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20241203流行語大賞に思う賞の信頼性
今年の流行語大賞が「ふてほど」に決まりましたが、「今年は50-50でしょう!」「一度も聞いたことがなかった!」などという声が多くあがり、賞の信頼性が大きく疑われる事態になりました。
直近では紅白歌合戦でも選出された歌手に納得いかないという感想が多かったですし、レコード大賞も「知らない曲ばかり…」という感想が多かったように思えます。
あとは、芥川賞や直木賞についても「本屋大賞の方が…」という意見をよくみかけますし、日本人の英語能力のランキングの低さや大学のランキングの低さなども、そのランキングの仕方に問題があるという感想をよくみかけます。
こんな感じで、近年いろんな賞の権威や信頼性について疑う意見が多くみられるようになったと感じるのは、時代の変化なのか自分の老化なのかの区別がつきにくいですが、やはり権威はゆらぎ信頼性は低下しているといってもよいのではと思います。
ノーベル賞などに関しては文学賞や平和賞はともかくとして物理、化学、生理学・医学、経済学あたりは疑われることは少ないと思いますが、これは日本が結構受賞出来ているからそう思うだけで、今後日本が受賞出来なくなると疑う声も高くなる可能性もあるとは思いますが、それでもノーベル賞は権威であり続けてくれるのではと思います。
また、学会などの受賞者をみていても、疑問を感じるということはなくて、業績の価値にそくした妥当な選出だと思います。まあでもこれは心理学において学会賞がさほど就職や研究費獲得に影響しない(と研究費獲得できていない無能研究者が思っているだけで真実がどうかは知りません)からだけの可能性もあり、影響する分野では自派への誘導とかあるのかもしれません。
賞の信頼性に関しては「利益相反」の側面はやはり大きく、紅白やレコード大賞などの音楽の分野については事務所やらの力関係が大きいのだろうなあと思います。
しかし他の賞に関してはやはり「選考委員」の問題が大きいのだろうと思います。以下、それぞれの賞の公式HPから現時点の選考委員を引用します。
〇流行語大賞の選考委員
選考委員会は、金田一秀穂(杏林大学教授)、辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)、パトリック・ハーラン(お笑い芸人)、室井滋(俳優・エッセイスト・富山県立高志の国文学館館長)、やくみつる(漫画家)、大塚陽子(『現代用語の基礎知識』編集長)で構成される。
〇芥川賞
現在の選考委員は、小川洋子・奥泉光・川上弘美・川上未映子・島田雅彦・平野啓一郎・松浦寿輝・山田詠美・吉田修一の各氏です。
〇直木賞
現在の選考委員は、浅田次郎・角田光代・京極夏彦・桐野夏生・髙村薫・辻村深月・林真理子・三浦しをん・宮部みゆきの各氏です。
流行語大賞の選考委員についてのコメントは差し控えますが、芥川賞、直木賞に関して当たり前といえば当たり前だけど意外といえば意外と思ったことを書くと「知名度の高い小説家しか委員にいない」のだなということです。
これは別に「知名度の高さと小説としての完成度に相関がない」と主張したいわけではなく、知名度と完成度には結構な相関はあると思っているのですが、「作り手としてのプロ」だけであり、「鑑賞のプロ」やら「研究のプロ」が委員に入っていないのだなあと。
確かに、芥川賞は「今後売れていく小説家」の発掘を目的とする性格が強く、直木賞は「安定して売れ続ける作品を作れる小説家への報償」的な性格が強いと思うので、「作家が作家を見出す」のが一番良いように思われます。
しかし、私的には「文芸評論家や文学研究者が選んだ作品」というのを読んでみたい気もして、そういう賞が発表されるならそちらを知りたいなあと思いました。
近年とみに「さまざまな賞の権威や信頼性がゆらいでいる」のは確かだと思いますので、歌と小説だけでなく絵画や建築やサービスなどさまざまな分野の著名な賞を集めて、それぞれの権威や信頼性についてアンケートを取って「賞のランキング」を発表したら面白そうなのですがどこかしてくれないかなあと。