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【Note書き初め】コンサルとシンクタンクの違いとは?【就活】

■ はじめに

企業の経営や事業課題の解決を支援するコンサルティング。
企業など経済活動主体の知的分析業務を支援するシンクタンク。

就活における業界研究では一括りにされることも多いこれら2つの職業ですが、実際には期待される価値、働き方、向き・不向きにかなり違いがあります。

似て非なる知的職業の違いについて、両方を経験した現役コンサルタントが紹介します。

同時に、私が過去どんな仕事をしてきたか、今どんな仕事をしているかについて年始という区切りのいいタイミングなので自己紹介を兼ねてお話しします。

※本記事はあくまでも筆者の経験則と、周囲からの伝聞に基づきます。本記事の内容を信用したことで起こるあらゆる損害について、筆者は一切の責任を負いません。
※個別案件の内容については、必要に応じて特定できないようにぼかした部分があります。

■ そもそもシンクタンクとは?

まず、シンクタンクというものについて馴染みのない方もおられると思うので、簡単に説明したい。

シンクタンク(Think Tank)は「頭脳集団」という大仰な訳語があてられることもある通り、一義的には公共分野の課題に関する調査・分析を旨とする組織のことを指す。

※ちなみにシンクタンクの人は「頭脳集団」とか言われると背中の辺りがムズムズするので、できれば呼ばないようにしてあげてほしい。

世界的に有名なシンクタンクには、米国のブルッキングス研究所、英国のフェビアン協会などがある。これらは議員や立法府など政策決定にかかわる主体の頭脳として、調査分析・提言を行うもので、フィクションにおけるシンクタンクのイメージに近いと思う。

他方、日本の民間大手シンクタンクは、大きく分けて下記3つの主要業務を行っており、世界的に知名度のあるシンクタンクと少し位置づけが異なる。

①リサーチ
国内外の経済・産業・社会に関する様々な課題について調査・分析し、主にレポートの形で発信する。リサーチに関わるスタッフは「調査員」とか「研究員」とか「エコノミスト」とか言われたりする(経済分野の場合)。
新聞や雑誌などの媒体に記事を書いたり、TVでコメントを述べたり、セミナーに登壇したりすることも多く、シンクタンクの顔的な存在。

②コンサルティング
民間企業や、省庁など公共機関に対する課題解決を行う。コンサルティングファームと比べると、公共コンサルに手厚いのが特徴(シンクタンクによって濃淡はある)。
また上流の戦略系よりは業務系や、人事・年金などの分野に特化したソリューションが多い。
ちなみに公共コンサルでは実質的に①のリサーチ業務を官公庁向けに行う場合もある。

③システム
上記シンクタンクの多くが、情報システム部門を母体としている。そのため、ITシステム業務は基幹業務の一つだ。金融機関子会社のシンクタンクでは親会社のシステム開発・運用を行い、それを外販することも多い。
黒子的だが、実は一番収益を出してるのはこの部門の人たち(であることが多い)。

■ MATSUGOのお仕事(シンクタンク編)

シンクタンクの主要業務①~③のうち筆者が携わったのは、①と②
(※②の中でも、官公庁向けコンサル)。

①リサーチ
入社以来海外調査の部署でインドを担当していたため、主にインドや周辺国の経済・産業について、一次情報(ヒアリングや現地の視察)、二次情報(文献やデータベース)を収集しながら、自分なりのテーマで文章を書いて世間に公開していた。

具体的には、

・同僚と持ち回りで数千~1万字のコラムを書く:自社ウェブサイトに定期公開。アクセスが多かったり、SNSで沢山シェアされるとうれしい
・セミナーの登壇:講師としてセミナーで講演したり、質疑応答を行う。地方出張の機会があるとうれしい
・海外産業に関する新聞コラムの執筆:外部媒体からお金貰えると、金額にかかわらずうれしい

②公共コンサルティング
主に官庁・政府系金融機関をクライアントとして、アジア新興国の産業や日本の海外投資に関する政策分析や政策提言を実施。

明らかにできる範囲では、

・東南アジア某国の中小企業金融制度の改革提言
・東南アジア某国の不動産証券化の規制導入提言
・日本企業が海外投資先の国を評価する指数の作成
・ASEANにおけるデジタル経済(電子商取引、プライバシーとか)に関する調査

などなど。机上調査と現地調査の組み合わせが調査の基本スタイルで、
マクロなテーマなら机上のデータベースやら国内の有識者へのヒアリング、
テーマが具体的になるほど、現地で関係者のヒアリングや視察を行う比率が高くなっていく。

