失敗
学生のお笑いの大会。みんなよくこの大会を「俺の夏」と呼んでいる。
ケ、青いってえの!
でも私だって例外でなく大会がこの夏の半分を埋めた。
私はその大会の一日目から舞台に立つこととなった。
私の愛するコンビで。一年生の最初の最初から一緒にやっている相方と。
このコンビは、昼間っからアレをおったてている人間になりきれなかった豚のせいで1ヶ月2ヶ月休止していた。
春にいいネタが出来上がり、いい感じに軌道に乗り始めていた矢先のことだった。
私はなんなら大会出場さえ諦めていた。
ピコン
「芸会は出るよ」
!!!?!
強い相方に救われた。
相方はそういえば運動ができないくせして生命力がかなり強かった。
私たちが一年生の時。後期から私は四年生の先輩と組むこととなり、それがかなり名の高い先輩で、ひとたびライブに出れば好評、あれやこれやとスケジュールがライブで埋まっていく日々を過ごした。その中で相方とのコンビはどんどん影を薄くしてしまった。
「相方に申し訳ない」
先輩の力で、相方を置いて、本来出られるはずのなかったライブにホイホイ出演していた私は、そんな思いがあった。
しかしそんなので埋もれる相方ではなかった。
相方はピンで頭角を表し、メキメキと知名度が上がり、ライブに出、大会で結果を残すまでになった。
申し訳ないなんて、相方をみくびっていた。
彼女は一人でも名を轟かせられる人だった。
なんという生命力。そこからは私も先輩とのコンビに躊躇することがなくなった。
相方は一人でも活躍できるのにも関わらず、先輩が卒業し一人になった私に帰ってくる場所を残していてくれた。
いろんなことがあったけれど、私たちにはネタがある。私達は面白い。
これは復帰戦。
私達のコンビがさらに名をあげるこの機会。
いざ・・・!
😃😆😆
🙃🧐
🥸🥸🥸😎
😟
😖😖😖😖
😫😫😫😫
🤯
撃沈。
なんやねん。
悔しくて泣いた。
一番受けてほしいところが滑って、間違えてしまったところがイチウケだった。
悔しくて泣いた。
結局、観客はどーせ私の失敗が面白いんだ。
悔しくて泣いた。
先輩と一緒にいないと私だと認知されなかった私から脱却して、先輩の力がなくとも上の舞台に立てるんだと証明したかったのに。
予選敗退。
運営から送られてきた動画を見た。
舞台上で体感したよりも笑い声が大きかった。
やっぱり私達は面白かった。
何より、舞台上で間違えている私は、確かに面白かった。
何回か見てみたけど、確かに笑ってしまった。
先輩と組んでいたこともあり、結果を出さなければいけないと縛られた思いがあった。でも、自分達のネタを見て面白いと思えたそのことで、結果を出せなくとも自分達が面白いと思えるネタを相方と作れたらそれでいいんだ。それだけで楽しいじゃないか。と、思うようになった。
結果がついて来なくたって、私たちが面白いと感じているなら、客席のうちの何分の1かは、同様に面白いと思ってくれているはずだ。
私は、たくさんの人に面白いと思われたくてお笑いを始めた。
それでいいんだ。
そうして、こんな楽しくて熱い大会の、最終決戦の日の前々日、私は、医者から、「君コロナだね」と言われ、五日間の自粛を推奨され、きたる8月30日決勝戦、おうちに篭ることとなった。
多分、バイト先で、トイレ掃除を真面目に取り組んだことが失敗の種であった。
ずっと馬鹿をみている、気がする。
😞
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