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【雑詩】 旅立つ君へ

 わたしは 動けずにいた
 わたしは 足元に横たわる
 ツバメの亡骸むくろを見つめていた
 小さな霊魂たましいの脱殻を

 君は 最期の瞬間を
 時間ときの氷塊に閉じ込めていた
 アスファルトに刻み付けるのは
 大空への 未練なのか
 羽毛だけが 風に揺れていた

 一羽のツバメの死が
 こんなにも深く哀しいのは
 子供のころに読んだ『幸福の王子』を
 思い出すからだろうか

 けれども わたしは
 『幸福の王子』ではない
 他人ひとに分け与えるものなど
 何ひとつ持たないのだから

 それでも わたしは
 『幸福の王子』にはなれない
 他人ひとを癒やす余裕など
 心の何処にも無いのだから

 わたしは ただ 君の旅立ちを
 黙って見送ることしかできない
 たったひとりで旅立つ君の後ろ姿を……

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