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これからのコーヒーマシンの考察

機械化とコーヒーマシン

機械化はいつでも人間がしていた仕事を
より効率的に、そして正確に、そしてスピーディーに行うことを可能にしてきました。

そんな機械化は、コーヒーマシンも
例外ではありません。

ここでお話しするコーヒーマシンとは、
セミオートのエスプレッソマシンや皆さんお使いのグラインダーという機器ではなく、コンビニやドリンクバーで見かけるボタンひとつでできる
全自動コーヒーマシンを指します。

つまり冒頭の通り人間が行うはずの仕事を代わりにやってくれる機械のことです。

全自動エスプレッソマシン jura WE8
SCAJ2021  root C


昨年SCAJに行き、最新のコーヒーマシンをいろいろ見てきたわけですが、最近だとどのマシンもかなり高いレベルでコーヒーを淹れることができるんですね。コンビニのラテもドリップも美味しく進化し、まじでボタンひとつで結構美味しい
コーヒーは淹れれる時代です。ただ多種多様あるメーカーごとで製品価値の違いを伝えるのが
難しくなってきているようにも感じます。

実際に飲み比べをおこなったとしても、
マシンの使いやすさや見た目は違えど、
「できること」で言うとほぼ横並びです。
頭打ちと言えばそれでお終いですが、
ただこの先どんな大ヒット製品が生まれようが
およそ「できること」は一緒です。

iPhoneが角ばってるのが丸くなったり、
ホームボタンができたり消えたり、
カメラが増えたり、綺麗になったり。
多分2050年にiPhone42が発表されたとして、それがスマホであればできることは一緒でしょう。
カメラが何個かはご想像にお任せします。

しかし逆に、品質や技術の頭打ちは
チャンスでもあります。

車を例に挙げると、テスラがなぜ主流のガソリンではなく電気自動車を作るのか。
理由は簡単でトヨタに今更勝てないからです。
後発事業は、コストを抑える以外にオリジナルに勝つことは容易ではありません。
自動車業界は特に頭打ちが深刻で、ベンツを買おうが、ヴィッツを買おうが走るし、止まります。できることは同じです。

コーヒー業界でも、コーヒーマシンに置いても同じことが言えるわけで、製品力で切磋琢磨することももちろん重要ですが、一歩上から物事を見て、どういう闘い方をすべきか考える必要があるのかもしれません。

ボタンひとつで美味しいコーヒーを淹れることができるのは大きなバリューに変わりはないでしょう。もはや専属のバリスタを立たせておく必要もいよいよ無いようなレベルまで達してきました。
またお会計するだけの人、
ボタンを押してコーヒーをサーブするだけの人、その他沢山いるだけの人。
こちらも不要ということでしょう。

そう結局いつも通り、人間はどこまで必要かという議論につながるわけです。

カフェには人間は要らないという極論では
ないでしょうが、少なくとも注文を聞いて
コーヒーをサーブしてお会計するだけの人間は要らないでしょう。

shingle O


機械はいつの時代も人の仕事を奪って来ました。しかし、その分だけ人は新しいことができる時間を手に入れました。

これからのコーヒー産業をマネジメントし、
イノベーションを起こしていくには、
バリスタがいかにコーヒーに触れさせないようにできるかだったりするのかもしれません。
こんなにコーヒーが好きなのに、
コーヒーをより良くしたいのに、
コーヒーから遠ざけるのは辛いですがね。
ただここで遠くなるのは物理的なところで、
バリスタは本来のあるべきポジションに
立つことができるでしょう。

本来のポジションとは、コーヒーと客の間にバリスタがいるとすれば、現在はどの店も極めてコーヒー側にバリスタはいます。それを一気に客側に引き寄せることができる。
バリスタが本当に気を使うべきなのは、
エスプレッソのクレマの色加減ではなく、
お客様の顔色というわけです。

話を戻すと機械化は悪いことではなく、
人間を単純作業から解放して、
新しい価値を生産する手段ということです。

Coffee×Art exhibition 2021 (Groway)




