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■要約≪UXデザインの教科書 後編≫
今回は安藤昌也氏の「UXデザインの教科書」を要約していきます。その名の通り、「製品やサービスを使う時の体験を狙って高める営み」であるUXデザインの概念について人間工学の研究・IOS策定の歴史・体系化されたフレームワークなど関連テーマを網羅的に取り扱う当該分野の鉄板本です。本書は内容盛り沢山である為、2回に分けて要約します。後編の今回はPARTⅢ(プロセス)・PARTⅣ(手法)をまとめます。
「UXデザインの教科書」
![](https://assets.st-note.com/img/1704438420737-O7oaGlPcVT.jpg)
■ジャンル:IT
■読破難易度:低~中(平易な言葉で記述されているので読みやすいですが、プロダクトマネジメント・エンジニアリングいずれかのバックグランドがあったほうが理解しやすいかと)
■対象者:・UXデザインの概略を掴みたい方
・サービス・プロダクト開発に従事する方全般
・人間の感情や行動の変遷に興味関心のある方
※前編の要約は下記※
■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
≪参考文献≫
■ジョブ理論
■要約≪ジョブ理論≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■リーン顧客開発
■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■UXデザインプロセス
・UXデザインプロセスは下記7段階で構成され、それぞれに固有の理論やフレームワークが発達しています。
【調査・分析】
①利用文脈とユーザー体験の把握
②ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索
【コンセプトデザイン】
③アイデアの発想とコンセプトの作成
④実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化
【プロトタイプ】
⑤プロトタイプの反復による製品・サービスの詳細化
【評価】
⑥実装レベルの制作物によるユーザー体験の評価
【提供】
⑦体験価値の伝達と保持のための指針の作成
■①利用文脈とユーザー体験の把握
・まずは想定顧客(ユーザー)と製品・プロダクトの利用文脈・環境を把握することから始まります。市場調査・統計調査などではなく、実顧客にヒアリング・観察するなどをして実態のインサイトを得ていく方法(エスノグラフィ)が有用とされ、具体的には観察・インタビュー・フォトエッセイ・「実際にユーザーが普段行う環境下で通常の方法をユーザーにやってもらい、行為を観察しながら気になった点をその場で質問する」コンテクスチュアㇽ・インクワイアリーなどを用いることが主流です。
■②ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索
・想定顧客(ユーザー)の利用文脈・環境を把握した後はユーザーストーリーマッピングやジャーニーマップのような形で複数のペルソナを描き、分布や課題・ソリューションの方向性を整理することがUXデザインにおける初期仮説設計の第一歩です。行動パターン・価値の優先順位・想定分脈への習熟度・制約条件などの切り口でMECEに整理するのが基本ステップとされます。UXデザインにおいては特定の価値観やセグメントに深く刺さるように設計することが必要であり、なぜなら「お金を払ってでも解決したい問題を解決するプロダクトでないとビジネスとして成立しないから」です。
■③アイデアの発想とコンセプトの作成
・実現するべき体験価値の方向性を見出だした上で、ビジネスとして実現するソリューションのアイデア出しをするプロセスになります。ここで「実現可能性」や「成長性」・「収支」などを考慮してオプションを比較検討するステップに入ります。ユーザーペインや動向を起点に、定性情報の把握・ストーリーメイキングをしていくのがUXデザインの基本的な考え方ですが、このプロセスだけはリーンキャンバスやビジネス環境の調査など「ビジネスとして実現可能なソリューションでUXデザインできるか?」という観点が強く入ります。このフェーズでUXデザインの確からしさを担保するための事前シミュレーションとして、「体験価値を扱うバリューシナリオ」・「活動を扱うアクティブシナリオ」・「操作を扱うインタラクションシナリオ」の3階層でユーザーストーリーを記述するのが一般的です。
■④実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化
・上記が完了した段階で改めて実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化をすることが大切とされており、プロダクトビジョンやアウトカムに立ち返るのが大切とされます。ここで避けるべき陥りやすい過ちは機能開発に終始するビルドトラップ状態です。ユーザーにとって機能は手段の一つに過ぎず、作り手(UXデザイナー・エンジニア・プロダクトマネージャー)にとって重要な機能開発や各論の作りこみはどうでもいい点を見失ってはいけません。
■⑤プロトタイプの反復による製品・サービスの詳細
・その後は「構造の検討段階」⇒「振る舞いと認知の検討段階」⇒「見た目のデザインの検討段階」⇒「デザインの洗練段階」のステップを踏んでプロトタイプを作りこむことが大切とされます。プロトタイプを評価する際にはヒューリスティック評価と呼ばれる人間中心設計を網羅した観点を学会で定めた基準で測定するステップを遵守することが大切とされます。具体的には「システム状態の視認性」・「システムと現実世界の調和」・「ユーザーコントロールと自由度」・「一貫性と標準化」・「エラーの防止」・「記憶しなくても見ればわかるように」・「柔軟性と効率性」・「美的で最小限のデザイン」・「ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする」・「ヘルプとマニュアル」の10項目です。
■⑥実装レベルの制作物によるユーザー体験の評価
・プロトタイプを用いた仮説検証の有効性が証明され、実際のリリース前の最終調整に入ります。β版を用いて、定量・定性で指標を設定しそれぞれの状態ゴールを満たしているかを確かめます。テストを行う際には「何を確かめる為のテストか」・「どんなインサイトが得られたら良しとするか・ダメとするか」などを事前に設計・ステークホルダーと合意形成する手順を怠ってはいけません。加えて、機能が担う行程毎・想定ユーザー毎にゴール状態やノックアウト項目を設定するのが大切とされます。
■⑦体験価値の伝達と保持のための基盤整備
・ここからの工程は主にプロダクトリリース後を指し、製品以外での顧客とのタッチポイントの科学(販売経路・マーケティングの精査)や利用後のアンケート調査(効果測定)などを行う流れになります。UXはプロダクトの一部になるので、ビジネス全体としての整合性という文脈でビジネスモデルキャンバスを用いて精査、ロードマップ策定などに繋げていくことが求められます。尚、UXデザインはロゴやブランドイメージ・タグラインなどのマーケティング・ブランディングに整合性を持たせるよう働きかける必要があり、一貫した線を形成出来ているかは当該部門とすり合わせし続けるのを欠かしてはいけません。
【所感】
・本書は理論や基本概念を網羅的に記述しており、各論詳細は本書記載の参考文献を学習してくれという導線になっており非常に読み応えのある内容でした。参考文献もこれから随時読み込みをして理解を深めていきたい次第です。UXデザインはプロダクトマネジメントの中心に据え置かれると共に、営業やマーケティング・組織マネジメントなどの知見と融合するものであり、UXデザイン領域の奥深さと実践的で馴染みのある概念を感じました。
・UXデザインを考える上においては「誰のどんな問題を解決し、どのような状態にするか」という問いに対して解を導きだすことを何時如何なる時も絶やさないようにすることが大切なのだと感じ、ユーザーありきですしビルドトラップなんてもっての外ということもよくわかりました。不確実性の高い非定型業務であっても狙って成果を出す方法論やフレームワークがあるのであれば、まずは基本に忠実に学び実践して急所を体得していくことが大切でありこれは企画関連業務全般にも言えることなのだろうと改めて理解を深めた次第でした。
以上となります!