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コーヒーを求め、繋がりを求め、動き出す#フルコロナの上海で2022年を振り返る

思えば2022年は過去一番長く感じた一年でした。

2022年の幕開けは疫病から

新年は上海での就職活動にピリオドを打ち一安心したタイミングでした。

recruit chinaやカモメアジアにあった求人を上から順に応募していった一昨年。といってもコロナ禍なので両手で数えれるくらいしか求人がない中、なんとか就労ビザをとって上海に行けること。そのあとは、まぁ消化試合みたいなサラリーマン生活だろうなと思っていたら、社内クラスターでコロナにかかり、3週間くらいダウンしていました。40℃くらいの熱が出るは、微熱が2週間も続くはで、結局退社までのカウントダウンは在宅しながらベットの上で、文字通りの”枕営業”です。

10日くらい寝込んでての頃だったと思います。
夜3時くらいに気分転換がてら夜散歩をしていた時のこと。普通に生活していればまず気がつかない場所におしゃれなカフェが(なんだか無理やり)できていました。住宅地には似合わないくらいガンガンに電気が付いていて(植物育成用の光合成ライト)中を覗くとデュードリッヒとEK、マルゾッコ、グラキリスと目が合いました。

さらにインスタを見ればちょうど求人を出していたり、オーナー会社が少し変わっていたり、と湧き上がる興味から、コロナが治ったと見切りをつけた朝には、その店でラテを飲みながら履歴書を書いていました。小耳の良いリズミカルな包丁の音のおかげか、スイスイ書き終え、キーコーヒー退社翌日にはエプロンを着てカウンターに立っておりました。


世界で最もカラフルなコーヒーロースター

店でコーヒーを淹れるのは、およそ3年ぶり。

しかしこの3年でコーヒー業界に深く浸かり過ぎていたのか、カウンターに立ってコーヒーを淹れ、お客さんに出すのってこんなにも楽しいことだったのかと再認識しました。


色でコーヒーを表現する

人間の目はおよそ100万という色を識別できるといいます。
お店に並ぶ6種類の個性的なコーヒーたち。それを引き立てる無機質な空間。
コーヒーが色というお化粧を施し、存分に個性を発揮できる、まさに「色で選ぶ」コーヒー体験ができるお店です。

「どんなタイプのコーヒーが好きですか?」

この街角で好きな異性のタイプを聞かれるくらい難しい質問が、巷のカフェでは毎日繰り広げられています。

「今日はどんな色の気分ですか?」その日の気分の色合わせでコーヒーを選ぶことができる。

こういった発想はコーヒー屋の凝り固まった頭だと出てこないものです。

さらにこのお店でカラフルなのはコーヒーだけではなかった。
このお店で最もカラフルで輝いているのは、間違いなく“人”。
徹底的にカフェのオーダーやレジ業務など、言うなれば無機質なオペレーター業務をなくし、モノクロなコーヒー体験しかできなかったバリスタに自由を与える。
コーヒーの抽出と人の心に残る接客に専念できる。そういった環境でした。

やはりバリスタという仕事は、毎日エスプレッソとにらめっこしてメッシュを合わせるより、お客様の顔色を伺うべき仕事だと思います。
人1人、それぞれ個性という色があって、色相が色の違いを示すようにHueCoffeeRosterはコーヒーを使って人の個性を最も映し出す舞台なのでしょう。
コーヒーを美味しくするのに、高い設備投資も、高級なコーヒー豆も必須ではない。
コーヒーを最も美味しくできるのは“人”なのだと、久しぶりにカウンターに立つ中で感じることができました。



食いっぱぐれからの貧乏旅行

お金と時間。この二つは旅をするにあたって、両立することはない。

5月末から6月にかけて、2週間少しの間リュック一つとミニマムのお金で、タイに行きました。

4月に上海に行けるとばかり思っていた期待はどこえやら、上海で大規模なロックダウンが発生。いつビザが下りるかわからない状況に、文字通り食いっぱぐれたというわけです。

Hueでの仕事も、怒涛のタイミー生活もこれによるもの。

コロナによる失職寸前だったということです。

しかし上海の緊張状態はよそに、タイやフィリピンはワクチン摂取を条件に観光客の受け入れを再開しておりました。

久しぶりの海外とアジアの熱気

夜な夜な見つけた往復4万のタイ航空A787を降り、アジアらしい熱波がお出迎え、という一昔前の深夜特急の世界観なんてものはなく、空港から地下鉄まで、涼しい空調でお出迎えのバンコク。

外はもちろん熱帯の暑さで、プロンポンに着いてやっとバンコクを感じました。

暑さというのは少し語弊があるかもしれません。

気温の暑さより、最も感じるのは街の熱さ、人の熱気です。

コロナで日本で閉じこもっている間にも、世界は、アジアは確実に成長しているということをこの時、再認識させられます。

もちろん対して予算もないので、ナナ駅向かいの200バーツのドミトリー(ずっとノーゲスト)に宿泊。50バーツで屋台で飯を食い、酒とコーヒーに多少金を使いながら、久しぶりの海外を満喫していました。


