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ベトナムで4年働いた今思うこと

東京で5年、海外で6年。ニート約1年。
社会人としてのキャリアが、日本より海外の方が長くなってきた。タイ、ベトナム、台湾で働き、そのうちベトナムが4年。ベトナムを離れる前に備忘録として残しておきたいと思う。

あくまで、日系企業のベトナム法人で働いた経験から書いています。
日系企業を相手に仕事をするのと、ローカル企業を相手に仕事をするのでは雲泥の差があり、同じ『ベトナムで働いていました』といっても経験値が全然違う。私はただ場所を海外に移し、親日国のベトナムで快適に暮らしながら働いていただけで、世間が思うようなグローバルな働き方とはほど遠いということをご了承ください。

日本人ひとりが頑張ったところで、何もできない。

優秀なベトナム人スタッフたち。やたらこういう写真撮りたがる。

日本でそれなりに実績を積んできたつもりだったけど、ベトナムにやって来て『この国で外国人である私は何もできない』ということを認めざるを得なかった。
ベトナム語が出来ないと相手にしてもらえなかったり、手続きに時間がかかったり。事業の成長スピードを優先させるなら、ベトナム人スタッフにベトナム語でがしがし進めてもらうのが早い。ローカルスタッフの協力なしに、海外支店の運営は成り立たない。

大学と良い関係性を築き仕事ができるのは、関係性をキープするために定期的に連絡を取ってくれたり、教師の日に菓子折りを持って訪問してくれるスタッフのおかげだし、
高めの金額を提示されても、そこから交渉力を発揮して契約までこぎつけてくれる総務スタッフのおかげ。どんな交渉をしているのだろうか。
サービスを順調に伸ばせたのも、普段候補者と接しているキャリアアドバイザーの熱心な対応のおかげ。じわりじわりと口コミで広がっていった。ローカルスタッフに助けられて、教えてもらって、支えられてやってきた。

海外で働く日本人の役割

上記に記載した通り、日本人ひとりが頑張ったろことで、何もできない。
できるけどインパクトが小さいという方が正確な表現かもしれない。

海外で働く日本人の役割は『マネジメント』と『責任を取ること』の2つだと思っている。(日系企業で働く日本人の役割として)

作業要員であれば、ローカルスタッフの方が優秀で、よく働き、コスパが良い。組織を作る、まとめる、拡大させる、そして現地側で問題があれば、どんな理由であれクライアントが納得できるよう説明をし、謝罪をし、迅速な対応をし、全ての責任を取ることが仕事。

マネジメントの面では、いかにスタッフたちがパワーを発揮し活躍できる環境をつくるか。キャリアが頭打ちにならないように、1on1を行い、いろいろ相談しながら、常にちょっと高めのことに挑戦してもらったり、権限を持ってもらったりしてきた。でも『月1の1on1は多い』と苦情をいただき、後にクオーターに1回になった。

あとは、日本側とベトナム側との間に入り、調整をしながら進めること。
お互いの言いたいこと、背景を理解し、ベストな方法を見つけながら進めていく。伝え方1つでうまくいくものも、いかなくなったりする。言葉を選びながら、なぜこれが必要なのか?納得して動いてもらるよう説明しながら進めていく。

どうしても日本側のクライアントの要望となると、ベトナム側の立場が弱くなり、何でも受入れてしまうと、スタッフたちのストレスバロメーターが限界に達する。それを防ぐ、スタッフたちを守るというのも役割の1つなので、あくまで私はベトナムサイドというスタンスは崩さないように。
レポートラインと、情報の全体共有も徹底した。

その他、膨大な量の書類をさばき、サインをし、オフィスを探して借り、スタッフたちの給与交渉に頭を悩ませ、お金の管理や確認、業務管理、システム導入、ケンカが始まれば話を聞き仲裁に入りと、とにかく庶務が多い。

『海外で働いたからこのスキルが身に付きました』と胸を張って言えることは残念ながらない。個人のスキルを伸ばしたいのであれば、環境の整っている日本で働く方が絶対に良い。新卒ではまずは日本で社会人としての基礎をがっつり叩き込むのがおすすめだと思っている。

その国に貢献すること

『お酒はあまり飲めません』と言いながら永遠に乾杯を繰り返す。モッハイバーヨ!

