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天使の顔をした悪魔。〜その4〜【休職1ヶ月目】

日々、忙しく働く方々
4ヶ月有給があったら何をするでしょうか?

4ヶ月間のかたまった休み。そんなのは大学の夏休み(それでも2ヶ月弱程度だったか?)以来。しかも有給。誰もが望む夢見たいなこと。
通常の私なら、まず旅行に行くだろうと思う。2泊三日の10回はいけるかもしれない。

しかし私に訪れた予期せぬ4ヶ月の有給は、自問自答、乗り越え次のステップに進む準備。自己と向き合い続けた真っ暗な洞窟みたいな期間だった。
私は生涯、この4ヶ月間の事を忘れる事はないだろう。


〜最初の1ヶ月、頭グルグル〜

さて、上司のパワハラから逃げ出し、休職することを選んだ私の4ヶ月間。最初の1ヶ月はこんな風だった。


2度目の診察で心療内科の先生に順を追って説明したのでよく覚えている。
まず最初の1週間はずっと寝て過ごした。
朝も夜もない。多分1日20時間近く寝ていたと思う。
元々あまり寝なくてもいける体質で5-6時間でもまぁ平気。にも関わらず驚くほどいつまでも寝られた。
1日に1回、顔から下だけは洗い、歯も磨いた。
他には何もする気力がなく、大切にしている長い髪は洗えなかった。
2週間目位からは、自分でも気持ちが悪く無理矢理に髪も洗った。それでも4日に1回、5日に1回。
ついに私は人生で初めて1週間お風呂に入らない期間を過ごした。
外出もしない、テレビもつけない。誰かに連絡する気分でもない。ただただ、本当に寝続けた。



起きている間、上長と先輩から言われた数々の言葉が頭の中をぐるぐる回る。
私を否定する言葉。私に落胆する言葉。今まで言わなかったけど、という(その時に言わないなら墓まで持っていけよ、と思う。私はそのタイプだ。)これまで気に障った小さい事をこれでもかというくらい隅々から拾い集め、並べ、投げつけてきた。


よくもまぁそんなに次々と人を罵倒する言葉が出てくるなぁ、と感心するくらい(録音を聞いた家族も同じ感想を述べていた。)
一度呼びつけられると1.2時間は立たされたまま叱責を受けた。
「あー、今嵐がきていきなり窓とか割れないかな」とか「間違えて鳥が窓に激突してこないかな」
そしたらこの時間から逃れられる。と様々なパターンのとんでも現象を願った。
残念ながら窓には嵐も鳥もやってくることはなく、私を責め続けるにはうってつけの空間と時間が流れ続けるだけだった。

怒鳴られている間、
自分の心が決して強く無いのを自覚している私は、脆いハートをダメージから守るため
「はい。そうですね。そうですか。違います。」のどれかを使い感情を無にして静かに返答しながら、言葉の刃を間に受けぬよう、言葉の意味をしっかりとは受け止めないよう努めていた。


それでも時々うっかり泣きそうになると、必死に思考を止めておかしな事を思い出すようにしていた。
思い出したら100%笑える、くだらないおかしかった出来事。(因みに私はさくら友蔵が『ボーイフレンド、ボーイフレンド』と踊り出すシーンがめちゃくちゃ好きで友蔵には何度も救われた。)


会社では一度も泣かなかった。
(私は家族や友人の前でも絶対に泣かないタイプだ。家族の前で最後に泣いたのを思い出したら、高校の時に親と進学について言い争いをした時が最後だった。)
でも1日必死に堪え、会社を出ると泣きながら帰ることが少なくなかった。狭いバスの中でよくシンシンと泣いていたが、暗いし空いているバスだったので気がつく人は誰もいなかったと思う。

シンシンと泣きながら帰宅し、またシンシンと泣きながらシャワーに入った。
いつも思うことは、「お父さん、こんな娘でごめんよ、、」という年相応らしい安心も孝行もあげられない自分に対する情け無い気持ちだった。



友人や家族には悩んでいることを話さなかった。
人は、くだらない事は細かく報告したりするのに、本当に深く悩んでることは打ち明けにくいものらしい。
(人によると思うが、実際に、私の周りの心療内科に通った友人たちは、事が収まった後に事後報告として話してくれることが多い。)
私の場合、なぜ打ち明けなかったかというと
悩みを知られたく無いのではなく、相手の負担を懸念したり、ただ折角のその場を楽しく過ごす時間にしたかったり、単純に説明するのが億劫だったからだった。


そんな辛かった4ヶ月間がグルグル脳内リピートされ、考えたく無いから寝るといった毎日が続いた。
(ややこしいが、集中してパワハラされた期間は4ヶ月間ほど、私が休職した期間も4ヶ月間だった。)



ひとり、別の部署でも私より数ヶ月前に休職している男性社員がいた。
元気で、体格も良い、挨拶をすれば冗談も交えて笑わせてくれる明るい人だった。ついこの前、大好きな奥さんとの間に第一子が生まれたと嬉しそうに話してくれていた。
そういえば最近見ないな、と思い上司に聞いてみると心を病んで休職中らしいよ、とのことだった。
寝過ぎにより腰に痛みを感じ始めながら、ベッドの中で彼を思った。
「今、私も少なからずあなたと同じ状況です。気持ちわかりますよ。なにがあったんですか?どうしてますか?」と伝えたかったが、連絡先を知らないので伝えることはできなかった。


数ヶ月後、私が休職中に彼が退職したと聞いた。
どうか新しい場所ではムリなく過ごせていますようにと、今も心から思う。

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