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[2023/04/23] ウォノソボライフ(62):意外と暮らしやすい?ウォノソボ日本食情報まとめ(神道有子)
〜『よりどりインドネシア』第140号(2023年4月23日発行)所収〜
今年も早いもので、断食明け大祭レバランを迎えました。そして、いつものことではありますが、レバラン前の断食月は、断食をしない非ムスリムにとっても、やはりいつもと違う特殊な期間でした。
まず、普段なら朝から人が集まる食堂や屋台などの飲食販売業者たちがグッと数を減らします。朝食を外食で済ます人も多いため、屋台エリアはいつも朝の6時、7時には賑やかなものですが、この時期は静かになります。いつも通り営業している店も、布などで目隠しをし、食べている人が外から見えないように配慮するのです。
店を持たず、揚げ物や果物、お菓子や飲み物などをたんまり詰め込んだカゴを両手に持って徒歩で移動販売する人たちも、この時期には姿を見せません。1日中歩き回る労力のわりに売上が見込めないのですから、無理もないでしょう。そうしたことから、普段なら街中にいればどこででも食べ物を入手できるのですが、この時期はそれらを探すのがやや難しくなります。
かと思えば、夕方になるとタクジル(takjil: 断食明けをするための軽食やおやつ)を売る露天商が急にあちこちに出現します。普段は飲食の販売はしていないけれど、この時期だけ・・・という人もかなりいるようで、知っている道でも見たことない顔の露天商が増えます。ということは、普段は売っていないメニューが買えるということでもあり、冷やかしで歩くだけでも色とりどりのタクジルを見られて楽しいものです。
タクジルは無料で配られることもあります。役所や病院のロビーには無料で誰でも持っていける水やおやつが用意されていますし、カフェやレストランでも注文するメニューとは別に無料タクジルが大抵あります。また、慈善活動として様々な団体が夕方の交差点などで道行く人々にタクジルを配る光景もお馴染みのものです。
そうして1日の断食が明ける日暮れの時刻には、各飲食店はどこも人でいっぱいになります。特に人気の店では予約をしていなければ入れないほどです。店の前の道路は停めきれないほどの車やバイクで溢れ、それがあちこちで起こるために道が狭くなります。ブクブル(bukber: Buka Bersamaの略。一緒に断食明けをするの意)と呼ばれる食事会はこの時期特有の楽しみです。友だち同士で、同僚と、各種組織や組合で・・・など、メンバーを変え場所を変え、断食月中に何度も何度も開催されます。断食をしない非ムスリムもそれに誘われることがあります。女性の場合はムスリムでも月経や妊娠などで断食をお休みしますし、断食していてもしていなくても、全員で断食明けをお祝いする、めでたく楽しい食事会です。特に女性たちは事前に示し合わせてヒジャブや服、靴、バッグの色をお揃いにしてやってくるなど、見た目にも華やかになります。
店側も、この時期にはお得なブクブルセットというメニューを用意する場合が多いです。当たり前ですが、断食明けは皆が一斉に同じ時間帯に行います。断食が明けたのに、あえてさらにもう何時間か飲食を我慢してから食べるという人はまずいないのではないでしょうか。そのため、あれほどギュウギュウ詰めになった飲食店も、その時間帯を過ぎれば逆に普段よりも閑散とします。この急に波がひいたような変わりようも、断食月の特徴でしょう。
そして夜更け過ぎの2時3時には各家庭で断食開始前の食事、サウールが行われます。爆竹が鳴らされたり、サウールを呼びかける声が聞かれたり・・・。断食は大変なのでしょうが、同時に皆それを楽しんでもいるのが伝わってきます。
さて、そういった事情からなんとなく普段よりも食べ物を意識することが多くなる断食月。そういえば、これまで地元の人が親しんでいるウォノソボの料理や食材などについてお話することはありましたが、外国人目線でウォノソボでの食料品事情を紹介する機会はありませんでした。
食に関する感覚は保守的なものだと聞きます。誰しも、故郷の味というのは忘れがたく、それが生活のなかにあるかどうかでクオリティやモチベーションが変わってくるものです。
というわけで、今回は外国人、特に日本人にとってウォノソボでの生活でどれほど日本食を得ることができるのか、いわゆる日本人らしい食生活ができるのか、といった点をリポートしたいと思います。おそらく、どのガイドブックにも載っていない最新日本食情報ですので、もしウォノソボにお立ち寄りの予定があれば是非参考になさってください。
日本食とは
ここでいう『日本食』とは、『和食』とは違います。主に日本で作られ食べられている特有の料理群を指しますが、必ずしも古来よりの伝統のものとは限りません。外国から入ってきた食べ物だけれども、すでに日本に定着し、日常的に食卓にのぼるようなメニューも日本食として捉えます。日本においてはあまり日本のものだと思われていないようなカレー、ラーメンなどがそれです。ここでは餃子も「gyoza」というそのままの名前でラーメンと共に日本食として提供されるなど、日本食の定義は広くやや曖昧です。が、日本人が故郷の味として懐かしみ、インドネシアではあまり一般的ではないようなものは日本食としていこうと思います。
