[2023/01/22] ロンボクだより(84):甘い蜜柑と苦い店員(岡本みどり)
~『よりどりインドネシア』第134号(2023年1月22日発行)所収~
みなさん、こんにちは。インドネシアは各地で地震が続くなか、春節が近づいてきました。街を歩いているときだけでなく、ウェブサイトの広告などでも赤い色がパッと目に飛び込んできます。
ですが、私の住んでいるあたりでは春節の気配はゼロ。いつもどおりの毎日です。今回は果物屋さんでの一コマをシェアします。
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去年、時期を同じくして、家の近くの大通りに二軒、果物屋ができました。
我が家から近いほうの果物屋は店が小さく、品揃えもそれほど多くありません。我が家から遠いほうの果物屋は大きく、輸入品を含めてさまざまな果物が売られていますが、値段はこちらのほうがやや高いです。
どちらも私たちの村でははじめての果物屋です。果物の大好きな私も娘も大喜び。二軒のお店を交互に利用して楽しんでいました。そのうち、普段はローカル市場で果物を買って、ローカル市場で手に入らない果物は我が家から遠いほうの果物屋で買うように落ち着きました。
ある日のこと。娘の学期末のテスト週間が終わったので、ご褒美を兼ねて我が家から遠いほうの果物屋へ行きました。ザッと見回して、濃いオレンジ色のおいしそうなミカンを買うことにしました。ローカル市場でもミカンは買えますが、皮が緑色で少し酸味の強い種類なんです。
顔見知りの店員さんがテキパキと果物の棚をきれいに整えたり、カゴを片付けたりしているなか、初めて見かける店員さんがミカンの山の前に座ったままで私たちに声をかけてきました。
しばらく話しているうちに、彼はこの近くに住んでおり、私の夫を知っていることがわかりました。年齢は30代の前半といったところでしょうか。このあたりの人にしては珍しく、髪を金色に染めていました。どうもこの店の店長のようです。
私も娘もミカンを買いたいだけなのに、彼は私たちの素振りに気づかず、プライベートな話をいろいろと質問してきます。
私が日本出身だとわかると、悪気はないのかもしれませんが、ちょいちょい棘のある失礼なコメントも挟んできました。
ちょっとぉ・・・私はだんだん彼を疎ましく感じ始めました。
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