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養老先生の話を聴きに京都へ行ってきました ~怪獣を解剖した先生~

2023年4月23日、日曜日。
日帰りですが、福岡から京都まで養老先生の話を聴きにいってきました。

養老先生のかんたんなプロフィール

書く必要はないかな……、とは思いましたが、
一応かんたんな養老先生のプロフィールを。

養老孟子(ようろうたけし)氏は、東大医学部で解剖学者。
現在、85歳。(2023年4月現在)

第二次世界大戦後の日本における歴代ベストセラー第5位である『バカの壁』(2003年)は、450万部以上発行され、養老孟司氏の名前は世の中に知られることになりました。
(ちなみに第1位は、黒柳徹子著『窓際のトットちゃん』です)

とは言え、
それ以前から解剖学の世界では養老先生は有名だったようです。
なぜなら、
1996年に上映された『ガメラ2』に、北海道大学獣医学部の教授役として出演され、ガメラの敵である小型レギオン(怪獣)を解剖しておられたからです。

怪獣の解剖!

世の中には数多くの解剖学者がいると思いますが、怪獣を解剖したことのある方はそうそういないと思います。
出番はほんのちょっとだけでしたが、いい味出されておられました。
(ちなみに主演は水野美紀さん)

本は100冊以上執筆されていて、
雑誌での対談や、テレビ出演もたくさんあります。
YouTubeのチャンネルも持ってあります。

趣味は、
小さいころからやってるらしい『虫集め』。
なかでもゾウムシに夢中のようです。
箱根に、「養老昆虫館」というものを作られており、
その中には昆虫の標本がたくさん並んでいます。

養老先生についての先入観と実際のイメージ

養老先生ファンになったのは、その数ある書籍を読んで……、
と言いたいところですが、実は養老先生が飼っていた猫の「まる」ちゃんがきっかけでした。

ちゃんと正確に書くならば、先に妻が、猫のまるちゃんと養老先生のファンになり、その本やテレビをとなりで見ていたわたしも影響をうけた、
というのが実情です。
(できれば自分の手柄のように語りたいんですけども……)

『まいにち養老先生、ときどきまる』
というNHKのテレビ番組がとてもよかったんです。

養老先生は、東大出身だし、『バカの壁』というタイトルの本を出しているくらいだし、きっと気難しい人なんじゃないかな……と、漠然に勝手なイメージをつくっていました。

ところが、テレビ番組の中に出てくる養老先生は、
意見としては厳しいことを発言されることはあるにせよ、
人柄自体がとても穏やかでした。
むしろ「癒されてしまうレベル」です。
人生の大先輩に向かって失礼だとは思いますが、
じっさい癒されるので仕方がありません。

養老先生の言葉がこちらの心に響くのは、ご自身の体験をもとにして、自分の頭と体で考え、それを誠実に言葉にされているからなんだと思います。
けっして口先だけでそれっぽいことを言われません。
なので、話されていることが一貫しています。

「話術に長けた、口のうまい人」
とは正反対の方で、
「自分に誠実で、信頼できる人」
という印象です。

講演会の前に写真展へ

4月23日の朝、ひとり、最寄りの駅から電車に乗り、
博多から新幹線で京都へ向かいました。
のぞみに乗ること、2時間44分。
ちょうどお昼くらいに京都に到着。
おなかもすいてきました。
京都で何食べようかな。
(それも旅の楽しみのひとつです)

講演会会場とは別の場所で行われている写真展があってるらしく、まずはそこを目指しました。
京都駅から地下鉄で4駅。それから徒歩10分。
10坪くらいの小さな『blue book gallery (ブルーブックギャラリー)』という空間があるそうで、地図(スマホ)を片手に向かいます。

この辺なんだけど、目印も看板もないな~と思って歩いていると、
突然右側にあらわれてびっくり。

ここが、
『まると養老先生 ことばと写真展 「そこに“まるがいた”」』
の展示場、『blue book gallery 』のようです。

『blue book gallery 』


入った瞬間から心を持っていかれました。

猫のまるちゃんは、2020年12月に亡くなりました。
その1年後に発行された本、
『まる ありがとう』の中のことばと写真が、パネルなって飾られています。

こうやって、写真とことばが切り出されると、本の中で読むのとまた違った感覚で伝わってきます。


まるのお骨はまだ家にある。墓がないわけではない。要するに埋めたくない。


あまりにも居心地がよかったし、
しみじみとまるちゃんの写真と養老孟司のことばを味わっていると、
思った以上に時間が経ってしまいした。
そろそろ、講演会場の移動しないと間に合わなくなりそう。

最後にスタッフの方に写真を撮っていただきました。
(※ 展示場の写真は、掲載の許可をいただいております)

今日の養老先生の講演会は、blue book galleryさんが主催してあります。
講演会会場である「京都市京セラ美術館」まで歩くにはちょっと遠いかも……、
と教えてもらいました。

講演会へ

最寄りのバス停まで行ってみましたが、
土地勘がまったくなく、どれに乗っていいか分かりません。
今までのわたしのパターンだと、
[急いでバスに乗り込んだはいいけど、反対行きのバスに乗ってしまい、結局養老先生の講演には行けませんでした]
というオチになりそうです。
そんな結末が頭をよぎりましたが、今日だけはそんなオチがあってたまるもんか!と思い、ここは無難にタクシーで行くことにしました。

