【絵本はスンゴく面白い!】第3話 くじらとり
※この記事は2020年7月に執筆した記事に加筆・修正したものです。
どうもこんにちは、絵本専門士のMATSU-Gです。
梅雨が開けた瞬間から雨の勢いが止まらない変わった天気が続いておりますが、世間はもう7月。夏本番、とくれば海が恋しくなってきます。今回の絵本は「海」に関するもので揃えてみましたが、その中でも少し変わった一冊をご紹介します。
というか、これは絵本…なのか??
絵本…というかジブリ美術館限定で公開され、同じ場所で販売されている書籍『くじらとり』です。
『くじらとり』
原作:中川李枝子、山脇百合子
原作本:『いやいやえん(福音館書店)』
監督、脚本:宮崎駿
映画公開年:2001
中川李枝子さんの原体験
『くじらとり』は、『ぐりとぐら』でお馴染みの中川李枝子さんの幼年童話『いやいやえん』の中に入っているお話です。子ども達が大型船「ぞうとらいおんまる」に乗り込み、大海原を冒険しながら見上げ切れないほどの大きなくじらを捕まえる…という、ごっこ遊びの中の物語です。
これは元々保育士だった中川さんが、現役時代に子ども達と作り上げたお話。積み木の船を作り上げていく部分や、船の名前を決める部分など、どこか子ども達のやりとりが生き生きとして見えたのは、中川さんと子ども達の原体験が描写されているからかもしれません。
また、このお話だけじゃなく『いやいやえん』全体に登場する主役的存在の男の子、しげるちゃんは実際にモデルがいたんだとか。
他の子たちより小さくても対等だと思ってて、周りのお兄ちゃんお姉ちゃん達に翻弄されながらも精一杯生きていくような、そんな子。なんとなく、これを読んでいる皆さんの頭の中に思い浮かべてしまうその子、多分そういう子だったと思います(笑)
このお話の中で、しげるちゃんは小さいからという理由で船には乗せてもらえず、お留守番することになります。主人公がお留守番なんて!!と思ったのも束の間、現場にはいなくてもどうにか仲間に加わろうとするしげるちゃんの奮闘ぶりが次々と出てきて笑わせてくれます。彼の活躍も魅力の一つなのです。
惚れ込んだ宮崎監督のこだわり
そんな『くじらとり』の大ファンだったのが、スタジオジブリの宮崎駿さん。余りの惚れ込みぶりに中川さんと交渉し、ジブリ美術館限定の短編映画として映像化してしまいました。
そう、これ映画のパンフレットなんです。
実際に子ども達のごっこ遊びの様子をアフレコに使ったり、通常のジブリアニメよりも多い枚数の絵できめ細やかに生活描写をしたりなど、短編だからこそできるこだわりもあります。
エンディングで流れる「おかえりのうた」は、保育士なら誰もが知ってるあの曲を、作者の了承の元アレンジしたもの。
曲も映像もソフト化されてないだけあって、もの凄く気になる…。いや、実は私もまだ見たことがないもので。。
海原へ旅立つ「ぞうとらいおんまる」
ここで皆さんは思うはずです。「それならなんで原作じゃなくて映画のパンフレットを選んだのか?」と。開いてみるとわかりますが、ジブリ美術館作品のパンフレットは絵の魅せ方にとても気を配っています。中には一冊の絵本としてそのまま読めてしまう構成のものもあります。
この『くじらとり』も言うに及ばず、子ども達とのやりとりや冒険、海の清々しさ、くじらの雄大さが絵本とはまた違った魅力で描かれています。原作を読んだ後で楽しんでも、絵を見てから原作を楽しんでも、むしろ一緒にくじらとりごっこをしても、きっと面白いと思います。
海は美しく、雄大な自然です。子ども達の想像力をぎゅっと包むだけの、懐の大きさがあります。
このお話で描かれている海は空想上の海ですが、溢れでるパワーと爽快さは夏にぴったり。海の絵本を紹介するの中、変わり種としていれちゃえ!ってことで選んでみました。(結果イチオシになってますが)
私も保育士だったときに、こういうことを子ども達としてみたかったなぁと、ちょっぴり思ったりしてもいます。いつかまた、できたらいいな。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
絵本専門士のMATSU-Gでした。
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