砂の粒
砂の粒。とても小さく、たったのひと掬いもあろうものならば、数えることが億劫になる集合。
そんな砂粒にもそれぞれに形があり、この世界に存在している実在そのものである。
実在はしばしばその存在を忘れてしまう。そこにあるのに、意思はそれを通り越し、とりとめもない想像に浸かる。
砂の粒は、その存在を確かに保持したまま、世界を流動する。風に乗り、波に運ばれ、時とともに変動する。
人間も同様に漂う。肉体と精神として駆動し、実在を保ったまま変動する。そして無数に存在する。
粒たちはその実体ゆえに独立している。各々に別々に機会を与える。周囲の環境から影響を受けた上で自分の意識のもと、死ぬまで活動する。
ベランダから見える家、マンション、車、そこいる人。同じ時空を共有しているのに全く異なるもの。夢という、一語で表せるがその具体は一致することがあり得ないであろう希望を抱く。
砂の粒、人、あらゆる個別物体を抜かりなく確かめることは不可能である。ただ、彼ら、自分らが確実に存在するという信念は揺らがない。
自分が認識している粒たちを如何とするか?服、親、貨幣、友、スマホ、恋人、をどのように運ぶか、愛したり取得したり捨てたりするのか?正解はない。過程と結果がある。
忘れぬようにしたい。
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