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演技を科学するための学習方法

私たちは工科大学のため、演技に関して体系化された教育を提供していません。また、プロジェクトメンバーも演技の関する知識を持ち合わせていませんでした。

本記事では、そもそも「演技とは何なのか」を知るために、私たちが行った学習方法をご紹介します。

俳優さんを理解するための書籍

今回研究にご協力いただいた俳優さんと同じ知識や言葉があったほうが良いと思い、ヒアリング結果から購入した書籍6冊です。

主にこれらの書籍は、
・プロジェクト全体に演技というものの理解を深めるため
・稽古のデジタル化はどのようにできるのか、できない部分があるのか

を整理するために拝読しました。

シナリオを読む

デジタルポートフォリオチームでは、俳優のためのデジタルポートフォリオ(俳優の方々の演技を閲覧できる自己紹介サイト+α)を作るため、メンバーの1名は自分で15分程度のショートムービーを作成しました。

最初、月間シナリオを購入し、映画「セトウツミ」をシナリオを読みながら、Amazon Prime Videoで公開している「セトウツミ」を観ました。シナリオからここまでの映像になるんだ、と感動しました。

シナリオを読まれた方はお分かりになると思うのですが、記載されている情報は非常にシンプルです。ここから映像作品までどうやって?と混乱されるかもしれません。ただ、映像作品はシナリオが命であることも理解しました

例として、フジテレビヤングシナリオ大賞の平成31年度受賞作品「パニックコマーシャル」をご紹介します。※リンクから脚本を閲覧できます。

たくさんのシナリオに出会うには:

また、シナリオの書籍は高価だったため、演劇、映画、日本舞踊、テレビ等に関する台本、文献、雑誌等の資料を提供してくれている、

松竹大谷図書館
にお伺いして文献を探しました。

シナリオ+チームづくり:

シナリオを読んでいくと、シナリオはあくまで映像作品のコア、DNAとなる部分のため、そのコアをどのように形にするのかを考え始めました。また、映像はチーム戦であることを理解し、どのような座組でいくのか、また役割を最小化できるかを考えました。

なぜならば、大学内のチーム5名は居なかったので、カメラ、音声、照明どれを誰がどのように担当するのか、逆に人が担当できない場合どのように自動化するのか、を考える必要があったからです。

私たち独自の制作方法については、「映像制作ハンドブック」を読み、役割を整理し、各役割に割り当てられたメンバーはそれぞれの勉強をし始めました。

演技を体験してみる

実際に演技もしてみました。俳優さんに行っていただいた実験を私たちも行い、自分たちののっぺりした発声に愕然としました。

もともと俳優さんの演技には圧倒されていましたが、これは並大抵の努力では身につかないぞ、と更に俳優さんへのリスペクトを高めました。

比較できるように映像データを2画面で見られるようにした

セリフを覚えて、実際にふたりで掛け合いを行ってみる、その様子を録画して何度も見直しました。その際に参考にさせていただいた書籍です。

理解はほんの1%にも満たない

もちろん、このような手探りの状態から演技という長い歴史を持つものに対する研究を始めて良いものか、ご意見をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

私たちも最初かなり悩みましたが、わからないからこそ、理解しようとする試みや、基本だと思われているものに何故だろうと疑問を持つことも重要と捉え、学んでいきました。

また本を読んでもアクションしても演技とは何か、という最初の問いへの答えは出ませんでした。出なくて当たり前、ということを理解するための勉強でした。

研究を行っていく過程では、自分のスペシャリティがない領域に踏み込むこともあると思います。そんな時にこの記録が役立つことを願います。

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アクティングサポートプロジェクトのこれまでの軌跡について、こちらのマガジンの記事も合わせてお読みいただければ嬉しいです。

研究に関わる全てのご協力者さま方、何より研究に取り組んでいる学生、研究者の方々に♡をいただければ嬉しいです。