心が救われたCM。【CM分析】 #1

大好きな映像について語りたくなってしまい、この記事を書いています。日々いろんな素敵な映像が世の中に流れていますが、感動して何度も見てしまう映像に出会うことってありません?

僕が好きな映像の第一弾はこちら。
2024年3月に公開されたマウントレーニアのCM「自分にも愛を。」編。
主演は菅田将暉さん。監督は大尊敬している大野大樹さん。


この映像を見たとき1人スタバ居たのですが、人目を憚らず号泣してしまいました。完全に不審者でしたが、それくらいに感動しました。こういう映像は家で見ることをオススメします。


1."ハグ"が持つ破壊力。

"語るな見せろ。"と演出手法ではよく言われますが、「もし、友達が傷ついていたら励してあげたい。」という気持ちを、シンプルに"ハグ"という行動だけで表現しているのが最高です。もしかしたら"ハグ"という行動は「人を励ます。」という行為の中でも最上位なのかなと思いました。余計な言葉なく、お母さんが赤ちゃんを抱っこするような優しさで、しかもそれを実際にはありえない人数で行うことで、感じたことのないレベルの温かさ伝わってきます。菅田さんの表情には「あなたはそこにいるだけで良いんだよ。」と言っていそうな優しさが溢れています。

「友達を励ます。」という行為はリアルでは電話とかテキストとかになってしまうことが多いと思いますが、これらを”リアルで会って抱きしめる”に全て置き換えてみるとこれだけの温かさが生まれるんだな…。と想像させられるから心が動くのかもしれないです。どこかで人間が欲しているものに触れた感覚。最高。

⒉次の展開を見たくなる仕掛けの連続。

少なくとも6回「ん?なんだ?」「お〜!」と心が小刻みに揺さぶられる展開がありました。たった50秒間にこれだけ心を掴む仕掛けが仕込まれていることにびっくりです。他にもあったらぜひ教えてください。

①:0:06~環境音からBGMをイン
②:0:10~”顔が見えない友人"を抱きしめる。
③:0:11~次々に人がフレームインしてハグという驚き。
④:0:21~「励ましてあげたい」からの「”なのに”~できないんだろう。」というネガティブな切り返し。
⑤:0:29~”抱きしめていたのは自分”という驚き。
⑥:0:32~振り返り、どこかへ歩き出す。

3.伝えたいことを伝えるために、前半と後半で大きな驚きを用意する。

この映像のメインメッセージは、0:32~の「もっと自分に優しくなれたら。」あたりからのシーンだと思うんですけど、そこに至るまでに大きな2つ驚きがあったと思います。上で書いたこの2つ。

③:0:11~次々に人がフレームインしてハグ。
⑤:0:29~”抱きしめていたのは自分”という伏線回収。

前者は視聴者を釘付けにするための驚きで、後者は伝えたいことを届けるための種明かし的な驚きで、それぞれ重要な役割を果たしているなと思いました。

シンプルに「自分に優しく」にいうテーマで映像をつくなるなら、前半に大人数でハグする展開はなくても成立しそう…と一瞬思ったんですが、このシーンがなければここまでスッと物語に入っていけなかっただろうな…と思いました。「驚き」というか「グッとくる何か」というのが正しいのかもしれないです。現に僕はこのシーンが1番好きです。笑
いきなり伝えたいことを伝え始めても、なかなか伝わらないもの。いかに物語の入り口に視聴者を招き入れられるか。が重要ですよね。伝えたいメッセージを伝えることができている例として、めちゃめくちゃ学びが深いです。脱帽!

4.光に向かって歩き出す姿が、なんとも神々しい。

0:32~

立ち止まっていた菅田さんが、振り向いて歩き出したときに優しい光が顔を照らします。この闇→光のギャップ感が最高だと思いました。さらにそのままバックショットへ明るい光が照らす方へ向かって歩き出していきます。このシーンがなんとも神々しくて最高です。そしてここで来ます、

「大丈夫、俺たちみんなよくやっているさ。」×「自分に愛を。」

涙腺崩壊不可避!ごちそうさまでした!
頑張った日には、マウントレーニア飲みます!

少しの優しさでどれだけの命が救われたのだろうか。

僕自身、このCMで心が救われた1人なんですが調べてみると制作の裏側が記事になってました。

2024年はより人に寄り添うブランドとしての広告をしたいというオリエンを受けました」と、クリエイティブディレクター・プランナー尾上永晃氏。
そこで「いま、どう寄り添うべきなのか。必要とされるやさしさって何なのか?」について、スタッフで議論を重ね、コピーライター 伊藤みゆき氏が発見した「セルフコンパッション」という概念に着目したという。
「セルフコンパッション」とは、ありのままの自分を受け入れ、他者を思いやるように、自分自身のことを大切に思うこと。幸福感が高まる、ストレスが軽減するなど、近年注目されている考え方だ。

アドタイ

ちょうど僕がこの映像を見ていたとき、さまざまなトラブルが重なり人生で一番レベルに心が落ち込んでいました。まさにこの映像のテーマでもある「セルフコンパッション」の必要性を感じていた時期。

本当に落ち込んでるときって、友達と数秒会って話したり、「大丈夫!」とポジティブな声をかけてもらうだけで驚くほど心が救われたりするんですよね。
また個人的に重要だと思ったのは、ハグした人々が何事もなく日常に帰っていくようにサッと離れていくところ。ひどく落ち込んでそうな人には「どう声かけたらいいかわからない。」と、深刻に考えてしまいがちですけど、少し気にかけてもらうだけでも十分救いになったりするんですよね!
そう思うとたった数秒の声かけとか、優しさがあれば、これまでどれだけの命が救われたのだろうか。とも思わされます。

何かと批判的な投稿などが目につきやすい世の中ですが、そんな時代だからこそ「セルフコンパッション」という概念もっとたくさんの人に広まっていけばいいなと願うばかりです!
素晴らしいCMを制作されたスタッフの皆様に感謝!


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