与える人「ギバー」だけが成功する理由を量子力学・宇宙物理学・脳科学で解説
陰徳陽報(いんとくようほう)
向天吐唾(こうてんとだ)
自業自得(じごうじとく)
天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)
情けは人のためならず
人を呪わば穴二つ
これらの言葉は多少のニュアンスの違いはあれど、すべて
「あなたの行いはめぐりめぐってあなたのところに帰ってくるよ」
という意味。
相手を傷つけることは自分を傷つけるのと同じであり、人に噓をつくということは自分に嘘をつくのと同じこと。
逆に、相手に喜びを与えると、自分にも喜びが返ってくる。
人を幸せにするということは、自分を幸せにするということ。
これが本当なら、「自分が欲しいモノを与える人は成功する」と言い換えることも可能だ。
でも、
「たしかに、昔からいろんなところで聞いたことのある言葉だから知ってはいるけど、実際問題、過去のどの自分の行いが今帰ってきてるのかわからないし実感わかないんだけど...」
と、多くの人が思うのではないだろうか?
わたし自身、いままで不思議な話に聞こえてしまって自分事として理解することが難しかった。
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この、先人たちがいくつもの言葉・ことわざを通して未来を生きるわたしたちに伝えようとしてくれている、
「あなたの行いはめぐりめぐってあなたのところに帰ってくるよ」
という法則、実は量子力学・宇宙物理学・脳科学で科学的に説明することができる、ということがわかった。
この話を聴けば、わたしと同じような「知識偏重型で、体験したとしても理屈が通らなければ実感がわかない」という人も腑に落ちると思うので、最後まで読んでみて欲しい。
1.「与える人が成功する」を量子力学で解説
この記事に興味を持ってくれた人や量子力学に興味がある人にとってはもう耳タコかもしれないが、大事なことなのでカンタンに「量子」についておさらしてから本題に入ろうと思う。
1-1.すべては素粒子でできている
わたしたちが認識しているこの物理的世界を分解していくと「素粒子」というミクロの物質にたどりつく、ということが最先端の科学によって解明されている。
すべての物質は分子でできていて、その分子は原子でできており、原子は電子・陽子・中性子という物質によって構成されている。
この電子・陽子・中性子が「素粒子」と呼ばれており、これらがわたしたちの物理的世界を形作っている最小単位。
宇宙に存在する物理的存在は、たった17種類の素粒子によって構成されており、それぞれが固有の性質と機能を持っている。
素粒子を大きく2つのグループに分けると、
電磁力や核力といったさまざまな力を伝達する「ボソン」
具体的な物質を構成する「フェルミオン」
に分類され、フェルミオンはさらに「クォーク」と「レプトン」という2つに分類される。
そして、このクォークとレプトンが組み合わさることで、すべての物質が構成されているのだ。
つまり、この世界のすべての物質は素粒子でできているということ。
原子以下のミクロの世界の物質を総称して「量子」と言い、量子の性質を明らかにする学問が量子力学である。
1-2.すべての物質の違いは「振動」によって生まれている
すべての物質は素粒子でできているわけだが、その素粒子は「粒」ではなく「ひも」の形状をしているのではないか?という「超ひも理論(超弦理論)」(英名:superstring theory)が、最先端科学の研究者たちの間で現在注目されている。
人間や動物や植物などすべての生物も、机やスマホなどすべての物質も、山も川も海も地球もその他の惑星も、すべての物質をどんどんどんどん細かく見ていくと、小さな「ひも」の形をしており、この「ひも」の振動の違いによってあらゆる素粒子や物質がうまれている、というのが「超ひも理論」。
極微小の糸くずのような形をした「ひも」が、ギターの弦のように振動しているイメージだ。
そうなると、私たち人間の肉体も脳も細胞も、すべての生物・物質が「ひも」の集合体で、違いはその振動数「のみ」ということになる。
言い換えれば、振動数の違いが物質の性質の違いであり、この宇宙にあるすべての物質の「素材」はまったく同じ、ということだ。
1-3.脳波=振動により細胞がつくられる
さて、ここからが本題だ。
前回の記事でも紹介したが、人間の身体には37兆個の細胞があり、全体として1秒ごとに81万個の細胞が生まれ変わっているのだが、その細胞の形成には脳波の振動数が関わっているということが実験で確認されている。
