
夏にイチゴは作れないは、農家の努力不足?
以前に、あるVCの方から「夏にイチゴが作れないのは農家の努力不足で、やろうと思えばできるはずだ」言われたことがあります。
そもそも40年ほど前は、イチゴの旬は初夏でした。
この頃のイチゴは、4季なりイチゴと言われるカテゴリーのもので、特徴としては比較的暑さに強いが、実はそれほど大きくなく、固くて酸味が強いのが特徴です。また甘みもそれほど強くはないものでした。
甘くなく、酸味が強い傾向があるので、牛乳に浸して砂糖などを振りかけて潰して食べるという方法が取られていたことを記憶している方々もいるかと思います。
ここで“暑さに比較的強い”と言っても、40年以上も前の夏の暑さと現在の夏の暑さでは全く次元が違うことも理解する必要があります。
日本では、イチゴの需要が一番高くなる時(=1番価格の高くなる時)はクリスマスです。
当然、農家に収益をもたらすようにクリスマスシーズンにイチゴを出荷する目的とよい甘いイチゴを市場投入するために、1季なりイチゴというカテゴリーが登場します。あまおうやとちおとめなど有名ブランドは、だいたいこの1季なりイチゴです。
これによって、クリスマスシーズンに照準を合わすことも、より高価格で販売する目的も果たせました。
この1季なりイチゴは地域差もありますが、1月末から6月初旬くらいまでがシーズンとなります。
この1季なりイチゴの最大の弱点は、“暑さに弱い”というポイントです。
日本全体のイチゴ農家が収益を得られやすい1季なりイチゴというカテゴリーのイチゴに移行したため、夏イチゴが作られる数が極端に少なくなりました。
甘くてジューシーな美味しいイチゴが登場し、それを味わってしまうと4季なりイチゴの固くて酸っぱいものは消費者の好みに合いにくいのも一つのポイントとなります。
夏イチゴは栽培条件的にも昔に比べ厳しいので、どうしても比較的涼しい場所で生産されることになります。例えば北海道や長野の高原などです。
しかし昨今、このような涼しいとされる場所でも温度は上がっているだけでなく、そのような場所は消費者から遠く離れているので、輸送時の温度コントロールが難しく、輸送時に痛むという泣き所があります。
多くの方は農業を簡単に見すぎているという印象があります。
栽培だけの問題ではなく、それに関わる資材、メンテナンス、管理と維持のための手間と人件費、輸送、流通形態など様々な角度で理解をしなければならず、全体的なソリューションを構築する必要がある分野だと感じます。
だからこそ、イチゴの植物工場は大きな可能性を秘めていて、面白い、新しい農業「AgiI-DX」を発揮できる分野だと考えています。
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