Mission、Visionの重要性が腑に落ち、制定した話
今日で会社を創業して丸2年、スタートアップの世界に来て約5年目となりました。VCとして、そして、創業者としてスタートアップに関ってきましたが、やっとMission、Visionの重要性、そして、意義を痛感したということもあり、このブログを執筆しています。
端的に言うと、MissionやVisionなしには自分たちの成長がそう遠くない未来に鈍化してしまう、と感じたことが大きいわけですが、そのあたりについて以下に記載してみようかと。また、実際にA1Aとして制定した「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」Missionについても詳しく記載をしています。
①Mission制定の背景
②「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というA1AのMission
③A1Aの方向性
の3本立ての内容となっております。
1. Mission制定の背景
A1Aは2018年6月26日に創業、その後、本格稼働を始めたのは2018年9月頃でそこから1年間をかけてプロダクトを開発し、お客様への導入を進めてきました。
その間、ターゲット設定に困難を抱えてみたり、
PMFに向けた動きをしてみたり、
してきたわけですが、この時に考えていたことはとにかく「いかに売上を上げるか」そして、「いかに早く事業を軌道に乗せるか」の2点。特に営業バックグラウンドの強い自分が会社の代表を担っていることもあり、会社の意思決定が創業初期から「売上」に寄っているという状態でした。目の前のKPI、そしてグロースへのプレッシャー、減っていく銀行口座の残額を前に視野狭窄になっていく中で、ちょうど真逆の課題にぶち当たったのが2020年の2月ごろ。それは「売上を上げるためにどこに投資をしたら良いのかわからない」という課題です。
同時に、スタートアップを創業してから一番自分が理解しきれていなかった、もしくは、VC時代に自分が持っていたイメージとの乖離を一番強く感じたのは「プロダクトを作るのには大きな時間がかかる」という当たり前の事実でした。世の中にあるサービスが持つ「当たり前」に感じる機能も、実装には大きな時間がかかります。また、プロダクトの意思決定は極めて不可逆的であることも同時に痛感し、「自分たちが今作っている機能」が「負債にも資産にもなりうる」という性質のものであることも強く認識したのです。
◆ プロダクトの開発には大きな時間がかかる
◆ プロダクトの意思決定は極めて不可逆的であり、負債にも資産にもなりうるという特性がある
この2つの条件から「会社を成長させるためにどこに投資するべきなのか」の意思決定が極めて難しいという状況に陥ってしまった中で、自分達が何を目指すのか、自分達はどこに到達したいのか、自分達が数年後に確立したいポジションはどんなポジションなのか、自分達にとって「会社が成長した状態」とはどんな状況なのか、この辺りの定義なしには会社の未来が描けないという事実が明確になってきました。
目の前の売上を、目の前の顧客の課題ベースで解決していけば確かにSaaSの事業特性もあり確実に右肩上がりの成長を実現していくことができるかもしれないですが、そもそも「右肩上がりの成長をした結果どうしたいのか」や「右肩上がりの成長をして、どこにたどり着けば自分達は満足できるのか」はたまた「右肩上がりの成長は何をターゲットにして"進捗の良し悪し"を判断するのか」といったことがあやふやなままではスタートアップとして、自分達の未来を正確に描くことができません。
これでは、会社として投資の意思決定ができないのです。
※このあたりはビジネスサイドかつ「売る力」が強い創業者が極めて注意するべきポイントだと今は感じます。
そこで始めたのが、Missionの制定であり、自分達を再定義することでした。AboutA1A制定プロジェクトをスタートし、現在では以下のような「会社のあらまし」を会社の指針としています。
2. 「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というA1AのMission
AboutA1A制定プロジェクトは創業メンバー全員で「自分達は何をしたいのか」という問いに向き合うことから始まりました。
CTO佐々木のブログに「Mission・Vision」の定義が書かれているので、制定プロセスなどは以下を御覧ください。
結論、自分達はMissionを自分達の再上位概念と定義し、良いMissionの条件を、
◆ 創業者(およびボードメンバー)が本心でやりたいと言える
◆ 本心と異なる耳障りの良い綺麗事やカッコつけではない
◆ これからもその本質が変わらない(揺るがない)
であるとしました。
2-1. そもそも自分達は何がしたいのか
AboutA1A制作プロジェクトでは、「こんな世界を実現したらそれで会社を解散しても良い」と思えるほど、強く実現したい世界があるのかという問いからスタートしました。
結論、A1Aを創業したきっかけは「こんな世界を作れたらそれで終わりでいい」ではなく、「こういうことをやりたい」が強かった。これが、Missionドリブンな会社である、と気づいたきっかけです。自分たちはこんなことをやりたい、という思いのほうが大きかった。
逆に言えば、自分たちにとって「どんな世界を作りたいか」は「どんなことをやりたいか」に従属するものであることがわかりました。
故に、A1AではMissionが「変わらない不変な思い」であり、Visionは「複数出来上がる可能性があるもの」「Missionの実現のための事業ごとに存在するもの」であると定義したわけです。
では、その「どんなことをやりたいのか」に当てはまるものは何なのか。
◆ 1. テクノロジーによって社会を進歩させること
◆ 2. 社会に与えるインパクトが大きいこと(社会を良くすること)
◆ 3. スケーラブルなビジネスであること
◆ 4. 難しい課題に取り組むこと(Big Issueに取り組むこと)
上記の4点がベースであり、逆に言えば、
◆ 古い手法で規模の大きいビジネスをやること(工夫も何もなく古き良き業態をスタートする)
◆ 極めて新しいけれど、市場が小さいビジネス(市場を取りきっても10億円にしかならない)
◆ 新しく、規模も大きいが、社会に良い影響を及ぼすと信じきれないもの(あら手のギャンブル?)
