[2024/03/23] ラサ・サヤン(52)~インドネシア人の略語好き~(石川礼子)
~『よりどりインドネシア』第162号(2024年3月23日発行)所収~
社会に溢れる略語
大統領選は既に終わっていますが、昨年12月と今年1月に行われた副大統領候補討論会の際のお話をさせてください。
大統領候補で現国防相でもあるプラボウォとペアを組むギブランは、ライバル候補2名に対して様々な略語の意味を質問して相手を困らせました。その多くは英語の略語で、SGIE(State of the Global Islamic Economy)、CCS(Carbon Capture and Storage)、LFP(Lithium Ferrophosphate)、PTSL(Pendaftaran Tanah Sistematis Lengkap)などです。また、若者の心を掴むべく、IoT(Internet of Things)や、RMU(Rice Milling Unit) など、英語の略語や単語を多く言及しました。
また、先日、TVニュースを見ていたら、「Pinjol」という言葉が出てきました。これは、バンドン工科大学の経営陣が学生に対して、学費を払えない学生に特定のオンラインローン会社でローンを組むことを奨励したことから、学生たちがキャンパス内でデモを起こしたという話題でした。「Pinjol」とは、Pinjam Online(オンラインローン)の略語でした。略語のことをインドネシア語で「Singkatan」と言いますが、ニュースのトピックでもこのように略語が次々と出てくるので、意味が分からないと話題に付いていけません。
インドネシア社会で現在使われている略語はごまんとあり、略語専門の辞典まで存在します。普段良く使う「Tol(高速道路)」や「Satpam(警備員)」、高速道路の名称「Jagorawi(ジャカルタ・ボゴール・チアウィ)」、最近だと「IKN(新首都ヌサンタラ)」や「OTW(目的地に向かっている途中)」なども略語です。省庁や大臣の名称(例:Kemenhub = Kementerian Perhubungan 運輸省、Menhub = Menteri Perhubungan運輸大臣)ローカル銀行の名称で使われる3レター(BCA、BRI、BNI、BTNなど)や、政党の名称(PDI-P、Golkar、Gerindra、Nasdem、PKBなど)も全て略語です。2002年に公開され、大ヒットした映画『Ada Apa Dengan Cinta?』は「AADC」と称され、2016年の続編『Ada Apa Dengan Cinta? 2』は、「AADC2」として世間一般に知られています。外国人がインドネシアに来て、戸惑うものの一つに略語があるというくらい、インドネシア社会には略語があふれています。
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?