ロンボクだより(115):ヘビウリ(岡本みどり)
〜『よりどりインドネシア』第178号(2024年11月23日発行)所収〜
皆さん、こんにちは。日本でもアメリカでも選挙・選挙ですが、こちらも県知事選挙が近づいてきました。我が家にも、ある候補者の支持を表明するステッカーを門のところに貼ってもよいかと、叔母が大量のステッカーを片手にやってきました。
さて、今回のロンボクだよりは、選挙よりもっともっと小さなお金の話です。
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我が家の前の路地で、近所の方が2人でしゃがんで話し込んでいました。両者ともに60代後半の方です。
そのまま通り過ぎるつもりが、深刻そうな2人に引っかかるものがあって、思わず足を止めました。
「どうしたんですか」
Aさんは横に座っているBさんに2万ルピアを借りたかったのですが、Bさんも手持ちがなくて困っているとのこと。
「お米を買いたいんだけど」
この2人はこれまでにも何度かお金の貸し借りをしており、Bさんは「いつもなら貸せるのに、今回は自分もお金がなくて、貸せない」とうなだれていました。そして、私の顔をチラリ、チラリと見ながら、「あなたがAさんにお金を貸してあげなさい」と目配せしてきました。
目配せの前から、私は「だったら、私が貸すよ」と即決していました。
理由は明確!私がいつもAさんにお世話になっているからです。
2万ルピアを財布から取り出したかったのに、市場用の巾着袋には1万5千ルピアしか残っていませんでした。うへ、カッコ悪い。
「ごめんね、足りないけど・・・」と1万5千ルピアをお渡しすると、Aさんは私に、ありがとう、と本当に丁寧に頭を下げました。
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数日後、市場の近くでAさんとバッタリと会いました。手にレジ袋を持っています。どうやら市場からの帰り道のようです。
私を見つけるなり、私のほうへ近づいてきました。
「どうしよう。私、あなたにお金を返せるかどうかがわからないの。」
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