現在あらゆる分野のものがネットショッピングで買うことができ、それは食品においても同様です。ネットで取り寄せるとなるとかなりのものが手に入りますが、ここではあくまで、ウォノソボの現地で買えるものに絞って紹介していきます。
食材
日本食を作るにあたり、食材の入手は最も肝となる部分でしょう。その食材があるかどうかでメニューの幅は大きく左右されます。その点においては、ウォノソボはかなり制限があります。日本食代表のスシ、サシミなどは諦めましょう。生食できる鮮魚はありません。海もないので、自分で釣ってさばいて刺身を・・・ということもできません。同様に、卵かけご飯も諦めましょう。ウォノソボだけに限りませんが、ここで売られている卵は生食を想定していません。都市部の日本食スーパーなどには生食専用に作られた卵が販売されていますが、それも主に外国人消費者を対象とした商品です。寿司はある程度インドネシアでも親しまれていますが、卵の生食にはやはり抵抗を覚える人が大半ではないでしょうか。そうした商品がウォノソボに入ってくる見込みはまずこの先しばらくはないかと思います。
肉は地元の人も使う鶏、牛肉あたりは容易に買えます。ヤギ肉もあります。最も身近なものは鶏肉で、野菜の移動販売の人が持ってくるので村でも買うことができます。しかし基本的には骨つきの状態で、胸肉、手羽、もも肉、頭部、もみじといった部位での販売が主流です。牛肉は普段はあまり需要がないため市場などへ行かねばなりません。スーパーマーケットはいくつかあるものの、生鮮食品を扱っているのは街の中心部にあるRITAとTRIOのみです。
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また、コロナ禍の少し前から、冷凍肉を販売する専門店がいくつか進出してきました。ウォノソボで売っている肉は上記のように基本的に骨付きのものなのですが、これらの店では切り落としやミンチなどの処理がされた肉が手に入るようになりました。これにより、ハンバーグや餃子といった料理を手軽に作れるようになってとても助かっています。また、サーロインやリブロースといったステーキ用の牛肉も扱っています。
イスラム教徒にとってタブーとなる豚肉、イノシシ肉は一般的な場所では販売されていませんが、個人ルートで入手できます。中部ジャワにはいくつか養豚場があり、主に華人向けの販売をしています。華人にとっての大きなイベントの近くになると豚をさばくため、豚肉を欲しい人が他にいないか、人伝てに声をかけられるのです。春節祭のほかにも、華人にクリスチャンが多いことからクリスマスやイースターなどの時期がそれに当たります。
また、村に出たイノシシを仕留めたから肉を買わないか、といった話も、そういうルートで伝わります。これらは皮付きのブロック肉をキロ単位での購入となりますが、豚類は滅多に食べられないのでありがたい限りです。
野菜は高原地帯であるため豊富であり、特に葉野菜には事欠きません。パプリカ、アスパラガスといったものも上記のRITAがたまに入荷しています。また、オクラ、ほうれん草などの日本食向けの野菜も何回か入ったことがありました。
キノコはディエン高原がマッシュルームの産地であるため、時期になればあちこちで手に入ります。残念ながら今は閉鎖してしまいましたが、数年前まではディエン高原に大きなマッシュルーム栽培場がありました。
また、RITAやTRIOではキクラゲを買うことができます。この1、2年くらいは、中国産の乾燥シイタケも手に入るようになりました。一袋3万ルピア前後でキノコとしては高めですが、出汁を取るのに重宝します。時期によっては韓国産のしめじやエノキも入荷しており、これがあれば鍋物なども出来ます。
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乳製品、発酵食品、大豆加工食品
牛乳は、インドネシアで一般的なロングライフ牛乳であればミニマートなどいろんなところで手に入ります。ロングライフ牛乳とは殺菌されて常温保存される牛乳です。日本のような冷蔵管理する牛乳はありませんが、特に支障はありません。
乳製品は近頃ローカルメーカーが多彩な商品を出しています。以前はブロックのチーズしかありませんでしたが、最近はクリームチーズ、スライスチーズも入るようになりました。モッツァレラだとかカマンベールといったような本格的なものはありませんが、いわゆる普通のプロセスチーズがあれば洋風のものを作るのには事足ります。
最もレアなものはバターです。インドネシアでは常温保存のマーガリンが一般的であり、村の商店でも手に入ります。しかしバターとなると値段も張りますし稀少になります。以前はRITAが気まぐれに入荷するものを買ってはチマチマと1cm単位で使っていましたが、最近は製菓専門店で袋詰めされたバターを見るようになりました。