印象に残っているのは東南アジアの途上国で中小企業金融の制度改革の提言をしたプロジェクト。日本では情報が取れないので、現地に月単位で張り付いて、現地の中小企業(家内制手工業のレベル)の資金調達や融資の使途を聞いて回った。

工業地帯にあるにもかかわらず月の半分しか電気がこないので、たき火で包装用ビニルを綴じてる製菓工場、村ぐるみでサンダル作ってる集落だのを訪ね、スコールで水没した集落に行って危うく遭難しかけるなど強烈な経験ばかりだった。

■ MATSUGOのお仕事(コンサル編) 

そんな感じでシンクタンクの仕事はエキセントリックで面白いことも多かった。わがままを言っても許してくれる大らかな上司や先輩にも恵まれ、社会人なりたての頃から実に気ままに仕事をしていた。

しかし段々と企業のデジタル化や投資行動に興味が移ったこともあって民間相手の仕事をしたいと思い、今の会社に転職。主に新規事業の開発に携わってきた。

ここで言う「新規事業」は、クライアントが過去やったことのないビジネスなので、当然クライアントにもノウハウがない。本当に単なる思い付きのレベルから、ちゃんと稼げそうなアイデアになるまでビジネスを一緒に考え、
論理的に整理して、大枠の事業計画(事業内容、収益化の手段、技術開発、パートナーなど)に落とし込むのが主なミッション。

これまで、

・総合商社
・自動車部品メーカー
・エネルギー機器メーカー
・インフラ企業

などのクライアント向けの新規事業開発をサポートしてきた。毎回どんな分野、事業になるか予想がつかないことが多く、つど勉強の繰り返し。

クライアントがIoT(※)事業をやりたがれば中学でギブアップした電気の勉強をしてセンサーの消費電力と乾電池の寿命をシミュレーションし、飲食関連のサービスをしたいと言われればラーメン屋に飛び込みでヒアリングをして、食材の仕入について学んだ。

※IoT=Internet of Things(モノのインターネット):これまでネットにつながっていなかったモノの情報を取得し、管理分析することで付加価値を生む取り組み。工場機械にセンサーを設置して、故障を予知するなど。

■ コンサルとシンクタンクの違い

ここまで思いつくままに書き連ねてきたが、コンサル(ここでは民間向け)と、シンクタンク(リサーチ+公共コンサル)の最大の違いは、扱う課題のレベル感と、それに伴って要求される価値に集約される。

コンサルの場合は顧客課題が極めて個別で具体的なことが多い。高い報酬を受け取るコンサルタントはその課題の解決が求められるため、課題解決に直結する戦略的な情報収集と整理が必要だ。いわゆる「仮説思考」というやつである。

極論だがコンサルの場合は、「単なる情報収集」という仕事はほとんど存在しない。若手でも自分なりに仮説を持ったうえで手を動かせないと、見た目だけ綺麗な的外れなリサーチになって上司からめっぽう怒られる

逆に仮説がハマった瞬間の気持ちよさ、苦労して作った事業アイデアにクライアントがワクワクしているときの充実感は、シンクタンクでは味わう機会の少ないやりがいだ。ジェットコースターのような刺激を求める人なら、コンサルにきっと向いている。

シンクタンクの場合も仮説思考は大事なのだが、扱う課題が「今後の金融業界の規制」だったり「国の中小企業振興政策の改善」だったりと、マクロで抽象度が高いため、半年やら1年のプロジェクト期間で解決できないことがほとんどだ。

そのため実際の業務では、「情報は集めるけど、使い方はお客様に任せますよ」というスタンスになることも多い。成果物も広く世の中に公開されることが多いため、信頼性の高い出所から情報を拾ってきているか、出所の記載がルールに則っているかなど、形式的な部分も重視される。

世の中に広く影響する課題解決に何らかの貢献をしたい、あるいは自分の追い求めるテーマが確立されている、という人の場合は、シンクタンクにきっと向いている。またコンサルよりも早いうちから自分の名前で記事を書いたりできるので、目立ちたがりにも向いているかも。

それ以外も働き方やら適正やら、シンクタンクとコンサルは似ているようで結構違う。以下、表形式でまとめたので、参考にしてほしい。

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■ おわりに

私自身もシンクタンクからコンサルへの転職組だが、同じ情報を扱う商売にもかかわらず、コンサル的な頭の使い方、仕事の姿勢を身に着けるのにとても苦労した(今でも苦労している)。

この記事がコンサルやシンクタンク業界をめざす就活生・転職希望者に少しは参考になればこの上なく幸いである。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

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