完全機械化時代に生まれる新たな仕事


機械化によって人間は新しい価値を生産することができると訴えましたが、その逆についてお話をしましょう。

結論ですが、私は完全機械化にした
カフェシステムには、カフェシステムの使い方を教える人間ができると想像しています。

いますよね?
お店で機械の使い方をお客さんに
教えるためだけ配置されたスタッフ。
配置されていないとしても、
ATMのようにコールセンターはあります。

あれは機械化が産んだとも言って
過言ではない仕事でしょう。
最先端のオペレーションによって作られた
最もアナログ的な仕事とでも言いましょうか。
とってもユニークで新しい仕事です。

さて最先端の技術やオペレーションを屈指した
カフェに訪れたあなたは、入店した途端に顔はAIに読み取られ、普段の注文履歴どころか、ヘルスケアアプリに搾り取られた体調や気分、もしくは位置情報と行動履歴であなたがさっき誰と何を食ったか、どんな広告を見て来店したか。
この程度のビックデータは
このカフェではお見通しなわけです。

そして案の定、あなたの気分にドンピシャで合う商品が画面に写り提案されて、あなたの手元にはそのドリンクが完璧に提供されます。

可愛いバリスタにシロップの追加とか勧めてもらいたかったな、とか考えてるとコミュ力抜群の
可愛い(orイケメン)バリスタがやってきて
話が弾むわけです。

とその時に、年配のお客さんが入ってきました。もちろん瞬時にその人の好みを洗い出した
カフェマシンはその人にドンピシャなドリンクを提案しています。

しかし今時の歳とったじーさんにはそんな最先端技術についていけるわけがないでしょう。
そして案の定、後ろがつっかえて渋滞に。
じーさんはコーヒーすら買えず退店。
最悪な事態ですね。

これが実際あるケーススタディかは置いといて、その他トラブルも含めて、
やはり生身の人間の安心力は段違いです。

このカフェは極論すぎるものですが、割と最近の中国にはボチボチじーさん泣かせの店はあるものです。実際現金しか持ってない外人は買えないとかザラですし、自販機でジュースを買うにしても専用アプリが必要という経験もありました。

大学生の時、上海で駅の自販機でジュースを買えず退散した屈辱は今でも覚えています。
(後ろの坊やは親のスマホでサクッと買ってた)

今回のシュミレーションは
日本ならではというところもあるでしょうが、
ただ容易に想像ができるケースです。

利用者を置いてけぼりにするイノベーションは、行き過ぎた状況を作りかねないわけで、
技術をどれだけ取り入れるかは
より慎重に考えるべきなのだと思います。

ちなみに新しい技術を取り入れるのに5年、
浸透させるのに5年。
計10年必要と言われます。

携帯で言うと1G(電話のみ) 2G(メール) 3G(写真) 4G(動画) 5G(高速通信、共有)と進化しました。
軒並み、5年かけて成熟し取り込まれ、
5年かけて浸透してきました。

4Gが始まった少し前、ガラケーからスマホにシフトしていく時、あんなん使えないと騒いでいた人たちが一片、ヘルスケアで毎日の運動管理
なんかしちゃってるわけです。
食ったものをダンスクラブのグループラインで
シェアしちゃってたりするわけです。
この時点で、ユーザーはスマホがない時代
を覚えていません。
けれど「5Gってなんやねん、いらんやん。」
とはなってるわけです。
また数年経ったら5Gになる前のことを忘れ使いこないる時代になるでしょう。
繰り返しです。

ここで忘れてはいけないのは、広まらない、
受け入れられないからやらないのではなく、
やり続けたから受け入れられていった。
浸透していったということでしょう。

コーヒーのニュースタンダードはスタートアップでは間違いなく浮いた存在で、冒頭のように
沢山のじーさんを困らせるでしょう。
店内のシステムを説明して案内する新しい人材を配置しないといけないでしょう。
ただ携帯同様、ユーザーをより便利に豊かにするものであれば時間はかかれど、こちらが
スタンダードになりうるということです。

koffee mameya kakeru

今あなたが働いているカフェでの業務全てが
マシンに取って代わった時、
さてあなたには何が残るでしょうか?
何ができるでしょうか?

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