食の安心・安全・新鮮をスマート農業で未来につなぐ
本来、イチゴは初夏の食べ物でした。
酸っぱく硬いイチゴに砂糖とミルクを加え、スプーンで潰して食べた記憶がある方もいると思います。
栽培技術が進歩しクリスマスにイチゴを投入するため、イチゴのシーズンは冬から春先になり、甘くて大きく、美味しくなりました。
近年、気候の高温化と農家の高齢化がイチゴに大きな変化をもたらしています。
高温化の影響で、栽培に障害が出たり、高齢化に伴い、栽培者が減少しており、イチゴの出荷量も年々減少しています。
そもそもイチゴは、病気や害虫に弱く、農薬を活用しないと味、収量が確保できない、栽培の難しい作物です。
現在、私は植物工場で、イチゴを育てています。
これは高温に悩まされる環境からイチゴを切り離し、完全に閉鎖された環境の中で、LEDを使った人口光でイチゴを栽培する方法です。
10年以上、この栽培方法の研究開発を続け、大きな成果が確認できました。
従来は4~5ヶ月しかイチゴが収穫できなかった栽培が、一年中、連続的に収穫し続けれられます。
その上、完全無農薬で病気も害虫も一切発生させません。
この開発で、環境面から見ると、更によい成果が出現しました。
それは、水の使用量が従来の100分の1以下に抑えられることです。
また二酸化炭素を光合成促進のために供給することで、味も収量も大幅にアップしました。つまり様々な問題を引き起こす原因となるCO2を消費する新しいスキームとなります。
更に時代に則した新しい課題解決も見えました。
物流2024年問題に対して、この新しい農業が一筋の光をもたらします。
今までイチゴは、北海道から九州の各地から輸送されて、消費者に届けられていました。
この閉鎖型植物工場による栽培は、消費者に近い場所で栽培することが可能となり、トラック等の輸送時に排出されるCO2が発生しなくなります。
単純に環境負荷が低くなる栽培方法だけでなく、AIやDXを使った効率化も進められた新しい産業といえる農業が、未来への希望となります。
日本が得意とするコツコツ積み重ねるアナログの技術とAI、DXといったデジタル技術の融合した「AgrI-DX」が日本の新しい成長産業になり、食と環境の安全を世界にもたらす時代を創造したいと思います。
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