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[2023/06/23] ロンボクだより(93):ササッ語の文字を学ぶわけ(岡本みどり)

〜『よりどりインドネシア』第144号(2023年6月23日発行)所収〜

みなさん、こんにちは。学年末テストが終わり、ロンボク島の小中学校は来週から、高校は今週から長期休暇に入りました。今回は高校のテスト最終日の教科「MULOK(ムロッ)」についてお届けします。

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テスト監督として入った教室で、生徒たちは問題を見て「うわぁ」と頭を抱えていました。

「MULOK(ムロッ)」と呼ばれる教科の問題です。

MULOK とは、muatan lokalの略で、学校のある校区または周辺地域で必要とされていることを学ぶ教科です。規定の教科書はなく、同じインドネシアの高校でも地域によって学ぶことが異なります。北ロンボク県にある私の勤務校では、主に現地語であるササッ語のほか、ロンボク島の歴史・文化などを学んでいます。

「先生、ブスブサン(モヤシ)のインドネシア語って何だっけ?」

「両手で持って(シンバルみたいに)叩く楽器の名前は?」

ヒソヒソと尋ねてきます。知っているけど教えません。だってテストだもの。「さぁ、なんだろねぇ」ととぼけながら教室を回りました。

さらに生徒たちの手がほとんど止まっている問題がありました。それは、アルファベットで表記されたササッ語の日常単語 ― 例えば、bale(家)やmanuk(鶏)― をササッ文字で書くものです。

生徒たちは毎日ササッ語で会話しますが、携帯でメッセージを送るときも紙片にメモをとるときもササッ文字ではなくアルファベットを使用しています。バリ島のバリ文字のように標識などにも使われていないので、普段はササッ文字を見かけることはありません。

インドネシア語・英語のほかにササッ語も学び、さらに選択外国語で日本語の授業も受けるとは大変だなぁ。難しいだろうけど、頑張って!

私はある日、MULOKを担当しているD先生と話した日のことを思い出しながら、生徒たちに心の中でエールを送っていました。

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D先生と話したのは、MULOKの授業の板書を見た数日後でした。板書は下の写真のようで、一目でササッ文字を習ったのだとわかります。

日常生活の中でササッ文字を使うことなどないのに、どうしてササッ文字の読み書きを勉強するんですか、と私は尋ねました。

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