目的地をつげ、そこに向かっていただいている中で、タクシーの運転手さんに教えてもらいました。

「京セラ美術館は、京セラが建てて京セラが運営していると思ってやしませんか?
ははは。そうでしょう。
実は、京都市が所有し運営している施設なんですよ。
京セラは宣伝効果になるし、京都市は京セラからの収入が入る。
お互いメリットがあるんですな」

スポーツ施設にもよくある「ネーミングライツ」、いわゆる「命名権」っていう仕組みのようです。

おなかもすいてたので、京セラ美術館についたら何か近くで食べて……と考えていましたが、コンビニすら見当たらず。

今日の講演は、指定席ではなく先着順。
少しでもいい席に座りたい、ということで何も食べずに講演会会場へ。
(前泊していた妻とここで合流しました)

定員100名の講演会。チケットは完売。
(※ 養老先生の写真は、ネットやSNSにはアップしないというお約束。
なので、上の写真には養老先生は写っていません)

いよいよ養老先生が出てきました。
「ひとことも聞き逃さないぞ」という100人の集中力。
そんな静けさからはじまった講演は、
へーそうなのかという驚きや、
ふむふむなるほどという示唆に満ちていて、
そしてときおり笑いもあり、
あっという間に過ぎていく時間でした。

最後の質疑応答。
聞いてみたいこともあったんですが、残念ながら時間切れとなりました。
でも聞きたかったことの答えは、実は今日の話の中にちゃんとあったのです。
直接答えていただいたも同然で満足です。

このあとは、養老先生のサイン会。
目の前でサインを書いてもらっているときに、
前から気になっていたことを、養老先生にたずねてみました。
「先生の時計はどちらのですか?」
「これはセイコーです。いただいたんですよ」
教えていただきありがとうございました。
セイコー買わなきゃ。

「このあと、写真撮影会もおこないます」と案内があり、
会場のざわつきが一段と大きくなりました。
養老先生を中心にみんなで一緒に撮るのかなと思いきや、
ひとりひとり、先生とツーショットで写真を撮ってもらえるみたいです。

まるでアイドルに会いに来たような感じで舞い上がっている人々。
「養老先生とツーショットですって!」
「いや~うそ~!感激」
という声があちこちから聞こえてきます。
「すごいね、養老先生の人気ぶり」と妻に話かけたら、
妻が会場内で1番舞い上がってました。

16:30。会場をあとにします。
満足して会場を出ると、急におなかがすいてきました。
朝から何も食べてなかったことを忘れるくらい、
わたしもしっかりと舞い上がっていたようです。

おなかすいた

このあと、妻のリクエストで、
昭和23(西暦1948)年からある、昔ながらの喫茶店「トワレ」という店に向かいました。

喫茶店なら、食事のメニューは、パスタとかピラフ、オムライスってところでしょうか。
何しろ腹がへったので、楽しみです。

http://www.soiree-kyoto.com/


青い店内


17:30。
メニューを見るけど、飲み物とケーキのみ。
ごはん類はありませんでした。
(トーストはありましたけど)

妻にはこの動揺がいっさいバレないように平静を装います。
そうです。ここは純喫茶です。
文字通り「純粋に茶を満喫するところ」なんです。
ごはん類を期待している方が間違っているってもんです。

もともとスイーツは大好物。
むしろ大歓迎で、逆にテンションがあがってきました。
この店の名物、カラフルなゼリーが入ったゼリーポンチを注文しました。

うむ。美味い。

BGMのない青い照明で落ち着く店内。
あちこちから聞こえるお客様の会話がBGMという、昔ながらの雰囲気を大切にしたお店でした。

いいな、京都って。

どちらが多く養老先生の素敵さを見つけれたか競争でもしているかのように、妻と競うように養老先生の話をしていると、これまたあっという間に福岡へ帰らなければいけない時刻になっていました。

明日もまた養老先生の大阪公演へ行く妻を残し、
わたしは店を出ました。

猫のまるちゃんの話や写真に一日中触れていたら、
留守番している我が家の猫にはやく会いたくなってきました。

帰ろう。

京都駅で新幹線の出発時刻ギリギリで乗り込み、
博多駅でも、痴漢行為がバレて逃げていると疑われてしまうくらいのスピードで、在来線に乗り換えるというタイトなタイムスケジュール。

結局、ごはんを食べる時間なんか全然ないまま、家に到着しました。

22:30。
腹をすかせた2匹の猫と一緒に、ガツガツモグモグとごはんを食べながら、
今日の昼間、自分はたしかに京都にいたんだよね?
と不思議な感覚になりました。

1日のはじまりと終わりが「日常」で、昼間が「非日常」、
その差が大きければ大きいほど現実感が希薄になるみたいです。

そんな夢のような現実を味わえる日帰りの旅もなかなかいいもんですね。

妻からの養老先生大阪公演のみやげ話を楽しみにしながら、
満腹になった3人は、川の字になって眠りの中へ沈み込んでいきました。


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