中でも、8~12ヘルツのアルファ波は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の合成を促進することがわかっている。
そして、脳波は意識・言葉によって変化する。
「感謝」したり「ありがとう」と言うと、アルファ波が出てセロトニンが生成されるらしいのだ。
意識・言葉が脳波に影響を与え、細胞の形成に影響を与えている。
1-4.言葉は振動である
音は振動である。
声も楽器も風も川のせせらぎも、大気を振動させ、わたしたちに伝わってくる。
言葉を発すると大気が振動し、その振動が相手の聴覚で感知され、電気信号に変換されて情報として脳に伝わる。
つまり、相手に振動が伝わっているのだ。
また、自分が発した言葉なので、当然自分自身も聴いている。
先ほど書いた通り、言葉は自分の細胞の形成に影響を与えている。
1-5.わたしたちは常に振動を発している
この細胞も、素粒子でできているので当然「振動」している。
そして、わたしたち人間を含む生物全般が「バイオフォトン」と呼ばれる光の素粒子を現実世界に向かって放出していることがわかっている。
バイオフォトンとは、生き物の生命活動に伴って発せられる極めて弱い光のことで、細胞内の呼吸やエネルギー代謝によって常に身体の外に放出されている。
微弱すぎて肉眼では確認できないのだが、超高感度な光検出器を使うと、人体の発光を測定することができるらしい。
このバイオフォトンも光なので「振動」している。
わたしたち人間は、なにもしないでただ突っ立っているだけでも、無意識に常に振動を発しているということだ。
そして、さきほど1-3.で説明した通り、意識が脳波を変え細胞の形成に影響を与えているため、意識(無意識も含む)したことが細胞に影響を与える。
つまりは、バイオフォトンの振動数にも影響を与えることになり、言葉を発していなくても、こちらの意識が作り出した振動を相手に送り続けることになる。
1-6.この章のまとめ
ここまでをまとめると、
あなたが発した意識・言葉は、あなた自身の脳波=振動を変え、あなた自身の細胞に影響を与える
さらに、相手に対しても言葉(声)とバイオフォトンによって振動を送り、相手の細胞にも影響を与える
ということになる。
他者に対する行いがすべて自分に帰ってくるというのは、量子力学の観点から見るとこういう説明になる。
善い行い・良い言葉を他者に「与える人」は自分にも与えている。
逆に「与えない人」は自分にも与えない人なのだ。
2.「与える人が成功する」を宇宙創成理論で解説
この宇宙がどうやって生まれたのか?を知ることで、「行いはすべて自分に帰ってくる」理由がわかると思う。
現在、最先端の宇宙物理学が提唱しているのは「インフレーション理論」と言われるもの。138億年前にはこの宇宙は存在せず、ただそこにはたったひとつの点としての「量子真空」が存在していた。
量子真空は、何もない「無」の状態に見えるけれど、実は膨大なエネルギーの塊。
あるときふとしたきっかけで大爆発「ビッグバン」を起こしてこの宇宙が誕生し、いまも膨張し続けている、というのがインフレーション理論。
ここから水素やヘリウムなどの原子が誕生し、さまざまな原子の結合によってさまざまな物質が生まれ、現在わたしたちが存在するこの世界が形作られている。
近年、真空を人工的につくって、そこから物質を生み出す実験、まさにビッグバンを再現する実験が行われており、宇宙創成やわたしたちの起源についての謎がはっきりするのも時間の問題だろう。
と、ここでもう一度、宇宙がどうやって生まれたのか考えてみて欲しい。
138億年前は、たったひとつのエネルギーの点だったところから、いまの広大な宇宙ができたワケだ。
つまり、もともとひとつだったすべての物質、すべての生命、すべてのものが、ビッグバンによって分裂してバラバラになったということになる。
たった一つの点からこの世界が生まれたということは、ビッグバンを起こす前はすべてのものは一つだったということ。
これが、最先端の宇宙物理学によって示唆されている宇宙のはじまりだ。
すべてはひとつ、ということだ。
だとすると…
近所のノラネコも、毎朝飲むコーヒーも、今日おやつで食べた大福も、あなたもわたしも、山も海も、家の観葉植物も、幸せなあの人も、怒っているあの人も、良い人も悪い人も、人以外のものもすべて、元はたった一つのエネルギーの塊だったところから派生したもの、ということになってしまう。
別々の人間だと思っている目の前の相手は、元をたどれば一つ。