その後バンコクに飽きてパタヤに行ったりと、タイ旅行を満喫した後、到着6日目にはバンコクーチェンライ行き(17時間にわたる殺人的極寒冷房)夜行バスに乗っていました。朝7時、到着したチェンライ第二バスターミナルを降りるとそこは、市内から7km離れた僻地でした。トゥクトゥクおろか、ソウテウすらもないバスターミナルにはデュードリッヒが2台並べられたスペシャリティコーヒー店がなぜかあり、そこで日本側とMTG。10時ごろに店を出たところで、はやりそこには移動手段はありませんでした(市内中心の第一バスターミナルは工事中と後で知る)。

道中トイレ休憩でミニバスに置き去りにされ、田舎のガソスタに放り出された


タイのTop of topのスペシャリティコーヒーを求めて

仕方がないのでこの旅2度目の賢者な道のりを歩いていると、一台のフォードのピックアップトラックが目の前にとまり、声を掛けてきました。

暑さと披露で何も考えていなかったのか、彼(Max)の提案を間に受け助手席に乗り込み、一瞬で市内まで連れて行ってくれました。

車の中で事情を説明すると、目的はシンプル。来年東京でアジアで最もハイクォリティのコーヒー屋を出す、そして起業する。それにあたってまだ日本に入っていないタイのTOP OF TOPのコーヒーを探しにきたというところ。

Maxに伝えると、彼の友人が市内でロースターをやっているとのことで紹介してもらい、チェンライのコーヒー生産について詳しく知ることができた。拾われてたった30分でこうも話が進むものかと半ば感心していた。

こう見えてとても安全運転のMax


ロイヤルプロジェクトとしてJAICAが20年ほどコーヒー生産を援助しており、日本でもミカフェートやカルディでも見かけるチェンライ市北部のドイトン地域のコーヒー(ドイは山の意味)。ここに行けたら何かあるかなと思って聞いていると、ドイトンは日本では有名かもしれないが、本当においしいコーヒーを求めるならドイチャン(市南西部)に行けとのこと。そしてタイ語で目の前でわちゃわちゃ議論がなされ、話終えたMaxが戻ってきてはガソリン代を出すから明日一緒にドイチャンに行くぞとのことで話がまとまった。

この日は日曜日。翌月曜の朝9時から出発しながら、「Maxおまえの仕事はなんなんだ?」と心の中で突っ込みつつ(後で聞いたら発動機メーカーの営業だった気がする)、まぁ坂を登らないフォードと共にドイチャンへ向かいます。

川を渡ったと思ったら、動かなくなったフォード


タイからアジア一を。アジアから世界一を。

ドイチャンに行くのは決まっていましたが、行けば農園があってというほど虫のいいことはないなと覚悟しており、事実Maxも車を走らせながら「ケン、山に向かっているが、どこに行けばいいんだ?」と聞かれたときも、特に驚くこともなく前日にチェンライ市内のカフェ巡りでの調査結果が役に立つ。あくまでも僕の中でのMaxは「暇×フォード×何やってるかわからんおっちゃん」の方程式は変わらず、優しさで協力してもらっているものの、最後は自分でという認識が間違っていなかった。

入社3年のキーコーヒーで経験したドメドメの飛び込み営業がここで役に立つとは思いませんでしたが、文字通りMaxとドイチャンの山の中でおこなったのはそういうことです。

スコールによりぬかるんだ地面と、やっぱり登らないフォード、それを果敢に操るMaxという後にも先にもないだろう頼もしい即席パーティを連れての農園訪問。

結果そこには、タイで最も情熱的で高品質なスペシャリティコーヒー生産者がいました。

SIRINYA Coffee direct  / Office



SIRINYA Coffee direct

2022年で約6年程度のまだ新しい生産者ですが、彼の農園のコーヒーはタイ国内屈指の実力派ロースター「Factory Coffee」で扱うほど。国内やEU向けにダイレクトトレードを行うタイ屈指の実力派です。SIRINYAとは彼らの娘さんの名前だそうで、これまたいい話。

日帰りでMaxと一緒に帰る予定が、彼には先に帰ってもらい別れを告げ、結局3泊4日滞在しました。
朝にSIRINYAのオフィスでコーヒーを飲み、一緒に農園に入り、その後昼飯を食べ、日が暮れると遭難するので夕方には部屋に戻るという生活を送っていました。

ある日、CCTVが永遠と流れる華人運営のタイ料理屋で、彼らに「タイのコーヒー生産、それもスペシャリティコーヒーの生産はまだ始まったばかりだが、今後世界のロースターや品評会でも名前を連ねるような産地にする」と言われ胸が熱くなりました。CCTVの歌自慢大会でおっさんが広東語版(それが一番大事)を歌っている場違いさが印象に残る良い思い出です。

この時点でまだ6月。

2022年はぼちぼち濃い一年。残り半年まだまだ濃い日々が待っています。

後半へ続く。

SIRINYA COFFEE

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