみました。
基本的に「部活動地域移行推進室」という地域移行推進が目的の集まりで、委員名簿の順を見ても上位にスポーツ協会や地域スポーツクラブ連絡協議会があって下位に校長会などがあることからわかるように、地域のスポーツ協会に学校の部活を担っていただきましょうとお願いする流れのある集まりだと思います。
そこで挙げられていた中学校教職員、教員の状況の結果ですが、基本的に「専門性の低い教員が指導するのは問題」という指摘と「関与意向が低い!」ことに注目が充てられていると思います。
しかしこの関与意向は「地域クラブへの関与」なのであって、学校での部活動への関与ではないのを間違ってはいけないのですよね。
学校の部活の場合、教員は顧問としてすべての責任を負わないといけないけれども大きな決定権があり、自分の思うように生徒を導いていける喜びは体験できると思います。しかし、地域クラブへの関与だとどうしても補助役としてしか関われないので、それならば関与したくないと思うのは当然の心理だと思います。
このあたり、学校の部活への関与の希望などについて調べている調査はないかと検索してみると、名古屋大学の内田良先生が2017年に実施した調査に関する記事がみつかりました。
【書誌情報】
出口 絢 2018 部活顧問「したくない」46%「したい」54%、若手ほど肯定的…教員3千人分析. 弁護士ドットコムニュース.
以下に主だったところを引用します。
この、「若い世代先生ほど部活に肯定的」というのは、若い人は体力あるから部活ができるけど年取ってくると体力が…という面もあると思いますがおそらく違うと思います。
これは根拠のない妄想ですが、今40代とか50代の教員は氷河期世代で競争率が高い時期だったので、採用試験も難しく「授業教えるより部活教えたい」という学生は受かりにくかったのだと思います。しかし近年教員採用試験の競争率が低下し、問題の難易度も下がることで「部活を教えたい!」という教員の採用がされやすくなったのではと私は妄想しています。
また、「部活に興味はなく教科教育にのみ興味がある」学生の場合、その多くは中学ではなく高校の教員を目指すような気がします。そこで高校ではなく中学の教員を目指す人は「いろいろ不安定だけど部活によってすごく伸びて才能を開花させる生徒もいる中学時代」に思い入れがあるからこそ中学校の教員を目指すのではないかなあと思っています。ある意味、小学校の教員と高校の教員の間にあって中学校の教員がアイデンティティを持ちやすいのは「部活」であることが多いため、部活をしたがる中学校教員は多いのではないかなあと思っています。
上に書いた私の根拠のない妄想に少しでも実があり、同じような感じで「部活をするために中学校の教員になった」という先生が結構いる場合、部活の地域移行を急激に行った場合、その先生方の離職を招いたり部活を教えたい学生の受験控えが増えてしまう可能性はあるよなあと。
このあたり、部活を地域移行することで教員を目指すようになる人も確実にいるはずなので、その人たちとのバランスなどを考える必要は出るのではないかなあと思いました。