この祭心理学NOTEでは博多祇園山笠についてずっと書いてきております。んがしかし,やはり神戸に居を決めたのですから京阪神の祭についても今後見ていきたいなあと思っていて,今の所その候補として神戸のだんじりや京都の祇園祭と地蔵盆,そして灘のけんか祭などの西播の秋季例祭をみたいなあと思っています。
そして昨日祭関係の論文を探していて,タイトルに興味を持って軽く目を通してみると,取り上げられている祭が網干の魚吹八幡神社秋季例祭だったのでこれは貴重と思い読み進めることにしました。
大平和弘・中堀 卓・浦出俊和・上甫木昭春 (2014). 市街化に伴う自治会分割地域における居住者の祭りへの関わり方とコミュニティ意識. ランドスケープ研究, 77(5), 701 – 706.
ページ数は少ないのですがすごく内容的には盛りだくさんで,祭の運営集団における年齢階梯制の資料も非常に貴重にありがたいのですが,ここでは「祭へ参加可能かどうかや自治会の分立時期などで分けられた5つの地域での祭の効果認識と祭の継続に必要な項目に関する比較結果に焦点をあててみたいと思います。
まず,祭への参加可能性や自治会の分立時期などで分けられた5つの地域の説明について,少し表記を変えましたが基本的にはほぼそのまま引用したものを以下にあげます。
上記5つの地域での祭の効果認識と祭の継続に必要な項目に関する比較結果を以下に引用します。
祭りの効果認識に関して言えば,全般的に[旧集落]が高いのはまあ当然だと思います。しかし,ちょっと不思議なのは,[旧集落]についで祭集団としては有意な位置にあると思われる[天満1区]の数値が悪いことが多く,「家族や親戚との絆が深まる」では断トツの最下位であることなどが気になったりします。もしかすると単身者世帯が他に比べると多く,「家族や親せきがいないから深まりようがない」ことを反映しているかもしれないなあとも。
次に面白いのは,祭の継続に関する質問の所ですが,興味深い考察を以下に引用します。
祭に参加することで地域への愛着が高まるのはよく知られていますが,この研究では「参加はできないが屋台が巡行してくることで見学ができる地区」と「参加も巡行もない地区」の比較を通じて,「参加だけでなく見学だけでも祭や地域コミュニティ形成に役立つ」ということが見いだされたのがすごいなあと思いました。
まあでもそういう視点で見ると,山陽電鉄網干線による南北の断絶が残念だなあと。織姫と彦星を合わせない天の川に渡すかささぎのように,山電を屋台が渡るようになればいいのになあと。