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愛してるがわからない

「愛してる」がわからない。

好きとか大好きより強い気持ちなんだろう。
好きや大好きは、実際に心からそう感じることがあるから、わかる。
だけど愛してるは、これでいいのかな、これなのかなと、まだわからない。

隆典さんに「愛してるって、なに?」「大事ってこと?」ときいた。

40才にもなって、わからないのは変なのかな。
隆典さんは、いつも「愛してるよ」と言ってくれる。
まっすぐな目をして。
本当にそう思ってくれてるのがわかる。

「うーん。そうだね・・俺は、美奈子さんのこと愛してるけどね。」と隆典さんは言った。
本当にそう思っていそうな人でも、説明は難しいようだ。
気持ちって、ふわふわしたものだしね。

それとも、すんなり「愛してる」と口から出ない私にショックを受けてるのかな。
優しい笑顔を見ると、少し胸が痛んだ。

昭和生まれは、あまり愛してるって言葉を使わない。人によるのかもしれないが。
平凡な家庭で育った私は、父や母からかわいいとは言われても、愛してると言われて育っていない。
だから、どういう感情のときに使えばいいのかわからない。

だって、愛してるだよ。そんなに簡単に言っていい言葉じゃないでしょ。思ってもないのに言うのは、不誠実。そんな風に思っていたから、若い頃お付き合いしてた人たちに、愛してると言ったことはない。

結婚してたときもあるけど、あなたとの子どもが欲しい、大好き、一緒にいようね、とは言ったけど、互いに愛してるって言ったのかは思い出せない。

欧米人って、よく愛してるって言うけど、ハローくらいな感じなんだろうか。それとも、日本人の大好きくらいなんだろうか。
愛してると言うことで、2人の関係が冷めるのを、なんとか食い止めようとしてるのか。

アイラブユーとかジュテームは、さらっと言える。感情も込めやすそう。
英語の授業で「I love you.」を、どう訳すか問われたときだって、「あなたを愛しています」って、さらっと答えられた。

愛してるって言いたくないんじゃない。感情を吟味したい。この気持ちを知りたい。
愛してるって確かに言いたいから、考えてるんだろう。

そうか。

そう言えば私。

一人息子の篤のことは、愛しているな。
愛しているは自分より大事とか、唯一無二ってことなのかも。

そう考えたら、私は隆典さんのことを愛してる。
確かに。

毎朝、お祈りする。
隆典さんが初めてのデートのときにプレゼントしてくれたアメジストの置物に。
大事な会議やプレゼンに向かう隆典さんへエールを送るための儀式が、いつの間にか毎日の習慣になった。

「今日も南に向かう隆典さんの心と身体が守られますように。」
「隆典さんと私の絆が、しなやかに強く維持されますように。」
「篤が篤らしく、のびのびと楽しく過ごせますように。」
「いつも見守ってくださっていること、支えてくださっていることを感じています。ありがとうございます。」

正座をして祈る。

私にとって、隆典さんと篤は自分より大切な人。かけがえのない人。

「隆典さん、愛してるが少しわかったかも。」

私の話を一通りきいて、隆典さんは「美奈子さんの気持ちは伝わってるよ。ありがとう。」と言った。

私があれこれと考えてたずっと前から、隆典さんは私からの愛を感じてくれていた。

かなわないなと思う。

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