◆ 規模も、インパクトも大きいが、極めて労働集約なビジネス(非連続な成長を生み出せないビジネス)
などは自分たちがやるべきビジネスであるとは言えません。
※もちろん非連続な成長を実現するための手段として上記のステップが必要になる場合もあるのですが。
加えて、自分たちの好み、やりたいことを改めて抽出するためにやったのは、これまでの意思決定や自分たちの感情の振り返りです。
それらを振り返るにあたって、抽出したのは以下。
◆ 製造業の購買をターゲットに選択
◆ 構造の違和感を察知し、変化させていくことに面白さを感じて見積もりプロセスに着目
◆ バイヤーがサプライヤを連れてくる、というネットワーク効果が極めて強く働く構造に感じる美しさ
◆ 圧倒的規模の流通総額に感じるワクワク感
ここから、A1Aがやりたいことは、「新しい市場をつくること」であると定義しました。
以下のような産業に、テクノロジーとプロダクトの力で入り込み、新しい市場を展開することをやっていきたい、そう考えたのです。
◆ まだまだ開拓の余地の大きい巨大産業
◆ 図体が大きすぎるゆえに細やかな変革ができず、市場が求めている「価値」と提供している「価値」にずれが生じはじめている産業
◆ 構造変化さえ実現できれば、また、価値の転換さえ実現できれば一気に息を吹き返す可能性が高い産業
また、新しい市場・新しいプラットフォームが隆盛すると、必ず新しいヒーローが誕生します。YouTubeもメルカリも、そして、クラウドワークス・ランサーズも、新しい市場が誕生すると、必ず新しくのしあがってくるプレイヤーが生まれてきます。我々の提供するプラットフォーム、新しい価値観をベースにした市場から、新しいスターが誕生する、これこそが自分たちにとってワクワクする未来であり、そういう世界の構築こそ、「やりたいことである」と本心からいうことができたのです。
2-2. A1Aはどう社会にインパクトを与えるのか/Mission
上記のような「やりたいこと」をおいたときに重要なのは、「そのやりたいことに社会的な意義はあるのか」という問いです。
社会的な意義を
◆ 社会(顧客)のニーズを満たすことができるのか
◆ 社会(顧客)を前進させるのか
上記2点と定義したときに、どんな「新しい市場」であればそれらを満たすことができるのか。
ターゲットを
◆ まだまだ開拓の余地の大きい巨大産業
◆ 図体が大きすぎるゆえに細やかな変革ができず、市場が求めている「価値」と提供している「価値」にずれが生じはじめている産業
◆ 構造変化さえ実現できれば、また、価値の転換さえ実現できれば一気に息を吹き返す可能性が高い産業
とおいたときに、彼らの抱えているコアの課題は「産業構造の変化・顧客のニーズの変化に遅れを取ってしまっていること」であり、その背景には「裾野が大きすぎる産業であるがゆえにしなやかに動くことができない」という前提条件があるのではないか、と考えます。
社会(顧客)のニーズを満たし、かつ、社会(顧客)を前進させるために我々ができることはなにか、それは「競争力の再発明を支援すること」です。
競争力を新しくつくること、でも、競争力を伸ばす、ことでもなく、競争力を再発明する。自社のアセットやノウハウ、つながりを活用して、コアの組み換えを行っていくことにより「再発明」を促すプラットフォームを提供していくことが重要であると考えます。
加えて、この再発明を促すべく、テクノロジー・プロダクトの力を最大限活用するのはもちろんのこと、競争力の再発明を実現できるような「新しい市場」を提供していくことにより、社会(顧客)を大きく前進させていきたいと考えます。
当然、新しい市場は「買い手」だけのものではなく、「売り手」にとっても重要な場所になることでしょう。売り手視点でも同様に「競争力を再発明」し、新しい取引先を開拓していくことができる。再発明した競争力で、のし上がっていくことができる。スターになることができる。そんな市場を構築していきたい。
巨大産業であるからこそ、構築する市場の規模も当然大きなものになります。ビジネス的なインパクトを考えても、巨大な流通総額を扱う市場は社会に大きな影響を与えることでしょう。
そういった、社会意義を実現するために、A1Aは「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というMissionを掲げることとしたのです。
3. A1Aの方向性
