令4(行ケ)10035号(GUZZILLA)事件

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023073000177&g=soc
によると、東宝(株)(以下東宝という)が建設機械を販売している会社Aの商標権の無効判決がなされたとのニュース配信がありました。

会社Aの商標は「GUZZILLA」で、東宝が使っているのは、「GODZILLA」。
この事件は経緯がややこしいので、整理しました。

本件商標は6143667号で下記の経緯で成立し、今回無効審決を維持する判決がなされました(裁判所HPには2023/08/01現在未掲載)。
理由は、東宝の「GODZILLA」が周知著名商標であるので、混同する(商標法4条1項15号違反)というものです。

この事件の前に、同じく「GUZZILLA」と「GODZILLA」が混同するので登録無効という判決がなされていました(令1(行ケ)10167号)。みると原告被告が本件と同じです。指定商品が異なるのかと思うと、同じです。不思議な事件です。
経緯は以下です。

まず、指定商品7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」で、本件と同じ商標権の登録5490432号がありました。
この登録について、東宝が、無効審判を請求しましたが、無効理由無しとの審決(第1次審決)がなされました(①)。東宝は知財高裁に審決の取消を求めて訴訟を提起し、2019.6.12に審決を取り消すという判決がなされました(平成29(行ケ)10214)(②)。A社は上告受理申立しましたが、不受理となり判決が確定し、審判に戻りました。審判では当然、判決に拘束されますので、無効の審決がなされました(第2次審決)(③)。
この判断について不服申し立てをしても、先の判決を争うことはできませんので、負けは確定です。A社は、ここで商標権を分割し、分割した商品については審決が間違っているとして訴訟を提起しました(令1(行ケ)10167号)(④)。







その際の分割した商品は、「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」です。下記に示します。



知財高裁は、この審決取消訴訟にて、先の事件と同じく、無効理由ありと判断しました(⑤)。分割についても「商標権の分割の効果を主張して,本件審決の取消しを求めることは,原被告間の手続上の信義則に反し,又は権利を濫用するものとして許されない。」としました。これについて上告受理申し立てをするも、やはり、不受理でした。これで先の登録についての無効判断が確定しました。

本件ですが、先の事件の第1次審決後、訴訟中にて、出願されています(⑥)。指定商品は、上記のとおり「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」です。この段階では、先の出願は「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」を指定しているので、商標同一でも、指定商品が同一ではないので、登録はされました(⑦)。尚、登録は(平成29(行ケ)10214)(②)の少し前でした。もし、当該判決で第1次審決が取り消されていたら、審査を中止したのだと思われます。
東宝は、この商標権についても、無効審判を請求しました(⑧)。ただ、先の出願の判断が決まっていなかったため、審判的続きは中止していました。

先の出願の判断が確定したので、本件についても、無効審決がなされました(⑨)。今回の知財高裁の判断は、無効審決を維持したというものです(⑩)。

通常は、同一人であっても、同一商標・同一指定商品の出願は拒絶されますが、6143667号の登録時には、先の出願の指定商品は中位概念で特定していたので、商品同一という問題は起きませんでした。

本件については、別途、不正競争防止法違反の判決もあります。
令和1(ワ)26105  不正競争行為差止等請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/495/091495_hanrei.pdf
原告 東宝
被告 本件商標権者
判決は、Tシャツ、フィギュアなどについて、販売差止、および損害賠償約41万円を認めています。


先願商標が周知・著名か否かの判断、さらに混同するか否かの判断は、先願商標の使用および需要者・取引者の認識によっても変わる可能性があります。その意味では、今回の商標を巡る争いは、今後も、続くかも知れません。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?