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【雑詩】 瞳の中に

 僕たちよりも一足先に
 この街から旅立っていった君
 忘れられぬ思い出だけを遺して
 あまりに突然の君の旅立ちは
 大宇宙の摂理が設定した
 予定調和だというのだろうか
 それは 僕たちにとって
 予期せぬ運命の転換 未来の瓦解

 君の旅立ちから幾歳月
 さまざまな出来事が通り過ぎ
 僕たちを変えていった
 強き者が弱き者から搾り尽くす
 富める者は益々富み栄え
 貧する者は奈落へと堕ちる現実
 被害者が世界から糾弾バッシングされ
 加害者が手厚く擁護される矛盾
 正義の前提は覆り
 心は金銭で管理され
 欲望が倫理を支配する
 純粋では生きられぬ社会が
 僕たちを覆い尽くす
 だから 変わるしかなかった
 明日を生き抜くためには

 僕たちよりも一足先に
 この街から旅立っていった君
 もしかしたら君は
 この街に残った僕たちより
 幸福しあわせだったのかも知れない
 なぜなら あの頃とは違う
 矛盾に満ちた社会を
 俗物に穢された社会を
 汚れにまみれた社会を
 その澄んだ瞳の中に投映うつさずに
 旅立つことができたのだから
 だから もうあの頃の君に
 再会うことは許されない
 君の澄んだ瞳の中に投映うつるには
 僕たちは あまりにも
 変わり果ててしまった
 あまりにも惨めな姿に


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