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変わりゆくことに変わり無い上海へ#フルコロナの上海で2022年を振り返る

タイが情熱と人の熱気にあふれた街だったとすれば、もっともなところ中国は冷めた国かもしれない。

少々おセンチ気味に関西空港に向かい、搭乗検査を終え座席に付くと、こちらの感傷的な気持ちはよそに、防護服を来たCAにバイ菌扱いされる片道21万円のフライトでした。

大連の隔離施設にて


隔離先大連に到着、ここで10日間の隔離生活を行い、晴れてバイ菌マン(正確に言えばウイルスマン)を卒業し上海に着いたのですが、静まりかえった浦東空港(上海)とスワンナプーム空港(バンコク)のギャップを感じざる負えませんでした。

しかしタクシーに乗り込み約3年ぶりの上海市内に近づくにつれて、私の「冷めた」印象は、徐々に「醒めた」に変わっていきました。

空港からほとんど田舎道だった上海も、見知らぬ場所にビル群が立ち並び(前滩)、高架道路から見る上海タワーや森ビル、上海センターなどもはっきり見えている。薄暗くてどんよりしていて、晴れているかどうかもわからない、深呼吸すれば長くは生きれないだろう上海の空気が妙に綺麗で、「こうじゃないんだよな感」を覚えました。

しかし同時に感じるのは、バンコクなどとは比にもならない経済成長。静かに成長を見せる近代都市を目の前に、やはりここは眠れぬ大国の目覚めを感じさせられます。

コーヒー業界を離れて

およそ7年ぶりコーヒー業界から離れました。

コーヒー会社の起業準備をしているので、日本にいるコーヒー従事者の中でも濃い部類の経験をしていますが、厳密に言うとコーヒーとは全く関係のない仕事で飯を食っています。ちなみに言うとこの半年、キーコーヒーを辞めてから、Hueでの仕事の他、ダスキンのエアコン掃除、居酒屋のバイト、アニメイベントのカフェスタッフで魔法の国の住人になったり(めちゃくちゃ活躍した)、Siriと一時間会話し続けたりと、今思えば怒涛な毎日を送っていました。そして今は上海の中国企業で働きつつ、休みはコーヒー関連の仕事をこなす日々を送っております。

コーヒーの街、上海

世界で最もカフェが多い街なのが上海です。

実際数字など見なくても街中には多くのコーヒーショップが軒を連ね、お馴染みスターバックスやコスタコーヒーはもちろん、Luckin Coffee、Manner Coffee、Seesawなど、また郊外に行けばより多くのチェーンブランドを見ることができます。

2025年までに中国国内でローソンを10,000店舗作るという記事を見ましたがスターバックスは9,000店舗。都市部ではコンビニよりスタバがあります。

中国のカフェでのコーヒー一杯の価格は、15元+αというイメージです。

たとえばスターバックスラテの30元は15元のコーヒー代+ブランド代+場所代といったところ。ブルーボトルやアラビカも、味としては大した差はなくブランド代でしょう。

味覚の肥えた上海人のネットコラムを読みましたが、上海一号店のブルーボトルコーヒーに1時間以上も並んで買ったコーヒーがまぁ普通の味で、がっかりしたという意見もあります。ネスレかコピコをマグに溶かしてが中国のコーヒーだった時代は終わり、今は利便性と品質と体験(場所)を求めています。ちなみにスタバ上海ロースタリーは週末に行くとまだ席がないくらい。ここが中国コーヒーの頂点かもしれません。

Starbucks reserve roastery Shanghai


コーヒーの「中華」

中華思想とは、世界の中心にある華、つまり都であるという意味で、言ってしまえば世界の中心は中国ですよという思想です。

コーヒーの世界において「中華」はどこでしょうか。

生産量で言うとブラジル、品質は中米や西アフリカもそうでしょう。消費はアメリカやEU、UK、イタリア、もちろん日本も負けてはいません。そしてそれぞれの独自の文化もあります。
しかしこれらの国と中国の決定的な違いがあります。

中国は世界一のコーヒー消費を生み出すことのできるキャパ(人口、経済)があり、そして世界トップクラスの生産量と品質を生み出すことのできるポテンシャル(生産面積、栽培技術)があるということ。さらにコーヒー器具やマシンブランドもそれに続くように数多く生まれ、中国国内だけでコーヒー市場が完結し、まさにガラパゴス的な進化と発展が起きています。

「コーヒーを語るのに中国?」と一昔前のイメージを持つコーヒー業界人がいればぜひ中国に注目してみてください。まさに将来のコーヒー大国、「コーヒーの中華」となりうる存在です。

現実に為替の変化や収穫不足により、コーヒー原料価格は高騰し、日本が買い負けるという自体も発生しています。さらに日本にファンも多いコーヒー産地エチオピア、港の出資はどこでしょう。

しかしけしてこれは驚異ではなく、もはやアジアから新しいコーヒー文化を生み出すチャンスだと思っています。そう、だから私はリスクを追って、今上海にいるのです。

雲南省プーアルのコーヒー農園
大开河村


あなたたちの国には、こんなにも素晴らしい産業がある。

年の瀬、YSCC(雲南スペシャリティコーヒーコミュニティ:雲南のコーヒー生産者と消費者を繋げることを目的とした非営利組織)が一本の動画を制作しました。私自身産地には足を運んでおり、この動画で出てくる農園や人物とも実際会っていたりと、思い入れのある繋がりで、是非この動画を日本の消費者に伝えたいとの想いから、公式に日本語版の編成を請け負うことができました。(インスタで公開します@matsuken.lonich)

動画内にある言葉を引用します。

回溯原产地最简单且直接的方式
依然是建立牢固的信任关系,以及更多更多的沟通

生産地を遡る最も簡単で直接的な方法は、強固な信頼関係を構築し、より多くのコミュニケーションをとること

YSCC ”重新㝵找云南咖啡”

日本の消費者のみなさん、アジアにはこんなに素晴らしいコーヒーの産地がありました。
そして中国に暮らすみなさん、あなたたちの国にはこんなにも素晴らしい産業がありました。
それを伝えることができれば、とても幸せです。
もちろん彼らのコーヒー、雲南のスペシャリティコーヒーを調達し、日本にも届けます。


さいごに、上海で出会ったみなさんへ

上海で活躍する多くの日経企業は現地化が進み、日本人駐在員の年齢がアジア周辺各国に比べて高い傾向にあります。なので25歳の私が出会う駐在員らは大体ダブルスコアをくらいの父親世代ばかり。日本でなかなか出会わないような方とお会いすることができる反面、なかなか深い繋がりを生み出せずにいました。
ましてや友達なんてなかなか。

だから上海に到着したばかりの約4ヶ月前は今の状況を想像できませんでした。

私のようなまだ若造に対してもしっかり情熱を汲み取り応援してくれるみなさん。

また、日本から来たどこの輩かもしれない私に耳を傾けてくれたコーヒー従事者たち。

そしてまだ数は少ないですが、上海でできた大切な友人たち。

原动力自始至终,就是我并非独自存活。

コーヒーの何が面白いか。そんなのは言うまでもなく、あなたと出会えることです。

2023年もよろしくお願いします。

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