【雑詩】 最短距離
「また明日ね」って 夕暮れの帰り道
手を振る君と別れても
明日の朝 かならず君と会えていたあの頃
それは僕の生活を輝かせる
当たり前の幸福だった
この当たり前な幸福は
永遠も消えることはないと
僕は何の疑いもなく信じていた
卒業式の帰り道 君の背中を見送るまでは
孤独りになって 僕は気付いた
当たり前の幸福は
幾つもの小さな奇跡が結合いた
とても崩壊れやすい結晶体ということに
大切に抱きしめていないと
淡雪のように すぐに消えてしまう
僕たちは 奇跡の中で生きていた
精神に深い傷を負った僕は
君の優しさを求めて 街を彷徨い歩く
何処に行けば 君の笑顔に会えるだろう
何処まで歩いても 君に再会えなかった
だけど 僕は信じている
たとえ遠くにいても たとえ離れていても
君と僕との間には
毎日 かならず最短距離があることを
僕は 君との最短距離を想う
昨日は数キロ隔てられた日だったかも知れない
今日は数メートルを擦れ違った日かも知れない
そして 明日は……
僕は いつまでも信じている
いつか ふたりの最短距離が
「0」になる日のことを
ふたりの最短距離が「0」になる日
それは 僕が君を抱きしめているとき
君の驚いた表情がみえる