[2023/04/23] ロンボクだより(89):手の力(岡本みどり)
〜『よりどりインドネシア』第140号(2023年4月23日発行)所収〜
みなさん、こんにちは。この記事が掲載される頃にはレバラン(断食明け大祭)休暇のど真ん中で、ロンボク島は賑わっていることと思います。今回は、今年の断食月の思い出として夜のモスクでの任意礼拝の話を綴ります。
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断食月には、義務である一日5回の礼拝のほかに特別な任意の礼拝があります。これはタラウィーフ(tarawih)と呼ばれ、一日のうちの最後の礼拝のあと、続けて1時間から1時間半ほど祈り通すものです。1時間半ってかなり長いですよね!
タラウィーフは他の人々と一緒にモスクで行うことになっています。
モスクでは自分がお祈りをしたい場所に座ります。男女の区別さえ守ればどこに座ってもかまいません。
さて、モスクの正面に向かって最も左の端に、私が勝手に「猛者スペース」と呼んでいる場所があります。
猛者スペースは年配で信仰心の篤い長老たちのいるところです。なんとなく近寄りがたくて、私はそこから離れたところに座ります。
高らかなアザーン(礼拝のお知らせ)が響き礼拝がはじまると、人々はぎゅっと前後左右に隙間のないように身を寄せ合います。湿度が高いなか何度も立ったり座ったりするので、合間あいまに多くの人が礼拝用の上着の裾をうちわのようにパタパタとはためかせます。ミネラルウォーターも自由に飲めるようになっています。
ああもう今日は行きたくないなぁという日もあります。
娘が途中で寝てしまい、終わりまで起きてこなかった日もあります。
トッケイ(ヤモリ)の鳴き声がモスクの天井に反響した日もあります。
親についてきた小さな子どもたちがはしゃぎすぎて、大人に怒られた日もありました。
でも、どんな日だってタラウィーフを最後まで終えると、左右前後の人を筆頭に、近くにいる人々と握手やハグを交わしてモスクを後にすることになっていました。
これがもう、いいんだなぁ。
そっと握り返してくれる手、ギュッと力強い手、なかなか離されない手、ハグをするためグイと引き寄せる手・・・一人ひとりの手が何かを語るよう。共通しているのは、皆、ほほえみを浮かべているからか、手がとても優しく感じられることです。礼拝を終えたばかりで心が晴れているのでしょうね。
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