見出し画像

「色彩を知らない私は森田研究室に出会った」 第16話 直列と並列

 時期は3月になった。この月は基本的に「研究室の実験関係の活動」がメインとなるため塾はお休みになり、本格的に引継ぎが開始されることになる。それ以外にも森田研で行われている実験は「学生実験」にも落とし込まれているものが多くあった。
 
 この学生実験というのは大学の授業であり、その名の通り学生が実験を行ってレポートを提出するというもの。それのサポートを行うのが私達ということになる。
 
 サポートとはいう物の実質的には「教える側」に立つことになるため、院生や同期を相手に「授業の練習」を行うことになる。それでそれをまたプレゼン資料にまとめて発表を行う。
 
 ここまでとりあえずここまで色々あった。それを起きた順番に書いてきたのだけれど、私自身も分かりにくくなったため、ここで少し整理すると
 
・森田研究室には実験以外にも森田塾というゼミが存在し、それにはイガさんが常に居る。
・塾では何かしらの課題が出され、それを全てプレゼン化して発表を行う。
・更に農活動と呼ばれるものがあり、そこで野菜や稲を育てる。
・育てた成果として昨年は大豆。その大豆を使って味噌を作った。
・最終的になんかよくわからないが環境論文なるものを書くらしい。
・もちろん月一のバーベキューや森田研のイベントもある。
 
 そして重要なのが「これはやってもやらなくてもいい」ということ。強制は無い。事実、4年生の中には参加していない人もいたし、私も行けない時、行かなかったとしてもおとがめは一切なかった。
 
 なんなんだろうね、ほんとこれ。と今になって思う。更に付け加えるのであれば
 
・大学での自分の授業。
・進学・就職などの自分の進路の決定。
・当然、研究室の研究活動、卒業論文の作成。
・これは私になるけれど部活動。
 
 全部が同時。並列に起こり、並列に処理をしていくことになる。
 
 話は変わるが、実はこの時期くらいにある会社の就職の最終面接を行い、合格を言い渡されていた。ここらへんはちょっと記憶が定かではない。4月にならないと内定を出してはいけないとか言う決まりとか、内々定がどうのとかそういうのもあるのでとりあえずこの時点で既に実質合格していた感じになっていた。
 
 でも直ぐに「ありがとうございます。行きます!」とは言えなかった。理由は「就職先が決まるのがまだ時期的に相当早い。ここで就職活動を終えていいのか?」というのがあったためである。
 
その担当者の人にも「うちの会社は早いのでもっと考えて決めて貰ってもいいですよ」とのこと。
 
「はい、わかりました。ありがとうございます」
 
 と返事だけをして私は次に取り掛かることにした。
 
 キックオフ合宿の企画である。
 
 毎年恒例、行く場所は決まっている。だからそこは10期生がやったことを真似すればいいだけになる。けれどやることはあって、それが旅のしおりの作成だったり、夜の飲み会で用意する宴会の内容だったり。そういうことを卒業してしまう4年生や院生の人に聞きながら作ることになる。
 
 私は先生のゼミの後にその合宿がキチンと進行しているのか、それをプレゼン資料にまとめて毎週発表していく。
 
「いいね!まっつん!進んでるね!」
 
 と先生に言われたことは今でも覚えている。
 
 さっきも書いたのだけれど、森田塾で行っていることは色んなことが並行して行われる。だから全部を一人がやるなんてことは物理的に不可能である。そのためか時間が経つと森田研究室の係のように「森田塾における何かしら自分の担当」が出来始めることになる。
 
 だから私は農の部分に関しては全く触らなかった。さっき言った味噌作りも私が主体になってやったわけではない。

 私が担当することになったのはそう、
 
五十嵐武志という〝青い人物と会話〟をすることだった。

いいなと思ったら応援しよう!