[2024/11/09] プラボウォ新政権をどうみるか(松井和久)
〜『よりどりインドネシア』第177号(2024年11月9日発行)所収〜
プラボウォ新政権が発足して2週間余が経過した。ジョコ・ウィドド(通称:ジョコウィ)前政権からの引継ぎはスムーズに行われた印象がある。前政権末期の8月に行われた内閣改造で入閣後、新政権でも大臣または副大臣を務める者が8名おり、現政権のジョコウィ政権からの継続性を象徴している。
また、大統領選挙で当選したプラボウォ=ギブラン組を推した政党はもちろん、民族覚醒党など同組を推さなかった政党も新政権に加わった。結局、新政権に加わらなかったのは福祉正義党、ナスデム党、闘争民主党だが、いずれも新政権に対抗する野党としての立場をとっていない。
これは、政権交代時にできる限り波風を立てたくないというプラボウォ大統領の意向が強く反映されたものである。プラボウォ大統領は、大統領選挙で対立候補ペアを推した政党を含め、ほぼすべての政党や政治社会勢力に対して新政権への参加を呼びかけた。2019年、大統領選挙で戦った相手であるジョコウィ前大統領がプラボウォ氏自身を国防大臣として体制内へ取り込んだように、閣僚ポストをちらつかせながら、多くの政党や政治社会勢力を幅広く取り込んでいった。閣外協力となった福祉正義党、ナスデム党、闘争民主党に対しても、プラボウォ大統領は最後の最後まで入閣を要請していたと言われる。
こうして、プラボウォ新政権は極めて政治的に安定した状態でスタートした。現時点で目立った政治・社会的混乱は起こっていない。これでインドネシアは今後も安泰なのか。ジョコウィ路線は継承されるのか。8%目標の経済成長は達成できるのか。現段階で答えを出せるものではないが、様々な問いが投げかけられよう。
本稿では、新内閣の閣僚名簿を踏まえながら、新内閣の肥大化、論功行賞による政党の取り込み、忠誠者の配置からみるプラボウォ大統領の戦略性、人権侵害の過去との決別、実業家との関係などからプラボウォ新政権の特徴を見ていきたい。さらに、ジョコウィ前政権からの継続性と前大統領の影響力の行方を考察したうえで、プラボウォ新政権がインドネシアを「新・新秩序」時代へ向かわせる可能性を論じる。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?