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独身男性が東京の銭湯を勝手に評価する(番外編):そしがや温泉21お別れ編

そしがや温泉21(世田谷区)・・・プールあり、クールサウナあり、最早スーパー銭湯【90点】

■ はじめに

23年3月末に閉店した、東京都世田谷区の「そしがや温泉21」。筆者は普段自分が使っていない初見の銭湯へのお別れ入浴をあまりしない質なのだが、かねてより行きたかった湯ということもあり出かけることにした。今回はその記録である。

そしがや温泉21 ※閉店済
住所:東京都世田谷区祖師谷3-36-21
営業時間:14:00-25:00
定休日:年中無休(元日のみ休業)

■ アクセス〜入浴まで

小田急線の祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩5分、と公式ウェブサイトには記載があるが、相当急がないと5分では厳しかろう。人通りの多い商店街を突っ切っていくルートのため、10分くらいはかかったと思う。

外の通りから玄関

駅前の商店街を途中から左に曲がって、目当ての建物にたどり着く。着いてはじめてわかったのだが、デカい。三台もある入口の券売機でチケットを買い求めるタイプで、それから下足に靴を入れて受付のお姉さんにチケットを渡す。

券売機
下足ロッカー

閉館間際で多くの人が訪れているようで、受付のお姉さん二人でもてんてこ舞いという感じであった。

せっかくなのでサウナ付のプランにしてみた。タオルがついて730円(入浴料含む)と、銭湯サウナとしては平均的な価格帯だなぁと思っていたが、実際に入ってみるとよくこれで730円で運営してたなと言う気分になる。もちろん、コスパがよすぎるという意味だ。詳しくは後述する。

さて外観から察せられる通り、脱衣所も洗い場も広い。カランだけで50くらいはあるのではないか。それでも9割がた埋まっていて、いかに利用客が多いか、改めて実感した。なお、ロッカーと浴室との間に休憩室?的なスペースがあったが、電気もついておらず誰もいなかったので覗くだけ覗いて即退散した。ふだんは使っていたのだろうか……?

■ 巨大なプール

ここからは施設の紹介だ。いきなりお風呂以外で申し訳ないが、プールを紹介させていただく。

板橋区の「アクアセゾン」・中野区の「アクア東中野」など、歩行用のミニプールを備えている銭湯も少数ながら都内にあるが、そのイメージから5回りくらいデカい。子どもも大人もはしゃげる広さ。ミニプールでは敬遠されるどころか出禁になりそうなガチ目の泳ぎすら可能なほど広い。

またプールがあることで、ととのい方が一気に多様になるのだ。水風呂でキリッと〆るもよし、クールサウナで一人じっくりと冷ますもよし、プールにドボンして落ちつくもよし。多くのサウナでは水風呂で一気に下げてととのうところ、三種類もの楽しみ方ができるのはあまりに贅沢。

ちなみに鍵の開け方はサウナ鍵を隙間に突っ込んで下から押し上げるという独特なタイプで、入り方が分からず立ち往生する人や諦めちゃう人が多かった。

なおプールの隣にはジャグジーが二つ設置されていて、こちらでは日替わりの薬湯に入れる。スイッチを押すとジェットが出るタイプもあってこれもまた子どもはお父さんと入って大はしゃぎだ。

温度はかなりぬるめで、外ということもあって体感では30℃台前半といったところ。プールで泳ぐ人たちを見ながらというのも乙なものであった。

■ 3種類のサウナ

この銭湯、なんとサウナが三種類もある。これで730円というのだからすごいを通り越して恐ろしくすらある。

一つ目は乾式の高温ウッドサウナ。「高温」とはいうものの熱すぎずぬるすぎず個人的にちょうどいい塩梅。定員が5人に限られていたものの1人10分以内と決まっていたので回転もそこそこ早く、利用者で譲り合って使う文化が根付いていた。

そして二つ目はミストサウナ。こちらは乾式サウナよりもぬるめ・狭めで、定員は4人に制限されていた。暑がりの自分としてはここくらいのマイルドな暑さのサウナでじんわり汗を出すほうが好きなのでありがたかった。

そして三つ目はマイナス10℃のクールサウナ。これは定員1名という究極のプライベート空間。二重になったドアを開けてたどり着くタイプで、天井から冷気が出てきてひんやりと涼しい。マイナス10℃と言われると極寒に感じるかもしれないが、体感ではそれほどでもなく、そこそこ長く滞在できそうだった。クールサウナには韓国風サウナで一度入ったことがあるがそれよりマイルドな感じ。

■ キンキンの水風呂

サウナを出たすぐのところに、小さめの水風呂がある。水温は19℃とのことだが、もっと冷たい気がするのは私だけだろうか。サウナでじっくり熱した体もすぐにクールダウンできる。

公式情報ではないので確定ではないが、軟水を使っているらしい。筆者はサウナーというよりミズブラーと言うべきお風呂→水風呂の交互浴が好きなため、ここの水風呂のクオリティにはいたく満足した。

最大2人くらいのキャパシティしかないが、すぐ冷えるのでサウナ同様に回転がいい。利用客が譲り合って少しでも多くの人たちが使えるようにしているのも尚良(私もすぐ譲った。念の為)。

■ 広い黒湯

浴室入口に近いところに広めの浴槽があり、そこでは黒湯に浸かれる。こんな記事をあえて読まれる方には説明など不要だと思うが、黒湯というのは植物質が溶け込んだ温泉で、独特の匂い、色、とろみが特徴的だ。

温度は40℃程度か、バブルバスや電気風呂のブースもあり広い。そのためじっくりと浸かれる……はずなのだが、閉業間際の日曜だけあって、入れ代わり立ち代わり人が入って芋を洗うような混雑だった。

浴槽では常連と思しき爺さん方が親しげに言葉を交わしており、サウナーとはまた一線を画す銭湯ラバーの姿が見えた。

ちなみに黒湯だけでなく普通の白湯もあるのだが、こっちは入りそびれてしまった。どこの施設も混んでいるので、物珍しい方を優先してしまい……

■ おわりに

改めて記事にしてみて思う。どうしてもっと早く行っておかなかったのか。

ふつう銭湯に温泉があればそれだけで目玉コンテンツのはずなのだが、プールやサウナが独特かつ魅力的すぎて温泉紹介の優先順位が下がってしまう、と書けばここの凄さが伝わるだろうか。とりあえず銭湯好きに刺さる要素がこれでもかと詰め込まれていて、とても一回の訪問では浸かり尽くせない。

特にサウナ三種類というレパートリーはここ以外の銭湯でお目にかかったことがないレベル。江戸時代なら倹約令に引っかかってもおかしくない

筆者が出かけたのは3月頭の週末。行きすがらスマホのラジオアプリで聞いていた番組では、斉藤由貴の「卒業」の歌いだしをいじって遊んでいた。多くの地元住民がこの銭湯からの卒業を惜しんで涙代わりの汗を流したことだろう。

もはや公衆浴場どころかスーパー銭湯のレベルの設備の充実度合い。それでいてロビーには雑多な小物や雑誌が置かれ、地元住民が憩う。空間の随所に漂う生活感とローカル感はどれだけハードにこだわっても、建物と人とサービスとが愛され続けないと醸しだせないだけに、なくなってしまうのはあまりに惜しい住宅街の名銭湯。

ひっきりなしにお客さんが訪れる

銭湯は閉めても引き続き近隣のコインランドリーは営業を続けるとのこと。これまでの営業に感謝するとともに、4月からも幸あれと、勝手に祈らせてください。

閉店の告知

ここまでお読みくださりありがとうございました!

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