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たしかに味はバターなのですが、メーカーも賞味期限も不明です。大手のマーガリンが常温販売の商品を出しているためか、こうしたものを冷蔵する感覚はあまりないようです。
ヨーグルトやヨーグルト飲料は主にINDOMARETやAlfa martといった全国展開のコンビニで買えます。現在、ウォノソボ内にはどちらも約20店舗ずつほどあり、主に街道沿いにあるのでアクセスも容易です。
豆腐は日本でも中国由来の食品ですが、インドネシアでも同じく中国から伝わり一般的な食品として根付いています。ただし、こちらで主流の豆腐は厚揚げや木綿豆腐のようなちょっと硬めのもの。絹ごし豆腐となるとやはりあまり手に入りません。卵豆腐や絹ごし豆腐などを販売しているSAKURAというブランドの商品がたまのRITAに入荷することがあります。
納豆は諦めましょう。ただし、ごく個人的に使えるなと思っているのがタオチョ(taoco)です。
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タオチョは大豆を発酵させて作った調味料で、日本の味噌に近い食品です。西ジャワのチアンジュールのものが有名ですが、瓶詰めになった商品も多数市販されています。タオチョは豆の形がそのまま残っており、独特の発酵臭もあります。それがどことなく納豆に似ているのです。
本来調味料であるためかなり塩気が強いのですが、刻んだネギと一緒に白米に乗せると納豆を食べた気になれます。オススメはしませんが、ジェネリック納豆として我が家ではタオチョを常備しています。
また、発酵食品ではありませんが、インドネシアでは有名なMr.イシイのこんにゃくシリーズはこの3年くらいでRITAでも手に入るようになりました。
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インドネシアでこうした食品を作ってもらえるのはありがたいですね。
調味料
日本を離れてまず恋しくなるのは、醤油の香りだという人も多いのではないでしょうか。現在、メーカーを問わなければ醤油自体を探すのはそう難しくありません。インドネシアのソース製造会社のいくつかからもケチャップ・アシン(kecap asin 塩辛いソース)として商品が出されています。しかしジャワ人家庭ではやはりあまり需要がないので、村の商店ではなくINDOMARETなどで買うことになります。RITAやTRIOなどでは、インドネシアのメーカーに加え、シンガポール、マレーシアといった外国の商品やキッコーマン・インドネシアの醤油を取り揃えています。
他のメーカーより値段は張りますが、最も醤油らしい香りが出るのはやはりこのブランドです。キッコーマンは醤油だけでなく、照り焼きソースやブルゴギソースなども幅広く出しています。
みりんや料理酒は諦めましょう。味噌はごくたまにミヤサカ・インドネシアの神州一味噌がRITAで買えます。ミヤサカ・インドネシアはインドネシアに進出した日本の醸造会社です。
酢はインドネシアのメーカーのもののほか、中国やマレーシアの製品があります。中国のものは穀物酢もあるので、すし飯を作る際にはそれを使っています。ジャワの家庭料理では全くといっていいほど酢の出番はありません。料理にも酸味のあるものはほとんどなく、たまにサユール・アサム(sayur asam 酸っぱいスープの野菜煮込み)を作っても酸味づけにはタマリンドという果実を使います。酢のレパートリーは今後もあまり増えないかもしれません。
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キッコーマン商品が並ぶようになったのとほぼ時を同じくして、最近ではキューピー・インドネシアのマヨネーズやドレッシングも売られるようになりました。これも個人的には革命的な出来事でした。マヨネーズ自体はたくさんのメーカーから出ていましたが、どれも私には甘すぎてあまり使っていませんでした。ドレッシングもあるだけで簡単に一品増やせるのでありがたいです。
また、WARASAという日本食に特化した調味料メーカーから2万ルピア以下でしゃぶしゃぶの素、ラーメンスープの素などが出ています。さらにはカレーペーストも出していて、安価に日本風のカレーが作れるようになりました。ただし入荷が安定しないので、出会えるかどうかは神のみぞ知るというところです。
ところで、ここ最近は韓流ブームのおかげで韓国料理の調味料が充実してきました。コチュジャンも何種類かありますし、ごま油も韓国製のものが売られています。また後で詳述しますが、韓国製品の台頭は日本食にとっても大いに助けになっています。
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