その国の労働力をお借りし、自社を拡大させてもらっている訳で。
感謝の気持ちは忘れてはならない。『今やっている仕事はこの国の何に貢献できるのか?』を考えながら仕事をする。その国の歴史を学び、文化を知り、リスペクトを忘れない。

労働許可書(ワークパーミット)取得のためには大学卒業がマスト

海外で働くには、労働許可書(ワークパーミット)が必要になる。どの国だって優秀な人材しか受け入れたくはない。その基準は国によって異なるが、基準の1つが学歴になる。

最初に海外の配属先を決めるときに『松岡さんの学歴だとシンガポールはきついよね~』となり『タイor インドネシア』の2択になった訳ですが。学歴はあるに越したことはない。

とはいえ、大学を卒業していないと労働許可書取得の基準にひっかからない。どんな大学であれ、出ておいて良かった!というのがリアルな感想。ただ選択する学科は重要。私は仕事内容と卒業学科が一致せず、労働許可書取得になかなか苦戦した。

日本本社でのマネジメントポジションでの経験や実績があると、取得しやすくなる。という理由で、私はいろんな国を転々とすることになった訳ですが、今となっては本当に良い経験をさせてもらったと思っている。

あまり先の計画を立てても意味がない

市況はすぐに変わる。ルールもすぐに変わる。
オフィス代もすぐに上がる。商材の料金もすぐに変わる。
ガチガチに計画を立ててもすぐに変わるので、目の前のことに全力で取り組み、その時々で臨機応変にベストな選択をしていく、のが一番良いと思っている。計画は半年先くらいまでで、それ以上はふわっと。

コラボしましょうはコラボにならない

日本から視察や出張に来る方と話す中で、有難いことに『コラボしましょう』というお声かけをいただくことが多かった。どうやったら進められるか調べて形にして提案して。でも、それ以降進むことはなかった。その会社が、その人が本気であれば、すぐにできるはず。ベトナムに拠点を作ることは、そんなにハードルが高いものではない。それゆえコラボは必要ない。

オフィス挨拶、情報交換は不要

基本的に、こちらからの情報提供で終わることがほとんど。明確な目的がなさそうだな感じたら『オフィス訪問の目的は何ですか?』と聞いてしまう。その結果もちろん嫌われる。
こちらも普通に仕事している訳なので、暇を持て余している訳ではない。でも日本のお菓子とか貰っちゃうとテンション上がる。スタッフたちも喜ぶ。

ゆっくり休むのは至難のわざ

基本はローカルカレンダーに合わせて働く。
そのため日本が休みでも、現地では普通に働き、現地が休みの時は日本からバンバン連絡が来る。フルで休めた試しがないので気が休まる暇がない。日本のみなさんがこたつで箱根駅伝を見ている間、異国の地でせっせと働いている人がいることも知ってほしいし、ちょっと優しくしてほしい。

ベトナム在住の友達と、旧正月に旅行に行った際、全員PC持参で、代わる代わるオンラインMTGに入ったり、対応をしていたりと単なるワーケーション化したことがあった。1~2日は休めるかもだけど、完全にOFFって訳にはいかない。そして、日本は年間休日が多い。日本は120日くらいあると思うけど、ベトナムは110日くらい。10日くらい少ないのではないかと思う。

『業務量とタイミングを見て休める時に少しでも休む』という技を身に付けておいた方が良いかもしれない。無理をして体を壊しても誰も助けてくれないし、どうしても日本人である私の対応が必要な代わりが利かない仕事もあるし。体調管理は本当に大事。

よく街中で渋滞にはまっている救急車を見ると、万が一、自分の身に何か起こり救急車を呼んだところで、助かる確率は極めて低いと感じている。定期的な健康診断、人間ドック、無理をしすぎないこと重要。

女性が強い

ベトナムは女性経営者比率が高い。これは約10年近く続いたベトナム戦争の影響で、女性も戦わざるを得なかったという歴史的背景も影響している部分はあると思いますが、とにかく女性が強く、よく働く。出産しても2カ月くらいで復帰した社員もおり驚いた。
『働ける若者が働いて稼ぐ』という風習があるのか、おじいちゃんおばあちゃんが子育てをしている姿を良く見る。朝からおばあちゃんが公園で子供を遊ばせていたり、学校への送り迎えをおじいちゃんがしていたりと。ママさんスタッフが居てくれると、コミット力が強く、かなり助かります。

