[2024/04/08] ラサ・サヤン(53)~世界の幸福度~(石川礼子)
~『よりどりインドネシア』第163号(2024年4月8日発行)所収~
世界幸福度ランキング
毎年3月20日は、『国際幸福デー』です。
『国際幸福デー』というのは、国民総所得より国民総幸福を価値あるものとして認め、公共政策に反映されるべきものとブータンが提唱したことから、国連総会で決議され、2013年に『国際幸福デー』として制定されました。
その概念に基づき、国際的な研究組織であるSustainable Development Solutions Network(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)は、毎年“World Happiness Report”(世界幸福度報告書)を発表しています。
2020~2022年は新型コロナウィルスの影響を受けたため、2023年度版は同3年間の平均値が発表されましたが、今回、2024年度は以前のように世論調査を基にした「国別の総合幸福度ランキング」が発表されました。
この「総合幸福度」は、カントリルラダーと呼ばれる生活評価質問を用いた世論調査の結果によって作成されますが、後掲の表に示される通り、6つのインデックスの統計を用いて、各国の「幸福度」が分析されます。6つのインデックスとは「腐敗認識度(国・政治への信頼)」、「他人への寛容さ(寄付活動など)」、「人生選択の自由度」、「健康寿命」、「社会的支援(社会保障制度など)」、「一人当たり国内総生産(GDP)」です。
首位は7年連続でフィンランド、また上位はほぼ北欧諸国が独占しています。G7諸国では、カナダ15位、英国20位、米国23位、ドイツ24位、フランス27位、イタリア41位。なお、日本は51位でG7の中で最下位、しかも前年度の47位からランクダウンさえしています。
ハマスとの戦争が続くイスラエルの5位は意外に思えますが、同国は22年以来、10位以内に定着しており、今回の調査が行われたのはハマスの襲撃があった昨年10月7日以後でしたが、まだ本格的な戦争には突入していなかったということです。ドイツと米国はそれぞれ16位から24位へ、15位から23位へと、いずれもトップ20から外れるという現象が起きました。米国は、同報告書が始まって以来、初めてトップ20から外れたことになります。
5つのチャプター
“World Happiness Report”(世界幸福度報告書)には、5つのチャプターがあり、上記の「国別の幸福度ランキング」以外に、チャプター1『幸福度と年齢:要約』、チャプター2『若者、高齢者、そしてその中間の年齢層の幸福度』、チャプター3『子どもと青少年の幸福:世界的傾向、課題、そして機会』、チャプター4『高齢化する世界人口の幸福支援: 幸福と認知症の関連性』、チャプター5『インドの高齢者の生活満足度』が報告されています。
特に、チャプター5では、以下のような興味深い報告内容となっています。皆さんも興味があれば、“World Happiness Report 2024” を読んでみてください(https://worldhappiness.report/ed/2024/)。
インドネシアの幸福度
さて、私たちが住むインドネシアの幸福度はどうでしょうか?
“World Happiness Report 2024”(世界幸福度報告書)に依ると、インドネシアは、143ヵ国中、80位となっています。前年度が84位でしたので、少し幸福度が上がっています。東南アジアで最も高い国はシンガポールで30位(前回25位)です。東南アジア諸国(ブルネイを除く9ヵ国)の中でもインドネシアは6位となっており、その理由について現地報道などで特に説明や分析された情報はありません。そのため、私の想像の域を出ませんが、「社会的支援(社会保障制度など)」、「人生選択の自由度」、「腐敗認識度(国・政治への信頼)」の低さが大きな要因なのではないかと思います。政権が変わる今年以降のインドネシアの幸福度の推移をウォッチしていきたいと思います。
インドネシア国内の『州別の総合幸福度』ランキングは、2021年度のデータが最新版となり、現在とは事情が変わっている可能性がありますが、トップ10は以下のようになっています。
1.北マルク州:76.34ポイント
2.北カリマンタン州:76.33ポイント
3.マルク州:76.28ポイント
4.ジャンビ州:75.17ポイント
5.北スラウェシ州:74.96ポイント
6.リアウ諸島州:74.78ポイント
7.ゴロンタロ州:74.77ポイント
8.西パプア州:74.52ポイント
9.中部スラウェシ州:74.46ポイント
10.南東スラウェシ州:73.98ポイント
上記ポイントは、「人生の満足度」、「感情」、「ユーダイモニア(自己実現や生きがいを感じることで得られる幸せのこと)」を含む幾つかのインデックスを基にインドネシア中央統計庁(BPS)が発表したものです。
反対に、ワースト10は以下の通りです。
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