「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というMission、そして社会に大きなインパクトを残したいという創業時の思いを実現するためにも、我々は会社・及び事業を100億、1000億、、、規模に大きくしていく必要があります。そのためにやるべきことは何なのか。
私はシンプルに「マクロトレンドを掴むこと」(or自分達でマクロトレンドをを作ること)だと思っています。一方でマクロトレンドを掴みに行く上では「①目の前に見えているマクロトレンドは巨大企業がどんどん参入してくる」「②長期のトレンドは予測が極めて難しい」という特徴があるのも事実。(確実性の高いところを攻めるのがリソース豊富な大企業、不確実性の高いところを攻めるのがリソースの足りないスタートアップとも言えるかもしれません)
その時にA1Aが採るべきスタンスは以下の2点でしょう。
◆ 既存事業のRFQ cloudを中心に事業を伸ばしていくが、良質な問を立て、常に周辺領域やその他の可能性に対する検証をし続けること
◆ 思い通りのマクロトレンドが到来するまで会社を永続させること
「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というMissionのもと、巨大産業にインパクトを残しつつ、大きなビジネスを作っていくに当たり、マクロトレンド到来時に競合になるのはIBMやOracle、SAPやMicrosoftといった超巨大企業群。そういった企業に打ち勝つ、もしくは、重要なパートナーに選ばれるためには何が必要なのか。
それは「圧倒的な先行優位と参入障壁」を構築することです。
◆ A1Aしか持てないデータ
◆ A1Aしか取れないポジショニング(第一想起ポジション)
◆ ネットワーク効果
こういった点をしっかりと抑えていく必要があります。
とはいえ、一点突破でマクロトレンドを突き進めればいいが、そこには「不確実性」という大きな難しさがあります。そこで、「良質な問いを立て、常に周辺領域やその他可能性に対し、マクロトレンドにアンテナを張り続ける」事が重要であり、そのマクロトレンドが到来するまでコツコツと会社を伸ばしつつ、永続する企業を作っていく必要がある、と考えています。
すなわち、自分達の掲げた「競争力を再発明し、新しい市場をつくる」というMissionを旗印に、インプットたるリソースの確保(永続する企業の確立)を最大化しつつ、アウトプットの「事業成長・先行投資」の効果を最大化できるような会社運営をしていく必要があり、マクロトレンド到来時に圧倒的優位性を持った状態を実現することが大事であると言えます。
3-1. A1Aの今
そんなこんなで、A1Aでは「少し先の未来のマクロトレンドを掴むこと」をベースに複数の可能性を調査・検証しています。
製造業の未来とは、製造業のDXの先にあるあり方とは、等々、巨大産業の未来を描きつつ、「ものづくりのコストをデザインする」とVisionを設定した既存事業のRFQ cloudでも超大手企業様を中心にシステム導入がどんどんと進んでいます。(おそらくここまで超エンタープライズ向けになっているスタートアップのSaaSプロダクトは他にないのではないか、と感じています。)
現在社員数12名、まだまだ小規模なスタートアップではありますが、PMFの先(スケールフェーズ)を牽引する1→10メンバー、良質な問をいくつも立ててマクロトレンドの萌芽をいち早く見つける0→1メンバーともに強く募集しております。
巨大産業を攻め、かつ、「新しい市場をつくる」ことを目指す以上、長期戦になることを覚悟し、5年後、10年後の100億、1000億を一緒に実現していただける方、是非とも一度お話の機会をいただけると嬉しいです。
開発ポジション・デザイナーポジション
エンタープライズ営業・エンタープライズCSポジション
にご興味をお持ちいただける方、コンタクトをお待ちしております。
開発・デザイナーポジションは佐々木が、エンタープライズ営業・CSポジションは私松原がお話させていただきたいです。
そしてもう1ポジション、現在特に松原・佐々木を中心に進めているマクロトレンドの萌芽をいち早く見つけるという事業開発ポジションも募集中です。こちらは、特に製造業に知見が深い方、巨大産業に知見が深い方を大大大募集中です。
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以上!