目の前の人に対する行いは、自分に対してしているのと同じことなのだ。
最新の宇宙物理学も、善い行い・良い言葉を他者に「与える人」はそれを自分自身にも与える人、ということを示している。
3.「与える人が成功する」を脳科学で解説
ここでは「脳の共感力」と「無意識」がカギだ。
3-1.脳の共感力
共感力とは「相手と感情を一致させる能力」「相手の気持ちを感じる力」とされている。
映画やテレビドラマで俳優の涙につられて泣けてきたり、ホラー映画でゾンビに追いかけられる主人公と同じようにドキドキしたりゾッとするのが「共感=エンパシー」で、この能力によってわたしたち人間は相手の気持ちを自分に重ね合わせる。
これとよく混同しがちなのが「相手のこころを理解する力」すなわち「メンタライジング」だ。
エンパシーとメンタライジングの違いは、幼い子どもを被験者にした「サリーとアンの指人形を使った実験」が有名で、わかりやすい。
最初にサリーが登場し、カゴにおはじきを入れて舞台を去る。
次にアンが登場し、おはじきをカゴから箱に移し替える。
もう一度サリーが舞台に戻ってきたときに、子どもたちに「サリーはおはじきを見つけようとしています。どこを探すでしょう?」と質問。
3歳までの子どもたちは、この課題に「箱のなかを見る」と答える。
だが、4歳を超えると、サリーがカゴの中を探すとわかるようになる。
つまり、自分たちの知識(おはじきはアンが箱に入れたから箱の中にある)と、サリーのこころの状態(サリーはアンが箱に入れたことを知らないからカゴの中にあると思っている)を区別できるようになる、ということ。
これが「メンタライジング」で、たとえば乳児は隣で泣いている乳児をなぐさめようと共感するが「なぜ泣いているのか?」というその子のこころを理解しているわけではない、という例もわかりやすい。
相手と自分の気持ちを重ね合わせる「共感=エンパシー」と「メンタライジング」はまったく異なる能力なのだ。
3-2.共感は無意識の働き
メンタライジングは「認知的共感」と呼ばれ、意識的に行われるものであり、人間にしかない能力と言われている。
一方の共感=エンパシーは「情動的共感」と呼ばれ、本能的で無意識の領域で行われるものであり、人間やネズミやサルなど社会性のある動物に広く見られる能力。
共感力=エンパシー=情動的共感力は、人それぞれが持つ固有のパーソナリティによる強弱の差はあれど大半の人が備えている能力であり、それは無意識的に自然に起こってしまうものということだ。
無意識は、
他人と自分の区別がつかない
主語が抜け落ちて認識する
という特徴を持っていると言われるが、それは「共感力」が無意識に自然に発揮されているから起こる現象である、と脳科学的に言うことができる。
3-3.この章のまとめ
共感=エンパシーは「情動的共感」と呼ばれ、本能的で無意識の領域で行われるものであり、パーソナリティによる強弱の差はあれど大半の人が備えている能力。
無意識は、
他人と自分の区別がつかない
という特性をもっており、ということはつまりは「他人に対する行いはすべて自分に帰ってくる」ということだ。
また、無意識は、
主語が抜け落ちて認識する
という特性をもっており、ということはつまりは「他人に対する言葉はすべて自分に帰ってくる」と言える。
つまり脳科学的に見ても、善い行い・良い言葉を他者に「与える人」はそれを自分自身にも与える人、ということになる。
4.まとめ
「行いはすべて自分に帰ってくる」
「善い行いを与える人=ギバーだけが成功する」
ということを量子力学・宇宙物理学・脳科学の観点から解説することができた。
「ギバーが成功する」ということは、ギバー・テイカー・マッチャーの特性についてさまざまな実験を検証・研究したことがまとめられている『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代(アダム・グラント著)』でもはっきりと示されているので、こちらも合わせて読むとより確信度が増すだろう。
ここまで書いてきてわかったこと。
やはり、無意識に使っている言葉が大事であり、無意識はコントロールすることが難しいので、無意識に染み込んでいるネガティブを消すことが重要なのだ。
そのためにも、前回の記事でも書いた通り「感謝体質」になることが大事なのだろう。
あなたの行いや言葉は、現実世界に、確実に影響を与えている。
この広大な宇宙に、さざ波を起こしている。
その波は大きくなって自分の元に帰ってくるようになっている。
この知識と力をどう使うかは、あなた次第だ。