信用しすぎない。期待しすぎない。一喜一憂しない。

信じている人に裏切られることもある。6ヵ月一緒に働いたのちに『実は、、』なんて言われることもある。そのため数回の面接で見極めるのもかなり難しい。いちいち一喜一憂していたらメンタルが持たない。

『あー、なるほど、そう来たか』『じゃあどうする?』と思考回路が働くようになった。どれだけ、プランA、プランB、プランC、プランD‥‥を考えたところで、想像を超えた突拍子もないパターンでやって来ることもある。
最初の1年くらいはJapanese Styleで神経質に働いていたけど、そのまま続けていたら確実にメンタルがぶっ壊れていたと思う。

とはいえ、基本的には信じて任せる

基本的に一緒に働くスタッフには信じて任せる。
外部パートナーは『この人になら騙されてもいいや』と思う人にだけ任せる。となると結局、自社で完結させるのが一番安心となる。

面接はベトナム人同士で

スタッフ採用面接の最終決定はベトナム人のリーダーにお願いしている。私は基本的なスキルや経験、visionや方向性を確認する。気になった部分、懸念点の細かい部分をリーダーに伝え、後はベトナム語で話してもらう。外国語で話すときと、ベトナム語で話すときで性格がちょっと違ったり、私に話すときだけ、とても笑顔で愛想が良かったり。

いくら語学が堪能でも、やはり細かいやニュアンスは母国語でしか伝わらない部分、感じ取れない部分もある。リーダーが納得してOKを出すまで徹底的に面接を続ける。妥協はしない。

悪い報告ほどすぐ上げてね

ベトナム人スタッフと働くときに、言い続けたのがこのセリフだったかもしれない。契約社会だからなのか?ミスを認めたら全て自分が被らなきゃいけないと思っているのか。事が発覚するまで、たいそうな爆弾を抱え、隠しながら仕事をするスタッフがいた。そんな爆弾抱えて仕事をし続けるのは、本人もしんどいだろうし。

悪い報告ほどすぐ上げてほしい、可能性レベルでも報告してほしい、対策が取れるかもしれないから。そして報告を上げてくれたら、怒らないことを徹底した。(表情に出ていたかもだが、出さない努力はしたつもり)

そして、何か問題が起こると『誰のせいか(自分は悪くない)』の説明を一生懸命する傾向にあるので『OK!わかったから原因は何?』『対策はどうする?』というコミュニケーションを多くとっていたと思う。

悪口のようなネガティブな意見も多くなりましたが、そんな中でも、私はベトナムで働くことが好きな訳で、一番の理由が

成長マーケットでベトナム人と働く楽しさ

マイナビさんと一緒に開催をさせてもらった日本就職ジョブフェア

ずっと成長を続けている国にいるベトナム人にとっては『昨日より明日は必ず良くなる』と信じて、みんなキラキラしていて前向きな姿勢を持っている。何か新しいことをはじめるにしても『いいね、やってみよう』『失敗したらその時に考えよう』というポジティブな意見が出てくる。そして目標を定めると猪突猛進で走り出すので、一緒に仕事をしていて本当に楽しい。

ベトナム人はあまり細かい部分を気にしない人が多い。私もかなり雑なので、これくらいがちょうどよい。優秀なスタッフたちと、日本本社からのバックアップがあったからこそ、安心して仕事をすることができ、本当に感謝している。

事業立ち上げ期のGoogleカレンダーを見ると、土日も休みなく働いていたようで、ベトナム人スタッフもこのスケジュールに付き合わせてしまっていたことを申し訳なく思い反省しています。イレギュラーだらけで、うまくいかないことが大半だったけど、楽しかったことしか思い出せない。完全に記憶が美化されている。いや、それでも楽しかったんだ。

10名という大きな組織ではないし、成功が失敗かと言われたらわからないけど、やりたかったことを実現させることができ、ベトナム人スタッフだけでまわるようになったら、日本人はもういらない。

とても居心地が良い場所だけど、お局がずっと居座り続ける訳にはいかない。ここで抜けるのは『無責任かな』って思ったけど、リーダーの子に相談したところ数日考えたのち『チャンスだと思って頑張りたい』と言ってくれた。彼女の成長が嬉しいけど、ちょっと寂しいような、複雑な気持ちになったけど。
楽しかった思い出に蓋をして、次に進んでいけたらいいなと思う。


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